町田が勝利から遠ざかっている【写真:(C) FCMZ】

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Jリーグ今季前半戦を席巻した強度勢に変化、プレースタイルと気候の関係

 日本の夏は異常に暑い。

 気温だけでなく湿度が厳しい。東南アジアに比べればましかもしれないが、サッカーをするには危険なくらい。鍛えているプロの選手といえども、かなり過酷な条件だ。

 今季のJ1は強度の高いプレースタイルのチームが上位にいる。プレーのテンポが速く、プレッシングを敢行しているチームが前半戦で優位だった。ところが、約3週間の中断の前後から少し傾向が変わってきた。

 縦に速い攻め込みとプレッシングで典型とも言えるFC町田ゼルビアは第26節時点で依然として首位にはいるが、中断明けの2試合は1分1敗。中断前の横浜F・マリノス戦も落としていて3試合勝利がない。パリ五輪で平河悠、藤尾翔太がチームを離れていた影響があるとはいえ、急な失速はプレースタイルと気候の相性の悪さが関係しているのではないか。

 2位の鹿島アントラーズは第26節ジュビロ磐田戦を1-2で敗戦。昨季王者のヴィッセル神戸も中断明けの2試合は1勝1敗。上位陣にブレーキがかかっている。

 逆に好調なのが4連勝のサンフレッチェ広島。目下4連勝で町田とは4ポイント差に迫っている。広島も強度型のプレースタイルなのだが、トルガイ・アルスランと川辺駿の補強で少しテンポを変えられるようになっている。

 ここ5試合で4勝1分の湘南ベルマーレも好調。順位は16位だが、プレーぶりは良い意味で下位らしくない。しっかりとボールを支配する攻撃は上位チームさながらで、現時点での実力と順位が合っていない感じである。パスワークに定評のある川崎フロンターレも3連勝。今のところ10位だが、巻き返しが期待できそうだ。

 欧州型のインテンシティーの高いプレーは確かに迫力がある。相手のエラーを誘発しやすく、ミスのゲームとも言われるサッカーの一面を捉えた戦い方ではある。しかし、欧州がそういうプレースタイルなのは比較的気候が穏やかだからだ。

 そもそも基本的に真夏にリーグ戦をやっていない。冬は凍てつくように寒いが、それは運動量の低下にはつながらない。南米は欧州に比べるとテクニカルでテンポもゆっくりしているのは気候の違いが影響していると考えられる。

 日本の場合、春秋冬に大きな問題はないが(積雪地域は除く)、夏場にリーグを開催しているという特殊な事情があるわけで、強度で押し切るにはかなり厳しい。ボールを握って、ある程度ゲームをコントロールできないと不利な条件と言える。

 かつて強度型の典型だったイングランド代表は「60分問題」を抱えていた。60分前後に自らの強度に耐えられなくなる問題があり、対戦相手はイングランドの息切れを待つのが常套手段となっていた。

 現在は5人交代が定着しているので強度勢には追い風ではあるが、Jリーグの場合は気候との戦いが待っている。強度勢と対戦するチームはガス欠を待てばいい。前半戦を席巻した強度勢にとっては試練の季節となっている。(西部謙司 / Kenji Nishibe)