「もっと文化として根付けば」 元日本代表DFが感じる世界へ近づくための“伸びしろ”【インタビュー】
10代〜20代前半の若手が次々と海外挑戦…昌子源が太鼓判「Jリーグはレベルが高い」
J1首位に立つFC町田ゼルビアのDF昌子源は、海外リーグや国際大会を多数経験し、“世界を知る”選手の1人だ。
百戦錬磨のセンターバック(CB)に、日本サッカー界が今後さらに成長していくために必要なことを訊いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)
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昌子は2011年にJリーグの“常勝軍団”鹿島アントラーズでプロキャリアをスタートさせ、18-19シーズン、19-20シーズンはフランス1部リーグ・アンのトゥールーズに所属。20年2月に日本国内復帰を決め、ガンバ大阪、古巣・鹿島、そして今季から新興勢力の町田でプレーする。
鹿島時代にはクラブワールドカップ(W杯)でスペイン1部ラ・リーガのレアル・マドリードと2回対戦し、G大阪時代にはプレシーズンマッチながら当時フランス1部パリ・サンジェルマンに在籍していたアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(インテル・マイアミ)や、ブラジル代表FWネイマール(アル・ヒラル)らスーパースターの実力を体感。代表シーンでは20キャップを刻み、2018年のロシアW杯では守備の要を担った。
イングランド1部プレミアリーグに所属するMF遠藤航、フランス1部スタッド・ランスのMF伊東純也は昌子と同世代。「(30歳を超えて)日本だったらベテラン、海外だったらなおさらベテランの括りにされる年齢で、プレミアリーグの第一線、リーグ・アンの第一線でやっているのは本当に凄い。彼らの活躍が刺激になりますよね」と笑顔を見せる。
31歳となり、さまざまな経験をしてきた昌子は、「Jリーグはレベルが高いと思っています」と語る。自身も海外移籍を経験しているが、近年では20代前半のみならず、10代のうちに海を渡る日本人選手が増えてきた。
「今は日本人選手がクラブを選べる時代になってきています。オファーが来たらとにかく行って、自分たちで価値を高めてステップアップするのではなく、何億円という移籍金を払ってまで獲得してくれるケースもある。それは間違いなく、(遠藤)航とかトミ(冨安健洋)、三笘(薫)くん、(久保)建英たちが世界の第一線で頑張ってくれているから。もっと遡れば、(小野)伸二さんやシュンさん(中村俊輔)たちもいますけど、当時でさえ世界はまだ狭き門だった。
最近では町田から平河(悠)が海外へ行きました。イングランド2部(ブリストル・シティ)でも、結果を残せばすぐに上が見えてくる世界。悠が活躍すれば、A代表に入っていなくても、『日本にはこんなにいい選手がいるんだ』と、スカウト陣が注目してくれるはずです。これから先、日本人選手の海外移籍はどんどん出てくると思うし、さらに(日本サッカーの可能性が)広がっていく。世界ではスペイン代表の16歳(ラミン・ヤマル)がEURO(欧州選手権)でフランス代表相手に点を取って名前を轟かせる時代ですから」
日本でもサッカーが「文化として根付く」ことが必要
選択肢が増える分、その決断に対する議論も必然と生じる。SNS全盛の時代となればなおさらだ。昌子自身、移籍を含めて過去に厳しい声を受けた経験もあると明かしつつ、それでも自分のプレーで周囲を認めさせるしかないと、プロ選手としての矜持を覗かせる。
「J2から海外へ行ったり、Jリーグを介さずに行ったり、凄いですよね。今はSNSが普及して、批判がすぐに自分の目に入る時代。自分が正解だと思うから決断するわけですけど、周りからするとそうじゃないこともあって、『そのクラブに行く?』『まだ早い』とか論争が起こる。その移籍が正解だったと思わせるのは、結局は自分の活躍次第なんですよね」
日本サッカー界が今後さらに成長していくためには――。昌子はサッカーの秘めるポテンシャルを信じつつも、ほかの競技と比べるとまだ環境改善も必要だと説く。
「海外だと年俸数億円の選手が山ほどいるのに対して、日本ではその数が限られる。日本国内でも、野球は何億円も稼ぐ選手が多くいるけど、サッカーでは1億円で目を引く状況なので、サッカーも同じようになればもっと夢が広がる。野球は地上波があって、文化になっている。サッカーも(イングランドの)プレミアリーグほどまでとは言わないまでも、サッカーがもっと文化として根付いていけば新たな可能性が出てくると思います」
昌子自身、さらなる成長と日本サッカー界の発展のためにどこまでも自分をいじめ抜く。
[プロフィール]
昌子源(しょうじ・げん)/1992年12月11日生まれ、兵庫県出身。米子北高―トゥールーズ(フランス)―G大阪―鹿島―町田。J1通算271試合・9得点。日本代表通算20試合1得点。スピード、対人守備、判断力、フィード力を兼ね備えた万能センターバック。ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドやフランス代表FWキリアン・ムバッぺといった世界最高峰のアタッカーとの対戦経験を持ち、今季は新天地の町田でキャプテンとしてチームを牽引する。冷静な分析や言語化するセンスにも長ける。(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)