米紙ロサンゼルス・タイムズの社屋=9月30日、米カリフォルニア州エルセグンド/Kirby Lee/Getty Images/File

ニューヨーク(CNN)米紙ロサンゼルス・タイムズの編集委員のトップが23日、自身の職位を退くことを明らかにした。同紙のオーナーによって大統領選で民主党候補のハリス副大統領を支持するという編集側の決定が阻止されたことへの抗議だとしている。

ロサンゼルス・タイムズの編集委員会を率いるマリエル・ガーザ氏はコロンビア・ジャーナル・レビューのインタビューに答え、辞任の理由について、同紙の意向を受け入れて沈黙するつもりはないとの意思を明確にしたいからだと語った。その上で「危険な時代にあって、正直な人々は立ち上がらなくてはならない。私はこのような形で立ち上がっている」と主張した。

ガーザ氏によると今回の辞任は、同紙オーナーのパトリック・スンシオン氏が編集委員会に発した通告に対するもの。2018年に5億ドル(現在のレートで約760億円)で同紙を買収したスンシオン氏は、今年の大統領選で候補者の推薦を行わないよう編集委員会に指示していた。同紙は08年大統領選で民主党候補だったオバマ元大統領を支持して以降、全ての大統領選でいずれかの候補者への支持を表明している。

カリフォルニア州で最大の部数を持ち、全米屈指の大手紙でもあるロサンゼルス・タイムズが大統領選の候補者への支持を見送る判断を下したことには、政治的介入の可能性があるとの疑念が浮上していた。ガーザ氏は、編集委員会として当初ハリス氏を支持する意向だったと上記のインタビューで明らかにしている。ハリス氏はカリフォルニア州の上院議員や州検事を務めた経歴を持つ。

ガーザ氏は、読者の大部分がハリス氏の支持者だとし、読者の考えを変えることは出来ないと思ったと述べた。

ロサンゼルス・タイムズの広報担当者はCNNのコメント要請に応じなかった。しかしスンシオン氏はソーシャルメディアへの投稿で編集委員会について、各候補者の政策の長所も短所も全て事実に基づいて分析する機会が与えられたとの見解を表明。各候補者が大統領に就任した場合、これらの政策が米国にどのような影響を及ぼすのかも分析の対象になるとした。

その上で「明確かつ党派性を排した情報を併記することで、読者は誰が次の4年間の大統領にふさわしいのかを決めることが可能になる」と述べた。

一方のガーザ氏は、かねて紙面では共和党候補のトランプ前大統領について民主主義にとって危険な人物であり大統領にふさわしくないと報じてきたと指摘。この状況で同紙がハリス氏支持に回らなかったことにより、読者は混乱し、疑念を抱く恐れもあるとの見方を示した。