記事のポイント
メディアエージェンシーは生成AIによるクリエイティブ活用に課題を感じつつ、業務効率化や分析精度向上には手応えを得ている。
WプロモートやMedia by Motherは、AIを活用して戦略立案やコンテンツ分析を支援する新たな手法を導入している。
Scope3はAIエージェントによるメディア購入支援のプラットフォームを構築し、より透明性の高い広告取引の実現をめざしている。


メディアエージェンシーは、AIを活用して定型的なキャンペーン業務を自動化する方法を見いだすようになってきているが、クリエイティブなコンテンツに関しては、このテクノロジーはまだ印象が薄いようだ。

ナッシュビルで開催された米DIGIDAY Media Buying Summit(以下、DMBS)において、エージェンシーのリーダーたちは、メディア業務の最適化と合理化のためにAIを活用する企業が増えている一方で、高品質なクリエイティブ・アウトプットを提供するには生成AIはまだ不十分だと述べた。

AIでメディア業務を効率化するWプロモートとMedia by Motherの戦略



Wプロモート(Wpromote)のペイドメディア担当シニアバイスプレジデント、デビッド・ドウェック氏は、同社が俳優のエドワード・ノートンが共同創設したイーディーオー(EDO)のような企業のAIを活用し、広告クリエイティブとネットワークプログラムに基づいてスポットごとの検索およびコンバージョンの上昇を分析する方法を紹介した。

Wプロモートはまた、GoogleのAIを活用してディスプレイおよびYouTubeのアセットを分析し、ソーシャルと検索にわたってクリエイティブを調整。インサイトを得るための大規模言語モデルに対して毎週最適化を実施しているという。

測定と報告の効率は向上しているが、AIが生成するクリエイティブはまだ物足りないとドウェック氏は感じている。

「AIのおかげでより高レベルにいるチームは、大量のデータを抽出してアップロードするのではなく、戦略的思考やクライアントをより高めるための時間を増やすことができる」とドウェック氏は話す。

「ただ、クリエイティブな面では、創造性を生み出すという点で、ショータイムの準備にはほど遠い。(中略)Gemini(ジェミニ)の出番はない。それだけは言っておく」。

メディアエージェンシーであるメディア・バイ・マザー(Media by Mother)の最高経営責任者(CEO)、デビッド・ゲインズ氏は、自動化によって従来のメディアプランニングの役割が大幅に減少したと説明する。

ゲインズ氏は、かつて人々がスプレッドシートに予算を書き込んでいたのに対し、現在ではAIがコンテンツプランナーとして、人間にはできない方法でクリエイティブとコンテクストを理解し、人々を解放する役割を果たしていると語る。

「チャネル全体に予算を配分することも、メディアに資金を割り当てることも、機械に任せることができる」とゲインズ氏は言う。「米国には、メディアの購入先が3万3000以上存在する。人間の手ではそこから選ぶことはできない。機械でやるしかない」。

AIプラットフォームへの警戒感



メディアエージェンシーもまた、Googleのパフォーマンス・マックス(Performance Max)などのAI搭載プラットフォームにおける透明性の欠如に不満を抱いている。

構造化されたテストがなければ、ブランドやエージェンシーは新たなキャンペーンのたびにゼロからのスタートを余儀なくされるリスクがある。

メディアエージェンシーが新たなAI機能を模索するなか、スコープ3(Scope3)のようなアドテク企業は、エージェンシーとそのクライアントのためにプラットフォームを構築し、オープンなWeb上でメディアを購入する新たな機会を創出している。

スコープ3のCEO、ブライアン・オケリー氏によると、同社の新しいエージェンシー向けメディアプラットフォームは、エージェンシーや広告主がより透明性の高いデータを活用するための新たな手段を提供するという。

計画の一環として、プラットフォーム上にAIエージェントを構築するようエージェンシーを招待し、メディア購入に関連するさまざまな業務を支援することも含まれている。

2025年3月13日の新プラットフォーム発表に先立ち、オケリー氏はDIGIDAYに次のように語った。

「我々が構築しているプラットフォームは、取引向けメディアバイイングエージェントのためのものだが、我々自身がエージェントとなるわけではない。我々は、必要なすべてのことを担ってくれる専用エージェントをほかの人々が自由に構築できるような基盤を提供しているのだ」。

メディアエージェンシーのなかには、その可能性に気づいているところもある。DMBSのステージでスコープ3の新プラットフォーム「エージェンティック・メディア(Agentic Media)」について質問されたQRYのCEO、サミール・バルワニ氏は、スコープ3が既存の体制を破壊するかどうかは、その実行の仕方にかかっていると述べた。

バルワニ氏はさらに、ブランドがAIツールを自社で直接所有・管理することを望むのか、それともメディアエージェンシーにその役割を引き続き委ねるのかについて疑問を呈した。

「2つの道のどちらかになるだろう。我々にとって、それが素晴らしいものになるか、ひどいものになるかのいずれかだ。この点は、今後数カ月間に我々が取り組むべき問いのひとつになる。つまり、ブランドはAIを社内に導入すべきなのか、それとも導入すべきではないのかを見極める必要がある」とバルワニ氏は語った。

[原文:Media agencies are finding new uses for AI while AI-generated creative still lags]

Marty Swant(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:藏西隆介)