記事のポイント

TikTokは新しい検索広告サービスを開始し、広告主を誘致しているが、パフォーマンス面での疑念が残る。

多くの広告主がパフォーマンスに懐疑的で、CPCやCTRが既存の検索広告より劣るケースが多い。

検索広告のアルゴリズムには改善の余地があるが、インセンティブや利便性で広告主の関心は続いている。


TikTokは公式に検索連動型広告ビジネスを開始し、マーケターにこの事業へ参加するよう、すでに説得をはじめている。

TikTokの担当者は、この新しいサービスに広告費を流入させようと、経済的な特典や戦略的なインセンティブを展開している。

今のところマーケターは興味をそそられているが、この広告が適切かどうかまだ迷っている。これらの広告はTikTokへの既存の広告費を補完するものなのか? それともまったく別物なのか? テストして見極める必要がある。しかし、たしかなことがひとつある。Googleの王座はまだ脅かされていない。

広告主は有料でTikTokの検索結果に広告を表示できるようになったが、Googleとの類似点はそれだけだ。通常、Googleのユーザーは意図をもって検索しにくるが、TikTokのユーザーはより受動的で新しい発見を受け入れやすい。

TikTokの幹部はここ数週間、エージェンシーやブランドとの対話のなかでそう繰り返してきた。同社は検索連動型広告を、直接的な販売促進ではなく、商品の発見と調査を促進させる手段として売り込んでいる。一方で、依然としてこれらの広告がパフォーマンス指標を提供できるという説明に固執しており、マーケターに対してほかのパフォーマンスチャネルの予算を配分し直すことを検討すべきだとさえ示唆している。

今のところ、マーケターは餌に食いつくことをためらっている。パフォーマンスの約束は魅力的だが、予算を移すにはまだ説得力が足りない。

広告業界が見守る次の一手



メディアエージェンシーのブレインラボ(BrainLabs)で有料ソーシャル担当バイスプレジデントを務めるジョン・モリーナ氏は次のように説明している。「我々の観点から言うと、TikTokは自社の検索ツールを従来の検索の代替として位置づけ、ほかのチャネルから予算を調達できないかと尋ねている。しかし我々は、これはアプリの追加の広告枠で、パフォーマンスの要件に応じて最適化したり、予算の増額を提案したりするものと見ている。従来の検索の代替または競合とはみなしていない」。

ただし、それは時間とともに変わるかもしれない。モリーナ氏のような広告会社の幹部はTikTokの動きを慎重に観察しており、こうした検索連動型広告が購入決定などの具体的な行動を実際に促進できるかどうか興味深く見ている。しかしこれまでのところ、初期のテストやケーススタディでは関心が投資に結びついていない。彼らは、決断を下す前にもっと証拠を見たいと思っている。

その理由はこうだ。マーケティング会社のティヌイティ(Tinuiti)がクライアントに代わってTikTokの検索連動型広告をテストしたところ、ほとんどのクライアントで既存の検索エンジン、さらにはTikTokのインフィード広告と比べてもCPCとCTRが低かったと、ティヌイティのイノベーションおよび成長担当シニアディレクターのジャック・ジョンストン氏は述べている。

ただし、違っていたブランドも2つあった。これら2つのブランドでは、通常のTikTokキャンペーンよりも高いCPCとCTRを達成しただけでなく、TikTok検索がCPC、CTR、ROASでGoogle検索を上回ったという。

そして、そこにこれらの広告に関する問題の核心がある。たしかに、表面的にはこれらの数字は有望に見え、メディアプランのほかのどことも異なる、新しいパフォーマンスの舞台となる可能性を示唆している。しかし結局のところ、ただ有望であるということにすぎない。そしてTikTokが、それを有望なものから実証されたものにするまで、ほとんどのマーケターは財布を開こうとはしないだろう。

「TikTokの検索連動型広告の初期パフォーマンスは好調に見えるが、より多くの広告主がテストを開始し、さらには同じキーワードに対して入札しはじめたときに、どのような展開になるかをチームで見ていく必要があると考えている」と、プログラマティック広告プロバイダーのベイシステクノロジーズ(Basis Technologies)でソーシャルおよびパートナーマーケティングソリューションのグループバイスプレジデントを務めるコリーン・フィールダー氏は語った。

そして、それはTikTokの問題のほんの一部に過ぎない。

アルゴリズムの精度とマーケターへの影響



コントロールの問題、というよりは、コントロールの欠如の問題もある。TikTokの検索連動型広告は、昨年このプラットフォームが実験をはじめてからずっと、広告主にとって痛手だった。はじめはTikTokがすべてを牛耳っていて、どのクエリでどの広告が表示されるかを決めるのもTikTokだった。

新しい設定により、より多くの選択肢がマーケターに与えられるようになったが、それもある程度というレベルだ。マーケターが関連するキーワードを選んだり、TikTokのシステムがマーケターの入力に基づいておすすめのキーワードを示したりすることは可能だ。

そこに行き詰まりの原因がある。最初のテストでは、パフォーマンスとブランドセーフティの懸念について改善の余地が大いにあったが、この問題はTikTokのアルゴリズムが有料インプレッションに値する検索語句をどのように決定するかに結び付いていた。合理的なものもあったが、完全に的外れなものや、ブランドにとってリスクになるものすらあった。

それでも、このような問題が初期にあったからといって、TikTokの検索連動型広告が最初から役立たないという意味にはならない。結局のところ、どんな新しい広告形式にも、マーケターからの懐疑論は当然のことで、TikTokの最新の広告形式には有利に働く長所がいくつかある。

まず、広告主はこの検索連動型広告のために新しいコンテンツを特別に作成する必要がない。既存の動画クリエイティブを使用できるため、少ない労力でキャンペーンに追加できる。さらに、TikTokは9月までに広告費の支払いを約束したユーザーに広告クレジットを与えると誘い、早期の導入を奨励している。投資額が多いほど獲得できるクレジットも多くなるため、実験したい広告主にとっては魅力的なオファーだ。

そのため、投資の価値があるとTikTokが証明できさえすれば、まだ解決すべきアルゴリズムの欠陥がいくつかあるものの、インセンティブと統合の容易さにより、TikTokの検索連動型広告は着実に支持を得るだろう。

「ソーシャルの観点からいうと、これは我々が待ち望んでいたコラボレーションだ」とデジタル広告エージェンシーのジャーニーファーザー(Journey Further)でインフルエンサーマーケティング担当ディレクターを務めるローレン・マクファーランド氏は述べた。

「これまでほとんどの広告主は、TikTokを認知度向上キャンペーンのいい選択肢のひとつとみなしていた。検索行動に合わせて広告をカスタマイズすれば、トピックを検索するユーザーに戦略的にリーチできる。検索連動型広告キャンペーン機能と検索連動型広告トグルがうまく統合されれば、検索機会を最大化し、コンバージョンを増やすという真の問題に解決策をもたらすだろう」。

[原文:TikTok’s Search Ads are live, but advertisers aren’t ready to reallocate those Google dollars]

Seb Joseph、Krystal Scanlon(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:坂本凪沙)