J1は残り8節となり、優勝争いや残留争いもチームが絞られてきた。熾烈な争いとなるシーズンのクライマックスで、各チームのカギになる選手を紹介する。


柏レイソルのストライカー・細谷真大。エースの活躍でチームを残留に持っていけるか photo by Getty Images

【リーグに専念できる町田は有利】

 今季のJ1も残すところ8節となり、佳境を迎えている。第30節を終えて優勝争いをリードするのは、勝ち点58で首位に立つFC町田ゼルビア。それを追いかけるのが、2ポイント差で2位のサンフレッチェ広島、3ポイント差で3位のヴィッセル神戸。

 消化試合数がひとつ少ない勝ち点49で4位の鹿島アントラーズ、勝ち点48で5位のガンバ大阪もわずかに踏みとどまっており、町田、広島、神戸を中心に上位5クラブがタイトルレースを争っている。

 そのなかで、もっともタイトルに近いと言えるのは、日程面から見て町田になるだろう。広島と神戸は9月中旬からAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグがスタートした。週半ばの試合、とくにアウェーゲームは大きな負担になる。それだけに、リーグ戦に専念できる町田にかなりのアドバンテージがある。

 その首位・町田だが、第29節までのリーグ6試合で1勝3分2敗とやや勢いを失い、勝ち点を思うように伸ばすことができずにいた。第29節では得失点差によって約3カ月ぶりに首位から陥落。しかし、第30節でアビスパ福岡に3−0と3試合ぶりに勝利し、再び首位に返り咲いた。

 この快勝を先導したのは、韓国代表のFWオ・セフンでもパリ五輪代表のFW藤尾翔太でもなく、40歳のいぶし銀、FW中島裕希だ。失いかけていた前線からのプレッシャーの強度を中島のチェイシングによって取り戻しつつある。

 初優勝へさらに歩みを進めるためには、攻撃陣の奮起が必要だ。なかでも活躍が求められるのは、福岡戦で約1カ月ぶりに復帰したFW相馬勇紀だ。突出した点取り屋がいない町田は、相馬らのクオリティによってより多くのチャンスを創出するしかない。

 最大の山場となるのは、第32節での広島との天王山。前回対戦はスコアの上では接戦でも内容は広島に圧倒されての敗戦だった。この大一番を町田が乗りきることができれば、J1初昇格・初優勝という快挙が見えてくるだろう。

【広島、神戸はACLも戦いながらの争い】

 その町田と熾烈な争いを演じる広島は、7月から8月にかけて7連勝というクラブレコードを記録。町田にプレッシャーをかけ、第29節でついに捉えた。翌節で再び首位を奪われたものの、今もっとも勢いのあるチームだ。

 その旗手となったのは、夏に加入したMF川辺駿とMFトルガイ・アルスラン。MF野津田岳人、MF川村拓夢を海外移籍で失ったものの、中盤の構成力や推進力、得点力はむしろ上がった。そして9月、FW大橋祐紀が移籍、FWピエロス・ソティリウが負傷離脱で手薄になったところにFWゴンサロ・パシエンシアが加入。デビューとなった鹿島戦で早速得点し、スケールの大きさを感じさせた。終盤戦でさらに勢いをもたらすか。

 懸念はやはりACLによる日程面だ。メンバーを固定する傾向の広島は、主力の負担はかなり大きい。グループリーグ第1節・カヤFC戦はターンオーバーを敷いたが、どこまで続けるか。

 神戸も広島同様、直近5試合で4勝1分と町田が足踏みする間にじわじわと追い上げ、気がつけば3ポイント差と上位2クラブを視界に捉える位置につけた。キーになるのはやはりFW大迫勇也だろう。

 得点はもちろん、大迫が前線でボールを収めることで神戸の攻撃は始まる。シーズン中盤では苦しんだ時期もあったがここに来て得点数を伸ばし、10得点と2ケタに乗せた。町田、広島にプレッシャーをかけるために大迫の活躍は不可欠だ。

【失速気味の鹿島&G大阪はエースの奮起で食い下がれるか】

 2016年以来のリーグタイトルが欲しい鹿島だが、直近4試合で勝ちがなく、失速気味だ。しかし、広島との直接対決となった第30節では、一時逆転を許すも17歳のFW徳田誉によるクラブ最年少ゴールで引き分けた。鹿島としては絶対に勝ちがほしい試合ではあったが、この引き分けで優勝争いにおいて首の皮一枚つながったところだろう。

 シーズンを通してほとんど一貫したメンバーで戦う鹿島にとって、キーマンがFW鈴木優磨であることは不動だ。それに加え、今季はボランチを務める知念慶の守備力が屋台骨となってきた。MF佐野海舟の移籍によって、中盤の強度と推進力がやや低下したことは否めないが、鈴木、知念を中心にどこまで食い下がれるか。

 鹿島よりさらに厳しいポジションにいるのがG大阪だ。7月14日の第23節以来、2敗4分と勝てていない。深刻なのは得点力だろう。直近6試合のうち4試合で無得点。上位のなかでは極端に得点数が少なく、シーズンを通しての課題でもある。

 カギとなる、というより頼りにするしかないのがFW宇佐美貴史のクオリティだ。今季、幾度も劇的なゴールでチームに勝利をもたらしてきたエースも、ここに来てやや得点力が低下。だが、宇佐美の奮起なくして奇跡を起こすのは難しいだろう。

【どのチームも苦しい残留争い。抜けるのはどこ?】

 残留争いも僅差の戦いがつづく。第30節終了時点で、最下位・サガン鳥栖(勝ち点24)、19位・北海道コンサドーレ札幌(勝ち点25)は、残留圏の17位・湘南ベルマーレ(勝ち点32)とややポイント差が離れ、厳しい位置と言わざるを得ない。

 一方、18位・ジュビロ磐田(勝ち点31)、17位・湘南、16位・柏レイソル(勝ち点33)は1試合の結果でひっくり返るポイント差だ。しかも柏、磐田は消化試合数がひとつ少ない。この順位はあくまでも暫定だ。

 柏は直近のリーグ3連敗、前節は残留争いの磐田との直接対決にも敗れた。天皇杯も含めば公式戦4試合連続で失点が止まらず、チーム状況としてはかなり厳しい。寄せの甘い守備も気になる。キーマンを挙げるとすればFW細谷真大か。昨季は14得点もここまで4点ともの足りない。エースの得点でこの悪い流れを変えたい。

 7月に3連勝と好調だった湘南。しかし、第27節・柏戦に敗れて以降、やや失速気味だ。そんななかで前節、一発退場のFWルキアンが3試合の出場停止。2列目のMF池田昌生が負傷離脱と主力ふたりを欠く危機。このピンチにFW鈴木章斗が奮起できるか。

 磐田は前節の柏に2−0で勝利し、連敗を止めることができた。9試合ぶりのクリーンシートでの勝利で浮上のきっかけを掴みたい。大エースのFWジャーメイン良が軸ではあるが、それをどれだけ周りがサポートできるかだろう。

 絶望的な状況に思えた札幌だったが、第24節・浦和レッズ戦の勝利から徐々に復調すると、第27節から3連勝を記録。湘南、柏との直接対決を残し、奇跡の残留がかすかに見えてきた。守備の穴を塞ぐアンカーの大崎玲央がチームのカギを握る。

 夏に多くの主力が離れた鳥栖は直近8試合で1分7敗、監督交代でも状況は変わらず、挙げ句の果てにはFWマルセロ・ヒアンがケガで長期離脱。言うまでもなくもっとも厳しい状況にあるなかで、MF西矢健人のゲームメイクは希望となり得るか。

 残り8節となっても1節の結果で順位が変動する状況で、正直、優勝も残留も行く末はまったくわからない。だからこそ、今季のクライマックスからは少しも目が離せない。キーマンを中心に各クラブが、この状況をどのように切り抜けるのか注目だ。