WindowsではOSに何らかの異常が発生した時、青い背景にエラーメッセージが表示される「(死の)ブルースクリーン(Blue Screen of Death)」が画面に映し出されます。このブルースクリーンの生みの親は誰なのかについて、30年以上にわたってMicrosoftでWindowsの開発に携わるエンジニアのレイモンド・チェン氏が公式ブログで解説しています。

There is no mystery over who wrote the Blue Screen of Death, despite what some may want you to believe - The Old New Thing

https://devblogs.microsoft.com/oldnewthing/20240730-00/?p=110062

チェン氏によると、ブルースクリーンの生みの親と呼べるのはチェン氏とMicrosoftの元CEOであるスティーブ・バルマー氏、Microsoftのエンジニアであるジョン・バート氏の3人だそうです。生みの親が3人いるというのはおかしな話に聞こえますが、実はそれぞれ携わったバージョンが異なるそうです。

ブルースクリーン自体はWindows 1.0から存在していますが、以下のムービーを見ると分かる通り、エラー時はランダムな文字が出力されるのみで、システムメッセージは表示されませんでした。

Windows 1.0 BSOD (Incorrect DOS Version) - YouTube

青い背景にシステムメッセージが表示されるというスタイルが採用されたのはWindows 3.1から。以下の画面はWindows 3.1のもので、そのシステムメッセージの文面はバルマー氏が書いたものだとのこと。バルマー氏は当時システム部門の責任者で、自分でWindows 3.1を触ってチェックした時にシステムメッセージのテキストが気に入らず、自分で書き直したそうです。



ただし、上記の画面はエラー時に表示されるものではなく、Ctrl+Alt+Delを押すと表示されるものなので、厳密にはブルースクリーンではありません。また、バルマー氏が担当したのはメッセージを表示するためのコードではなく、あくまでも「画面に表示されるメッセージ」のみです。

「バルマー氏がWindows 3.1のシステムメッセージを書いた」という事実は、チェン氏によって2014年にも指摘されています。

Windowsのブルースクリーンを開発した人が知られざる事実を明かす - GIGAZINE



なお、Windows 3.xではOSにエラーが生じると、今のようなブルースクリーンはなく、「ブラックスクリーン」と呼ばれる以下の画面が表示されました。



エラー時にブルースクリーンが表示されたのはWindows NTカーネルが最初で、以下の画面はバート氏が作成したそうです。Windows NTカーネルでブルースクリーンが表示された場合、その時点でシステムが回復不能な状態であることがほとんどだったため、まさしく「死のブルースクリーン」といえます。



当時を知るMicrosoftの元エンジニアであるデヴィッド・プラマー氏によれば、このブルースクリーンのデザインはWindows 3.xを参考にしたものではなく、「当時のユニバーサルカラーパレットが非常に初歩的だったから」「バート氏が『プログラミング体験といえば青い背景に白い文字だ』と個人的に考えていたから」という理由によるものだそうです。

What Causes a "Blue Screen" Crash? - YouTube

ブルースクリーンの存在が一般的に知られるようになったのは、爆発的に普及したWindows 95から。Windows 9xはWindows NTよりもブルースクリーンが発生しやすく、以下のようなブルースクリーンをたびたび目にすることがありました。



Windows 95のブルースクリーンは、チェン氏が最終バージョンの設計を担当したそうです。「青い背景に白色のエラーメッセージ」という形式ですが、チェン氏は「Windows 95ではエラーが起きても無視できることが多かったため、(Windows NTと比較すると)本当の意味で『死のブルースクリーン』ではありません」とコメントしています。

チェン氏の発言通りにOS・ブルースクリーンの作者・リリース年をまとめると以下の通りになります。

OS作者(敬称略)リリース年Windows 3.1スティーブ・バルマー (ただし本文のみ)1992年Windows NTジョン・バート1993年Windows 95レイモンド・チェン1995年