Photo: ヤマダユウス型

「美味しい音」があるとしたら、コレだなと思った。

テクニクスブランドから、新しいスピーカー「SC-CX700」が発表されました。2024年10月下旬発売で、価格は2台ペアで35万2000円。

「こういうお高いスピーカーってガチの人向けなんでしょ?」と思ったやもしれません。確かにスペックこそガチのガチですが、「SC-CX700」はもっとカジュアルな、それこそ若者や一般的な音楽好きの意見をたっぷり取り込んだ意欲的なスピーカーなんです。

僕はこれ、すんごい欲しい!

インテリアを思わせるタイムレスな佇まい

こちらが「SC-CX700」。2カラー展開で、このテラコッタブラウンと…。

チャコールブラックをラインナップ。黒の落ち着いた感も素敵だけど、ブラウンの明るさも良いなぁ。

スピーカー外周には旭化成のスエード調人工皮革「Dinamica(ディナミカ)」が採用されており、これもまた珍しい試みです。スピーカー特有のメカメカしさがあまりなく、上品なオブジェのような存在感を放っています。

「ワイヤレスでも高音質」を追求

プライマリースピーカーの背面。アンプやDSPなどは前面のスピーカー部から独立しており、さらに電源やアンプ、DSPなどの回路基板も各自独立することでノイズを抑えている。

「SC-CX700」は、テクニクスにとって初となるワイヤレスアクティブスピーカー。アクティブスピーカーとは音を増幅するアンプを内蔵したスピーカーのことで、電源を繋ぐだけで使える(スピーカー以外の機材が不要)のが利点です。アンプ非搭載のパッシブスピーカーなんてのもありますね。

アンプ内蔵ということは、さまざまな音源を本体に繋いで鳴らせるということ。端子側を見てみると、アナログ接続のほかに光デジタル、USB Type-C、HDMIなど、接続先はとても豊富。

さらにWi-Fi内蔵でSpotifyなどのストリーミングサービスにも対応してるし、Bluetoothでスマホにも接続できる。すなわち、スマホやWi-Fiなどのワイヤレス音源も、ターンテーブルやオーディオNASなどのアナログ/デジタル音源も、すべてを高音質に鳴らす。それが「SC-CX700」なんです。

現状の高級スピーカーの多くはアナログ=有線接続を前提に設計されているものが多いのですが、「SC-CX700」はワイヤレスでも高音質を諦めない新境地に挑んだわけですね。

こちらはセカンダリースピーカーの背面。プライマリー側とはP/S LINKによる有線接続(PCM 192kHz/24 bit)だけでなく、ワイヤレスで接続(PCM 96kHz/24 bit)にも対応。有線で繋がなくて良いのはラクすぎる〜。

スピーカー上部。LEDの並びは左からストリーミング再生、右にいくにつれてアナログに。いかにワイヤレス経由での再生に比重をおいているかがうかがえます。

ワイヤレスへの甘えは一切無し

スピーカーの構造についても簡単にみていきましょう。公式サイトの説明がめちゃくちゃ詳しいので、こちらもぜひ(読み物として面白い)。

「SC-CX700」の断面図。右側が前面のスピーカー部、左側が背面のコンポーネント部。

良い音を生み出すために障害となるものは多々ありますが、いらぬ振動やノイズは極力抑えたいものです。「SC-CX700」はスピーカー部とコンポーネントのあいだに厚みのあるMDF材(木質ボード)を挟み、さらに空気層もかませたセパレート構造を採用。スピーカー側の振動をアンプ側に伝わらないようにする仕組みです。

オレンジで描かれたバスレフポートの内部開口部を最適な位置に設けることで、定在波のピークディップを最小化。

また、スピーカーの内部には吸音材が使われるのが一般的。この吸音材はエンクロージャー内の定在波を取り除くためなのですが、圧力分布解析に基づいた開口位置の調整により「SC-CX700」は吸音材レスを実現。まさに最新のスピーカーって感じの攻め方で、興奮しますねぇ…!

新開発のリングツィーター搭載の同軸ユニットを採用。波面解析に基づいた形状になっており、不要残響音が少ないのが特徴です。振動板についてはその動きをモデル化し、流れてくる信号に応じた「理想的な波形に対して足りない動き」をリアルタイムに補正するMBDC技術を搭載。DSPを搭載できるアクティブスピーカーならではの考え方ですね。

リビングをライブバーの客席に変えてしまう

では、いよいよ肝心の聴き応えについて。

実際にピアノを弾いたときに感じる高域の震え、あれを耳に感じたのには驚きました。女性ボーカルについても、耳がゾワゾワするような眼の前感がある。自宅ではまぁ聞けないであろうリアルな演奏がそこにあり、「このスピーカーが家にあったら毎日コレが聞けるの?マジ?」と思いましたね…。

NAS経由のデジタル音源と、アナログレコードによるアナログ音源の2種類を試聴しましたが、どちらも極上。デジタル音源は全部の音がスパっと視える感じがあり、レコードの音は高域成分が丸められたウォーミーな印象でした。

それぞれ違いこそ感じたものの、優劣の話ではない。なんならどちらの音も再生できる「SC-CX700」の懐の広さを称えるべきでしょう。

ちなみに、レコードはコスパに優れたターンテーブルとして名高い「SL-1500C」で再生されていました。「SC-CX700」と一緒に買っても、50万円でお釣りが来るラインです。アンプやスピーカーをゼロから用意するコストを考えると、なんだかとってもお値打ちに感じてしまうのは気のせいでしょうか。

付属のリモコン。接続機器の切り替えもこちらから可能。

なんならHDMIに繋いでおけばサウンドバーとしても使えるし、スマホを繋げばカジュアルなワイヤレススピーカーとしても使える。あれ、まさかのコスパでも優秀ってやつ? 35万円が!?

いまを生きる音楽好きに捧ぐスピーカー

聞き終えて思ったのは、音って肉体的だよなぁということ。美味しい料理を味わうように、4Kの高解像映像にうっとりするように、耳が心地良いと感じる音の波にひたる。五感の喜怒哀楽は、なんと正直なことか!

そう考えると、サーロインステーキは一瞬でなくなるけど、スピーカーはずっと(壊れない限り)味わい続けられるから、むしろ得だなとも思ったり。良い音というのは探してみると意外と見つからないものですが、「SC-CX700」があれば極上のサウンドをいつでも味わえるわけで。これって永遠に減らないステーキと同じなのでは?

2024年はテクニクスブランドが復活してから10周年の節目でもあります。数字で見てみると、2014年と比較してサブスクの売上は13倍以上、レコードの売上も6倍以上とのこと。昔に比べて、音楽の聞き方は多様化しまくっているわけです。

その多様なる聞き方のなかには「良い音で聞きたい」という需要ももちろんあり、年齢や個性も様々です。幅広いスタイルにハマる「SC-CX700」は、いまの音楽文化におけるテクニクスなりのアンサーだと感じました。これこそが、良い音であると。

Source: テクニクス