賀来賢人「裏方として作品をつくることはやるつもり」新たな挑戦で広がった表現の可能性

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出演作が途切れずに続き、俳優としての着実なキャリアを培う一方で、自身で作品の企画・プロデュースを手掛けるなど、活躍ぶりは多岐にわたり、クリエイティブの新境地を切り開いている賀来賢人さん。「次はどんな作品で、どんな役柄を?」今、賀来さんの次の一手に注目が集まります。最新出演作は10月25日(金)より世界同時配信される、主演・竹内涼真さん、監督・武正晴さんによる『龍が如く 〜Beyond the Game〜』。賀来さんが演じるのは、主人公・桐生一馬(竹内)と養護施設で共に育ち、のちにライバルとして立ちはだかる兄弟分・錦山彰。

世界の人にどう見られても恥ずかしくない

――演じられた錦山という人物を賀来さんはどのように捉えていましたか?

「オファーをいただいたときは、あまりにも有名で伝説的ともいえるゲームなので引き受ける勇気が出なかったのですが、武監督をはじめ制作陣の情熱に突き動かされてしまいました。また台本を読んで、一番共感できた人間が錦山だったんです。すごく人間的であり、動物的でもあって、内面はなんとも可哀想で不幸なヤツで……。僕が彼の理解者でありたいなと自然と心を寄せることができたように思います。

実際に演じていても、精神的には理解ができたし、大変なことはなかったんですが、ただ体力的にはものすごくキツかった。アクションシーンでもただ一方的にボコボコにされていますしね(笑)。とあるシーンで、僕がドーンと倒されたときに、『上からかき氷、ぶつけていいよ』と武監督の声が聞こえてきたんです。誰にぶつけるんだろう?と不思議に思っていたら、その直後に僕にかき氷がぶつけられたんです。かき氷、投げられたことあります? めちゃめちゃ固くて痛いんですよ!(笑)」

――世界的な人気ゲームを原作として、さらに世界配信されるスケールの大きな作品になっています。手掛けた作品を世界へ発信した経験がある賀来さんの視点で、日本のエンタメが戦えるという確信はありますか?

「実感としては、すごくいい作品がつくれているなと手応えがありますし、世界にどれだけ受け入れられるかはわからないですけど、ただ『龍が如く』という作品に対して真正面から向き合って、オーセンティックに取り組んできたので、世界の人にどう見られても恥ずかしくない作品になっているという自負は、僕だけでなく、竹内くんや携わったすべての人たちの中にあります

独立して2年、直感力に突き動かされてきた

――本作で、竹内涼真さん、河合優実さんとは初共演でしたが、一緒に芝居をしてみて感じた魅力を教えてください。

「竹内くんはめちゃくちゃいい男で、芝居の話はもちろん、トレーニングや趣味のことまで、撮影中も色々な話をしました。真面目だし、ストイックで、彼のためならがんばれちゃうなって。僕、普段はもうちょっとクールというかドライなタイプなので、あまりそういった気持ちにならないんですけど、『竹内くんのためなら、がんばっちゃおうかな』って、そう思わせるほど魅力的な男でした。

河合さんについては、一緒に芝居をする前から竹内くんと『オーラがすごい』って話をしていたんですよ。実際、撮影に入ると彼女は絶対に小手先でやろうとしない。その腹の据え方が只者じゃないというか。小手先でやろうとしないから不器用ではあると思うんです。だけど、すべて自分のフィルターを通して表現しようとする人だから、純度が高くて、誰かに似るわけでもなく、彼女にしかできない表現が生まれる。あの無垢な強さが素晴らしいし、それがきちんと評価されていて、世の中捨てたもんじゃないなって思えました」

――賀来さん自身は事務所を独立されてから丸2年が経ちました。エンタメへの関わり方が多岐にわたっている状況ですが、この2年間での学びや手応えはどのようなものがありますか?

「それほど確かなものはなくて、根拠のない自信や直感力に突き動かされてきた感覚です。自分の内側に芽生えたものを、『絶対に実現してやる』と強い想いを持ち続けた2年間でしたね。言霊にするというか、想いを外側に発信して、現実にしていこうと思ってやってきました。振り返ってみると多少パワープレーな部分もありましたけど、結果オーライというか、トライしてよかったなと思うことがほとんどでした。

僕が突き動かされたそもそものはじまりは、コロナ禍に直面して仕事がなくなることに怯えている自分がいたことでした。当たり前に仕事が毎日あって、当たり前に安定したお給料をいただける生活ができると思うなよって、自分に喝を入れたというか。初心に帰るきっかけにもなって、先が見えないならば待つだけじゃなくて、好きなことをやるために自分から仕掛けていこうと動き出したんです

あきらめなければ、いつかは成功する

――自分軸で動いたり、発信することが可能になっている状況ですが、その中で見出す面白さややりがいはありますか?

「今までやっていないことに惹かれますね。直感でワクワクするものってあるじゃないですか。僕は、これまでに見てきたものややったことがあるものには、どうしてもアンテナが鈍くて、自分が未体験のものだったり、人から絶対やめた方がいいよと言われることほど可能性があると思っているタイプなんです。

成功するかしないかじゃなくて、努力すれば、あきらめなければ、いつかは成功すると思っているので、理想のカタチにならなかったとしても、努力すれば何かしら残るものがある。自分が恥をかかないためにがんばっている部分もありますけど、大切なのは努力の度合いだと思うんです。

僕は、誰かに見ていただくことが前提で表現というものが好きなんです。自分で何かつくったり、自分が出演してそれを見てもらえることが。だから自分が表に出なくても、裏方として作品をつくることはこれからやるつもりですし、必ずしも自分が表に出ることにこだわりはありません。今はなるべく表に出ないで作品をつくる経験を重ねていかないと、バランスが取れない気がしているんですよね。もっと真剣に裏側を知らないといけないなと思っています」

――現段階での自分の一つ一つの選択が、今後のキャリアにも大きな影響を与えそうですね。

「そうですね。楽しそうだからやりたいって飛びつきたくなる衝動を必死で抑えないといけない。ただ、1年後の自分ってわからないじゃないですか。仮に1年後のスケジュールを押さえたとしても、1年後の自分がどうなっているかはわからないので、本当に難しい仕事だなと思います。たとえば海外の仕事に標準を合わせるとしたら、1年後に日本での仕事を入れてしまうと取り逃がしてしまう可能性があるかもしれない。スケジュールを空けておくことも、ある意味では大事な選択なんですよね」

とにかく動かないと何も始まらない

――今の場所で輝くため、活躍し続けるために、ご自身の中で意識していることはありますか?

アンテナを張ること、人に会うことですかね。役者仲間でいえば、鈴木亮平くんともよく意見交換していて、海外事情などをシェアしてくれるんです。とにかく動かないと何も始まらないので、気になったら動いてみる。会いたい人に会って、コミュニケーションを自分から取りに行くようにしています。

同時進行で、英語を学んだり、体作りをして準備もしっかりしつつという感じです。準備も仕事だし、ときには待機したり、休むことも仕事なので、役者って特殊な仕事だなと思うときもありますけど、そこで一喜一憂はしない。

やったことがないことにトライするのと同時に、今までにやったことがあることを避けてみたら、今がすごく楽しくなってきたし、色々な刺激が舞い込むようになったんです。この先、10年、20年先も飽きずにこの世界を楽しめたらいいなと思います」

賀来賢人(かく・けんと)

1989年7月3日生まれ、東京都出身。2007年に俳優デビュー。以降映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。主な出演作に、ドラマ『今日から俺は!!』『ニッポンノワール―刑事Yの 反乱―』、配信ドラマ『忍びの家 House of Ninjas』、映画『今日から俺は!!劇場版』『新解釈・三國志』『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』など多数。待機作に、映画『聖☆おにいさん THE MOVIE〜ホーリーメン VS 悪魔軍団〜』がある。

撮影/生田祐介 スタイリスト/小林新(UM) ヘアメイク/藤原羊二(UM) 取材・文/長嶺葉月

「面白い」が何より強いと思ってた――賀来賢人が絶好調の必然