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 来春選抜の重要な選考資料となる秋季高校野球関東大会は27日、等々力などで1回戦4試合が行われ、健大高崎(群馬1位)が9―0で霞ケ浦(茨城2位)に7回コールド勝利。4番・佐伯幸大外野手(2年)が2安打2打点で貢献した。

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 スポニチアマ野球の東京取材班は東北〜関東の高校、大学、社会人チームを担当する。記者は高校野球では群馬担当。同県の強豪チームである健大高崎は今春の選抜で初の甲子園優勝を果たした。勝ち抜けば勝ち抜くほどチームを取材する機会は多くなる。高校野球は試合の応援スタンドで選手の両親やコーチ、そしてチームメートから取材することで「ネタ」を仕入れることが多い。

 健大高崎の応援スタンドでいつも目につく選手がいた。長距離砲の外野手・佐伯幸大(2年)。ベンチに入れなくても仲間の応援に声をからし、ときには涙を流す姿が印象的。いつしか健大高崎のスタンドに行く度に話しかける仲になった。ただ、彼自身はいつもケガに悩まされていた。練習取材にいってもプレーしている姿は見たことがなかった。

 今春の選抜ではエース左腕・佐藤龍月(りゅうが=2年)が無失点で決勝まで投げきり、悲願の初優勝を果たした。その姿を一塁側のアルプス席で見守った佐伯。佐伯と佐藤は小学時代にジャイアンツジュニア、中学時代に東京城南ボーイズでともにプレーした仲。「凄いな!って思うんですけど、やっぱり自分も一緒にあの場に立ってプレーしたいなって思います」と誓っていた。

 ときは流れ、新チームで臨んだ秋季関東大会。健大高崎―霞ケ浦戦を担当した記者は、いつものように試合前の健大高崎応援スタンドに顔を出した。しかし太陽のように笑う佐伯の姿がない。探しても探しても、やはりいない。「今度は大きいケガでもしたのか…」と記者席に戻ろうとすると「4番・レフト佐伯君」のアナウンス。シートノックで元気いっぱいにグラウンドを駆ける背番号7。初めて佐伯がプレーする姿を見た。

 新4番・佐伯は2安打2打点で7回コールド勝ちに貢献。試合後の取材では地元紙を中心とした記者に囲まれた。「重圧は感じるんですけど、その中でも凄く楽しいと思うことが多くて、笑いながら打席に入ることもその1つ。本当に純粋に野球が楽しい」と語っていた。

 佐伯は新チームでレギュラーをつかんだが、友とはまだ一緒にプレーできていない。エース左腕・佐藤龍月は左肘内側側副じん帯再建術(通称トミー・ジョン手術)を受けてリハビリ中。佐伯は帽子のひさしに「龍月のために」と書き込み「龍月とは入れ替わる形になってしまった。龍月のためにも一戦、一戦やっていきたい」と力強く言った。

 スタンドで会う楽しみはなくなったが「4番佐伯」の姿を追っていく新たな楽しみが生まれた。健大高崎はきょう29日、選抜出場当確ラインの関東大会4強入りを懸け、佐野日大(栃木)と準々決勝で激突する。(記者コラム・柳内 遼平)