扶養の範囲で「月7万円」ほどのパートをしていますが、来月から新しく「週10時間」ほどの仕事も追加する予定です。ダブルワークになると“社会保険”の扱いは、現在と変わりますか?

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最近は、2ヶ所以上で働く人が珍しい存在ではなくなりました。パート先を増やせば収入は増加しますが、気になるのは「扶養でいられるか」かもしれません。 パート先で社会保険に入ることになっても、収入が一定範囲を超えても、社会保険の扶養から外れることになります。本記事では、扶養内で働いていた人がダブルワークを始めた場合について、社会保険の扱いを紹介します。

パート先での社会保険加入

扶養内でパート勤務をしていた人が、新しくパート先を増やすと、社会保険はどのような扱いになるのでしょうか? A社で社会保険の加入要件を満たさず配偶者の扶養に入っていた人が、B社でも働くようになったケースで説明します。
 

「適用」はパート先ごとに判断

最初に、パートの社会保険加入要件についてみていきましょう。社会保険に加入するかどうかは、会社規模により次のように決められています。
 

被保険者数51人以上(2024年9月30日までは101人以上)の会社

次の全てに該当する場合は、社会保険に加入します。


・週の所定労働時間が20時間以上
・1ヶ月の賃金が8万8000円以上
・学生でない

被保険者数50人以下の会社

1ヶ月の労働時間および労働日数がフルタイム従業員の4分の3以上の場合に、社会保険が適用されます。
社会保険に加入するかどうかは、パート先ごとに判断します。A社とB社、それぞれの規模と労働条件に照らし、A社はA社で、B社はB社で社会保険加入の有無が決まるわけです。
 

両社で社会保険加入なし

この人は、現在の勤務先A社では社会保険に加入していません。
新たなパート先としてB社が加わりますが、B社の労働時間が短いなどの理由で社会保険が適用されなければ、結果として、どちらの会社の社会保険にも加入しないことになります。
なお、仮にA社でもB社でも社会保険の加入要件を満たしている場合は、両方で社会保険に入らなければなりません。この場合の社会保険料は、両方の報酬月額を合算し、A社とB社で按分した金額を支払います。
 

「130万円」以上になると

パート先で社会保険に加入しなくても、被扶養者の年収が扶養の範囲を超えると、扶養から外れなければなりません。
 

「扶養」は合計収入で判断

社会保険の適用はパート先ごとに判断しますが、「配偶者の扶養の範囲内か」は両方の合計収入で判断します。
つまりA社とB社の賃金合計が年130万円未満(60歳以上または一定の障害者の場合は180万円未満)か否かです。ここでいう「賃金」には、時給だけでなく通勤手当も含まれることに注意しましょう。
「年130万円」は、ひと月あたり約10万8333円ですが、A社のパート代が7万円なので、扶養範囲内でいられる残額は3万8333円です。B社で週10時間働くということですから、時給や通勤手当にもよりますが、130万円以上になってしまう可能性が高いでしょう。
 

合計収入が130万円以上になると

収入が年収換算で130万円以上になると、配偶者の扶養を外れなければなりません。その場合、会社の社会保険の加入要件を満たしていなければ、自分で国民健康保険と国民年金保険料を支払うことになります。
 

まとめ

パートを掛け持ちする場合、社会保険の適用はパート先ごとに判断しますが、扶養の「130万円」については合計収入で判定します。
勤務先の社会保険の加入要件に該当せず、自分で国民健康保険と国民年金を支払うことになった場合は、前年度の所得によっては保険料負担が少々重いかもしれません。
今後、どちらかの勤務先の労働時間を増やし、会社の社会保険に入れば、保険料が抑えられる可能性があるだけでなく、将来の老齢年金の増額にもつながります。せっかく働くのですから、長期的な目線で賢く働きたいですね。
 

出典

日本年金機構 私は、パートタイマーとして勤務しています。社会保険に加入する義務はありますか。
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士