吉岡里帆(撮影:はぎひさこ)

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 トランスフォーマーの起源に迫る“はじまり”の物語『トランスフォーマー/ONE』。主人公オプティマスプライムたちと一緒に戦うことになるエリータ-1の日本語吹き替えを担当したのは、本作が洋画作品の吹き替え初挑戦となった吉岡里帆だ。オリジナル版ではスカーレット・ヨハンソンが演じたエリータ-1の役作りや自身との共通点、そして長いキャリアにおける“変化”について、吉岡に話を聞いた。

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ーー吉岡さんが『トランスフォーマー』シリーズの吹き替えを担当するというのは意外性があって驚きでした。

吉岡里帆(以下、吉岡):もともと『トランスフォーマー』シリーズは好きで観ていましたが、洋画の吹き替えに挑戦したことがなかったので、お話をいただいたときは私自身も驚きました。

ーー今回、声のトーンをかなり低くされていたのが印象的でした。オリジナル版のスカーレット・ヨハンソンさんの声を意識したところもあったのでしょうか?

吉岡:そうですね。スカーレット・ヨハンソンさんのお芝居を聞かせていただいて、近づけられるところは近づけたいなと思いました。あとエリータ-1はものすごく強いリーダー的なところがあって、男性にも負けないような図太さが魅力だと思ったので、普段の自分の声よりも太くしたいなと思ってアフレコに挑みました。

ーーアフレコでは思い描いていた通りにすんなりと演じることができたんでしょうか?

吉岡:自分自身は太くて強い声を出しているつもりでも、意識していないところで普段の声が出てしまったり、叫ぶシーンでどうしても地声が出てしまったりということがあって。自分で聞いて気になった箇所はリテイクさせていただきました。音響監督の岩浪(美和)さんが私のイメージしているエリータ-1を受け入れてくださっていたので、話し合いながら細かい調整を一緒にしていきました。

ーー岩浪監督はものすごくこだわりの強い方ですよね。

吉岡:そうなんです。私のプランニングも理解しようとしてくださるし、客観的に見てどのくらいの声の出力をしたらいいかも的確に教えてくださりました。私のことを受け入れつつ、さらに底上げしようとしてくださるので、ものすごく楽しいアフレコでした。

ーー自立心と行動力に溢れ、チームをまとめ上げるリーダーでもあるエリータ-1は、吉岡さんのイメージとも重なる部分があるように感じました。

吉岡:ありがとうございます。この作品はオプティマスとメガトロンの仲が良かった若かりし頃を描いているので、みんな初々しさがありますが、エリータ-1は初めからキャラクターが確立していて、1人で力強く生きている、ブレないスピリットを持っている印象でした。私自身もブレずに自分を信じて仕事をしているので、エリータ-1のようなカッコいいキャラクターを演じることができて嬉しかったです。

ーー吉岡さんもドラマや映画の現場で主演としてリーダー的な存在になることもあると思います。そういうときに何か意識していることがあれば教えてください。

吉岡:自分が主演をやらせていただくときは、ものすごく責任が伴う一方で、 関わってくださった方に「この作品に参加できてよかった」とか「吉岡里帆と一緒にできてよかった」と思ってもらいたいっていつも思っていて。できるだけコミュニケーションを率先して取るようにしていますし、取れる人でいたいなとも思っています。あとはやっぱりみんながのびのび過ごせるのが大事だなと。自分が若かりし頃、先輩方が気遣ってくださったり、優しさを見せてくださったりして嬉しかった記憶がありますし、そのおかげで萎縮せずにのびのび過ごせる現場を経験させていただいてきたので、私自身もそうやって素敵な現場をつくっていけたらいいなと思っています。

ーートランスフォーマーは車やバイクに変形して戦いますが、吉岡さんはご自身の中で何か変えたいところはありますか?

吉岡:なんだろう……。でも、ちょっと猪突猛進になりすぎるときがあるんです。そういうときは自分自身が疲れ果ててしまうので、もうちょっといい塩梅みたいなものを常に持っていたほうがいいんだろうなと冷静に考えたりはします。燃え尽きるまで全部出し切ってしまいがちなので(笑)。

ーー逆にいい作用が働くこともありそうです。

吉岡:でも現場によっては、適度に力が抜けているほうがバランスがよくなったりすることもあって。特に持久戦だったり長期間の撮影のときは、そういう感覚が必要だと感じることが多いので、最初からアクセル全開で行くのは変えていったほうがいいなと思っています。

ーーそのスタイルは昔から変わらないんですか?

吉岡:昔からそうです。いろんな仕事を並行してやらなければいけないときもあるんですけど、そういうときにもう少しバランスをとってお仕事できたらいいなと感じることが多いです。

ーー逆に十数年このお仕事をやり続けてきて、変わったことはありますか?

吉岡:変わったことは本当にたくさんあります。この間、デビューしたてのときにご一緒した方と何年かぶりにお会いしたんですが、その方が「当時の吉岡さんはものすごく緊張していて、いろんなことにビクビクしていた」とおっしゃっていて。まさにその通りで、当時は自分に自信が持てなかったですし、一つひとつのお仕事に緊張しすぎてしまって、固まってしまっていた時期だったんです。でもその後、たくさんの現場を過ごさせていただいて、いろんな人たちと出会って、どんどん自分が強くなっていきました。その過程で自分が主演をさせていただけるようになって、みんなに楽しい現場だと思ってもらいたいとか、チームのみんなと一緒に上がっていきたいという思いが芽生えるようになってきて、理想の自分がはっきり見えてくるようになりました。その方にも「芯のある強い人になった」と言っていただいたのですが、私自身もそこはデビュー当時から大きく変わった部分だなと感じています。

ーーデビュー当時からキャリア的にも大きな飛躍を遂げられています。過去のインタビューでは海外に対する思いも伺いましたが、ここ数年は『ガンニバル』や『忍びの家 House of Ninjas』など出演作が海外でも評価されていますね。

吉岡:先日、新しい作品で台湾のスタッフの方々と交流する時間があったんです。過去に韓国の俳優たちと共演させていただいたときもそうだったんですが、やっぱり海外で撮影をしたり海外の方と交流したりすると、毎回カルチャーショックを受けますし、日本とは違ういいところをたくさん知れたりするんです。最近は海外との合作作品も増えていますし、それこそ先日『SHOGUN 将軍』が第76回エミー賞で作品賞を受賞したときは本当に感動しました。『忍びの家 House of Ninjas』のときは、原案も務めた賀来(賢人)さんの海外に対する覚悟がものすごくて。結果的に海外の方たちにも受け入れてもらえる作品になったので、絶対に海外にも届けられると信じるところがスタートなんだなと実感しました。どんどん時代が変わってきていて、そうやってチャンスや可能性も広がっているのを肌で感じているので、私も映画やドラマを通して、日本のカルチャーを伝えていけたらいいなと思っています。

(取材・文=宮川翔)