東京商工リサーチ(TSR)は8月27日、企業を対象に8月上旬に実施した「企業のカスタマーハラスメント(カスハラ)」に関するアンケート調査の結果を公表した。同調査でカスハラを受けたことがある企業が約2割あることが明らかになった。

カスハラを「受けたことがある」が約2割(出典:東京商工リサーチ調査)

調査によると、直近1年間でカスハラを受けた企業は全体の19.1%と約2割に達した。規模別では、大企業が26.1%、中小企業が18.4%で、「ない」は大企業が73.9%、中小企業が81.5%であった。大企業の方がカスハラを受ける割合が高い背景には、取引先や顧客が多くクレーム対応の機会が多いためだと東京商工リサーチはみている。

カスハラを受けた経験がある企業を業種別に見ると、「宿泊業」が72.0%で最多。次いで「飲食店」が64.8%、「道路旅客運送業」が55.5%と続き、個人客と接する機会が多いサービス業や小売業が上位を占めた。

カスハラを受けた企業のうち、休職が発生した企業は4.3%、退職が発生した企業は5.3%、休職と退職が発生した企業は3.8%で、「休職や退職が発生した」は合計13.5%と、10社に1社がカスハラによる休職や退職を経験している。規模別では、大企業が17.4%、中小企業が12.9%と大企業の方が割合が高い。一方で、カスハラによる退職や休職には至らなかった企業は全体の86.4%(大企業82.5%、中小企業87.0%)であった。

カスハラにより「休職や退職が発生」は13.5%(出典:東京商工リサーチ調査)

カスハラによる休職や退職が発生した企業を業種別にみると、「窯業・土石製品製造業」が50.0%で最も高く、次いで「道路旅客運送業」と「化学工業」が各40.0%、「各種商品小売業」が33.3%、「不動産取引業」が26.0%であった。

カスハラの内容で最も多かったのは、「口調が攻撃的・威圧的だった」で73.1%。次いで「長時間(期間)にわたって対応を余儀なくされた」が50.1%、「大きな声を上げられた」が38.9%、「一方的に話し続けられた」が37.5%。少なかった回答では、「暴力を振るわれた」が2.1%、「録画・録音された」が3.3%など。規模別では、「長時間(期間)にわたって対応を余儀なくされた」は大企業で59.7%と中小企業の48.6%より高い。

カスハラの内容は「口調が攻撃的・威圧的」が73.1%(出典:東京商工リサーチ調査)

カスハラへの対策について、「特に対策は講じていない」と答えた企業が71.5%と7割を超え、現場の社員に対応を任せるケースが多いことがわかった。一方、対策を講じた企業の中では「従業員向けの研修を行った」が12.4%で最も多く、次いで「従業員向けの相談窓口を設置した」が8.7%、「カスタマーハラスメントの対応方針を策定した」が6.3%であった。

規模別では、「特に対策を講じていない」は大企業が54.4%、中小企業が73.4%。従従業員向けの「研修」実施は大企業が24.0%、中小企業が11.0%、「相談窓口の設置」は大企業が18.8%、中小企業が7.6%。いずれも中小企業の方が大企業より低いが、大企業でも対策は十分に進んでいない状況だという。

カスハラへの対策は「講じていない」が7割超(出典:東京商工リサーチ調査)