―株式需給改善と米利下げ局面入りで資金還流、海外マネーのドテン買いも観測―

 東京株式市場では半導体主力株の上値が重いとはいえ、マーケット心理は改善し全体指数は着実な戻り足をみせている。ただ、足もとで最も熱気を帯びているスポットはプライム市場ではない。個人投資家が離散しつつあったグロース市場の銘柄群が久々に咆哮(ほうこう)している。好業績で成長性に富む有望株を拾うなら今は絶好のチャンスだ。

●8月相場は大山鳴動で長い下ヒゲ形成

 波乱の8月相場が幕を下ろした。東京市場では8月1日に日経平均株価が975円安、2日に2216円安、そして週を跨いだ5日に4451円というブラックマンデー暴落時を超える過去最大の下げ幅を記録、8月に入って最初の3営業日で何と7600円強、率にして約20%の大暴落となった。米リセッション懸念がくすぶるなか、日銀のタカ派スタンスへの豹変、そして過激な円高進行が共振し、2020年3月のコロナ暴落に匹敵する緊張感がマーケットに走ったといってもよい。しかし、そこからの復活劇も特筆に値するものであった。

 8月初旬の暴落では、海外ヘッジファンドの売り仕掛けが入ったことは8月第1週の1兆2700億円あまりの先物売り越しが明確に示唆している。ただ、これだけではない。個人投資家が積み上げていた信用買いポジションの解消、いわゆる投げ売りを誘発し下げが急加速する格好となった。追い証発生が頻発するなかで、それを回避するための叩き売りで日経平均はフリーフォール状態となり、約10カ月ぶりの安値水準である3万1000円台まで一気に売り込まれる状況となった。しかし、これが結果的に陰の極となった。8月の最終商いとなった30日、日経平均は3万8647円で取引を終えている。8月は月足でみると記録的に長い下ヒゲを伴う陽線を形成する形となった。

●海外ファンド筋にアンワインドの動き

 8月相場で唖然とするよりないリスクオフの洗礼を浴びた個人投資家だが、暴落によって株式需給関係は劇的に改善した。その需給改善の恩恵が最も色濃く映し出されているのがグロース市場である。市場関係者によると「8月初旬の暴落によって信用買い残高は7月上旬に比べ約30%も減少するという、近年では記憶にない超スピードで整理が進捗した」(ネット証券アナリスト)という。

 振り返って、グロース市場(旧マザーズ市場)はここ2年以上にわたり低迷を強いられてきたが、安値圏もみ合いが続くなかも信用買いの総投げ状態に陥るようなことは一度もなかった。これが、相場が反転しても潜在的な戻り売り圧力が強く上昇局面が続かない最大の理由となっていたが、今回その足かせが外れた格好となり、逆に言えば買い方にとっては真空地帯の戻り相場を体感できる滅多にないチャンスとなっている。これまで貸株市場を通じて空売り攻勢をかけていた海外ヘッジファンド筋も、信用買い残の減少で調達コストが上昇し、買い戻しを余儀なくされている。一部ではドテン買いに転じる動きも観測されているようだ。

●FRBの利下げでグロースに追い風吹く

 日米を問わず金利上昇局面では、株式市場においてグロース株への投資資金流入は細るというのが常識である。とりわけ米長期金利の動向と日本のグロース市場の株価連動性は高い。20年3月のコロナショック以降は世界的に緊急的な財政出動や金融緩和が一斉に行われ、その結果、コロナ禍が明けたころから世界的なインフレ進行が始まった。そうしたなかFRBが利上げに踏み切ったのが22年3月。グロース市場250指数はその直前から急激に水準を切り下げている。