研究対象となったホヤ=甲南大提供

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 人間など「脊椎動物」にしかないと考えられてきた頭部の元となる細胞を、無脊椎動物のホヤで確認したと甲南大などの研究チームが発表した。

 脳や口、耳などを備えた頭部が大きくなることが脊椎動物の進化につながっており、その過程の理解が進む可能性がある。論文が24日、科学誌ネイチャー電子版に掲載された。

 この細胞は「神経堤(しんけいてい)」と呼ばれ、受精卵の段階で発生し、人などの哺乳類や魚類、鳥類といった脊椎動物では頭蓋骨や顎などに変化して頭部を形成する。

 ホヤは背骨がない無脊椎動物だが、幼生は魚のように水中を動き回るため、脊椎動物に最も近いと考えられてきた。2010年代から、ホヤが神経堤を持つ可能性は指摘されていたが、証拠が少なく議論が続いていた。

 甲南大の日下部岳広教授(発生生物学)らのチームは、ホヤの受精卵に含まれ、神経堤との関連が指摘される細胞を光らせるようにして、受精卵から出生後まで3日間の変化を観察した。

 その結果、脊椎動物の神経堤と同様に色素細胞や神経活動に関わる「グリア細胞」に変化していることが確認できた。ただ、頭蓋骨などに変化する能力はない。

 日下部教授は「ホヤが持つ神経堤は、原始的な存在だ。解析を続ければ、人間の進化メカニズムの理解が深まるかもしれない」と説明する。

 理化学研究所の倉谷滋・客員主管研究員(進化形態学)の話「脊椎動物のスタート地点を探るのに大きな前進となる成果だ。ただ、現在のホヤの細胞にはホヤ独自の進化が影響している可能性に注意が必要だ」