「水没車」どこまで復活できる? 豪雨続きで「水浸し」のクルマ増加!? 「ギリ乗れる」or「即廃車」のボーダーラインはあるのか

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復旧可能か廃車かの“分かれ道”はどこに?

 近年はゲリラ豪雨や線状降水帯による集中豪雨が発生し、多数のクルマが水没しています。
 
 テレビのニュースでは、冠水した道路を水しぶきをあげながら走行するクルマの映像を見ることがありますが、クルマがどこまで耐えられるのかは気になるところです。
 
 水没車の復旧作業をおこなった経験がある整備士に聞いてみました。

冠水路を走るクルマ

 今回話を聞いたT整備士が住むエリアは、普段から落雷やゲリラ豪雨の発生が多いといいますが、これまでは短時間に大雨になることは少なく、クルマが水没するとは考えられなかったケースがほとんどだったそうです。

【画像】「えっ…!」これが泥まみれになった「水没車の車内」です! (20枚)

「お客様にお持ち込みいただいたのはトヨタ『カローラルミオン』(初代)とホンダ『フィット』(2代目)でした。

 水没車の復旧は諦めるケースが多いのですが、両車ともなんとか自走できるとのことで、それなら復旧できる可能性は高いと判断しました。

 通常は水没によって電気系統がショートし、さまざまな電子部品が使えなくなってしまいます。今回はちょっと古い車種だったこともあって、先進運転支援システムのような複雑な電子機構を搭載していなかったことが幸いし、自走ができた可能性があります」

 通常、冠水時に車内に入り込む水は土砂を大量に含んだ泥水であり、乾燥しても大量の砂やゴミなどがあらゆる箇所に残留し、エンジンルーム内は茶色い土砂が残り、回路をつなぐカプラー内も砂だらけになります。

 今回の水没車はシートの座面が水で浸ってしまうほどの被害を受けたほか、さらにショートしてしまった箇所が多数あったといいます。

 では、どのような手順で復旧作業を行なうのでしょうか。

「水没したフィットはまずはシートを取り外し、フロアはカーペットまで全部剥がしました。このカーペットはたとえ洗浄しても、強烈な悪臭が取れなくなってしまうため、交換が前提です。

 またダッシュボードやセンターコンソール、そのほかのパネルも外せるところはすべて外し、主にスチームを用いて徹底的に洗浄しました」(T整備士)

 ちなみに取り外したシートもすべて分解し、内包されるスポンジやウレタンなども洗浄・乾燥を行ったとのこと。シートも交換する予定でしたが、純正の交換パーツの在庫がすでにないため、やむなく洗浄し再利用することになったといいます。

「自走できたのは救いでしたが、パワーウインドウはレギュレーターがダメになってしまい、左右のシートベルト・テンショナーは分解清掃をしました。

 搭載される地デジチューナーも水没しましたが、分解清掃後に乾燥させて復活させるなど、できる限りのことはやりました。ただし、エアバッグのCPUなども影響を受けて誤動作する可能性を残しています」(T整備士)

 一度クルマが水没してしまうと、いつ壊れてもおかしくない危険性となっています。

 今回、フィットはギリギリ復旧できたものの、ルミオンは残念ながら全損扱いに。車種や形状、搭載される精密機器の被害具合で、復旧できるか否かが分かれるようです。

「今回は急な増水による被害だったため、思いのほか冠水が汚れていなかったのが幸いし、1台は救出できましたが、河川の氾濫などでさらに土砂を含んだ濁流だったら復旧できなかったでしょう。

 それでも1台は廃車になるなど、完全に臭いを除去するのは難しいです」(T整備士)

 T整備士の判断では、車種によっても差はあるものの、ドアの半分程度、座面が水に浸ってしまう、またはシフトゲートが水没するあたりまでが、復旧できるかどうかの境界線と言えそうです。

「必ずしもカバーしてもらえるばかりではありませんが、可能なら車両保険に加入し全損扱いとして中古の同じ車種に乗り換えたほうが安全です。

 また電子機器が多いハイブリッド車などは完全復旧が難しいかもしれません」(T整備士)

※ ※ ※

 最近の洗浄技術は進化しており、電子部品なども冠水したときに通電していなければ、洗浄と乾燥で復旧するケースも多いそうですが、どうしても痕跡は残ってしまいます。

 冠水被害に遭う前にクルマを移動させたり、冠水路は迂回するという算段を考えておきたいところです。