「1日に履歴書50枚出しても採用ゼロ」「コミュ力が絶望的」オーストラリア在住日本人が語る「無計画すぎるワーホリ生」の厳しい就職事情

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ホームレス向けの食料配布に、日本人ワーホリ生が長蛇の列を作っているーー。これは数年前まで“ワーホリバブル”に沸いていたオーストラリアで、もはや日常となりつつある光景だ。

前編記事『「ワーホリを甘く見た」日本の若者たち、その悲惨すぎる末路…オーストラリアに殺到も「ホームレス向けの食料配布に長蛇の列」「仕方なく現地のキャバクラで働く人も」』では、ワーホリの厳しい現実を報じた。

後編ではオーストラリアに滞在する現役のワーホリ生を取材。現地で仕事を見つけるためには単純な語学力だけではない、複雑な事情が判明した。

コロナ前より仕事探しは難しい

2020年のコロナ禍以降、国内の働き手の減少や水際対策の緩和、さらに円安などの影響により“ワーホリバブル”が巻き起こったオーストラリア。

当時メディアには「日本にいたころよりも給料が2倍になった」「月に100万円近く稼げるようになった」などと、ワーホリ生のサクセスストーリーが取り上げられた影響で、語学や文化を勉強するよりも“出稼ぎ目的”で渡航する日本人が増加した。

ところが2022年ごろより、ふたたび世界中のワーホリ生がオーストラリアに押し寄せた影響で、仕事の需要は減少。朝日新聞は7月4日付けの記事で、オーストラリア第3の都市「ブリスベン」にある公園で、現地ボランティア団体が行なっているホームレス向けの食料配布会に日本人ワーホリ生が殺到していると報じた。

日本ワーキング・ホリデー協会の担当者も、「現在のオーストラリアはコロナ前よりも仕事を探すのが難しい状況」だと説明するが、果たして実際はどうなのか。

英語力がないなら、せめて資金力を

現地でワーホリ生向けのシェアハウスを営む20代の日本人男性はこう語る。

「たしかに現在のオーストラリアには多くのワーホリ生が訪れていて、日常会話レベルの英語すら話せない日本人ワーホリ生がすぐに仕事を見つけるのは難しい状況になっています。ただ、そうした子でも仕事が見つからないわけではありません。これは自分の周りにいるワーホリ生を見ていて感じたことですが、たしかに英語が話せないと求職先に電話もかけられないし現地のコミュニティにも入りづらい。

それでも3カ月以上にわたって毎日仕事を探していたら、さすがにどこかしら仕事は見つかるんですよ。だから求職期間を耐え忍ぶだけのお金さえ用意すれば、食料配布に並ぶような状況にはならないと思うんです」

準備資金として必要なのは、最低でも50〜60万円。前出の男性は「英語力がないなら、せめて資金力だけは備えてオーストラリアに来たほうがいい」と話すが、必ずしもこのパターンに当てはまらないワーホリ生もいるという。

「僕が知り合った人のなかには、英語も話せずに資金も10万円しか持ってこなかったワーホリ生がいましたが、その子は数値では測れないコミュニケーション能力を持っていました。その子はスケボーが趣味で、スケボーパークに通っていたらしいんですけど、そこで言語の壁を超えてどんどんローカルの友達を増やしていったんです。

そうなると自然に英語力も身につくし、現地のコミュニティに入り込んだ甲斐もあってすぐに仕事も見つかった。こんな状況でオーストラリアに来ても、ワーホリを成功させてしまう子は全然います」(前出の男性、以下「」も)

現役ワーホリ生「私はこうして仕事を得た」

そうしたワーホリ生に共通するのは、他人を惹きつける人間力にあるという。前出の男性は「英語が話せなくても相手に気に入られたり好かれたりして、あなたと一緒に仕事がしたいと思われる人材かどうかが大切なんです」と言う。

「だから英語については絶対に必要なスキルかと聞かれたら、そうじゃないと思うんです。実際には、先ほどのようにコミュニケーション能力を発揮したり、日本にいるうちに現地の働く先のツテを作っておいてワーホリを成功させている子もいます。

ただ、そういう子ばかりがワーホリに行くわけではないので、現地の情報を発信するインフルエンサーたちは『英語力はちょっとは身につけてきたほうがいいよ』とか『資金を準備してきたほうがいいよ』と情報発信してるんだと思います」

そんななか、オーストラリアに滞在する現役のワーホリ生(20代・男性)が取材に応じてくれた。この男性も、過去にフィリピンに半年間だけ留学していたものの、英語力も資金力も準備不足のまま渡航した一人。現在はワーホリ3年目で、庭師として月に60万円もの給料を得ているが、異国の地で初めて仕事を探すときは苦労したという。

「当時は一日に50件ちかくは履歴書を出してましたし、求職先には片っ端から電話をかけていました。それでも無視されたり、選考を落とされることもザラにあるので、連絡が返ってきたところには速攻で返信したり、運良く面接が決まっても同時並行で履歴書を送り続けてました。それを1、2ヵ月ほど続けてようやく決まったのが、飲食店に調味料やお酒を届ける配送ドライバーでした」

当時の月給は手取りでおよそ40万円。この職場を皮切りに現地コミュニティに入り込み、現在の仕事にたどり着いたという。

日本流の面接ではまったく通用しない

ワーホリを通じてこの男性が感じたのが、日本とオーストラリアの職探しの違いだ。

「日本の場合って求人票に『未経験歓迎』とか書いてあって、履歴書を送ったら『いつ面接にしますか?』とか『分からないことがあっても一から教えます』みたいな感じで対応してくれるので、すごく求職者に優しい。これがオーストラリアの場合は、アルバイトだとしても『仕事を教えてください』的なスタンスで行ったら、まず相手にされない。

見栄でも嘘でもいいので『〇〇できます』とか言っておかないと、面接の担当者からしても『なんでお金をもらいにくるのに学ぼうとしてるの? それなら学校に行けよ』と言われちゃう。だから僕も、配送ドライバーの面接では、ペーパードライバーのくせに『運転は得意です』とか『過去にやってました』とか嘘をついてました(笑)。

それだけオーストラリアでは能動的に動かないと仕事に就けません。日本にいたときと同じように、仕事は与えられるものという感覚で(ワーホリに)来る人が多いから上手くいかないんだと思います」(前出の男性、以下「」も)

この男性の周りでも「仕事がない」と愚痴をこぼす日本人ワーホリ生は後を絶たず、諦めて帰国した人も見てきたという。

「ワーホリ1年目のころに、3ヵ月限定で農場でアルバイトをしたことがあるのですが、そのなかの日本人同士が付き合うことになり、カップルルームと呼ばれる部屋で同棲することになったんです。ところが、とにかく次の仕事が決まらない。そのあとは僕自身もあまり連絡を取らずに疎遠になってしまったのですが、どうやら一緒に住んで数ヵ月経ってから、2人で日本に帰国したみたいです。

それと、以前まで一緒に工場で働いていた女の子も、シフトがもらえなくて週に2日しか出勤させてもらえなかったんですよ。それで彼女自身も、『オーストラリアにくれば新しい自分に出会えるかな』と思って渡航したそうなんですけど、だんだんと目的を失いはじめて結局は帰国してしまいました」

周囲と同じ思考回路を捨てるべき

途中でリタイアしてしまったワーホリ生に関して、前出の男性は「もう少し色んな人にアプローチしていく積極性があれば、仕事に巡り会えたかもしれないのに…」と肩を落とす。その一方で、仕事の探し方自体に問題があるワーホリ生も少なくないという。

「ワーホリ生ってまず最初に履歴書をレストランとかカフェに配りに行くんですよ。でも、英語も十分に話せない状態で雇ってもらうことすら難しいのに、周りと同じ思考回路で動いても上手くいくわけないですよね。そもそもレストランをはじめとする飲食店は、全世界共通で人気の高い職業なので、そんなところばかりに履歴書を送ってもあぶれるに決まってるじゃないですか。

だから例えば、未経験でも雇ってくれそうな倉庫の仕事とか、建築系の仕事にアプローチしてみるとか、やり方は色々あると思うんです。僕らは自分がやりたい人生にしたいからワーホリに来てるわけだし、仕事がないんだったら泥臭くてもいいから、どうにかして見つけるしかないじゃないですか」

異国の地で待ち構える厳しい現実。それはワーホリのキラキラしたイメージとはほど遠いものだったーー。

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