2連勝で迎える1次リーグ第3戦・イスラエル戦。日本はこれまで中2日で戦っており、それが今後も続くため、主力をできるかぎり温存すると考えられる。ここまで2戦2発の山本理仁もしかりだ。

 第2戦・マリ戦でのゴールは、技巧派の山本のイメージを覆すものだった。

 大岩剛監督の「前半は耐えきり、後半勝負に出る」というプランで試合を進めていたが、この日は後半もゴールが遠かった。むしろ、マリに攻め込まれる時間帯も増えた。GK小久保玲央ブライアンが再三食い止めたが、際たるものは63分。自陣からシュートを打たれる絶体絶命のシーンで、長い左腕を伸ばしてセーブした。

「難しいポジショニングだった。しっかり我慢して、自分らしい腕の伸び方ができた」と守護神は胸を張った。後半、アディショナルタイムにPKを事実上防いだこともあり、この日のプレーヤーオブザマッチにも選出されたのには誰もが納得するところだ。


スマートな技巧派キャラから進化した山本理仁 photo by Watanabe Koji

 攻められ続け、消耗した試合。どうしてもほしい勝利は遠いかと思われた。だが82分、待望の瞬間は訪れた。

 自陣で山本が相手のパスをカット、そのまま細谷真生につなぐと、細谷が右サイドを一気に突破した。追いすがる相手を振りきり敵陣深くからの折り返しに、途中出場の三戸舜介が走り込むも合わせきれず、左サイドから詰めた佐藤恵允が右足シュート。これはGKにブロックされるが、こぼれたところに走り込んできた山本が押し込んだ。

「めちゃくちゃしんどかったですけど、マオ(細谷)があそこ、1本その前に同じような形があったので、入れてくれると信じていた」

 ある程度の予測があったからこそ、走り込むことができたという。

「あそこにこぼれてくれると信じて走り込んだのが点につながったと思うので、自分をほめてあげたい。得点というのは常に狙っていたし、どこにこぼれるかは研ぎ澄ませていた。いい形が出たと思う」

 自陣ゴール前から敵陣ゴール前まで、攻守に関わったことに胸を張った。

「見たらわかるとおり、(2戦で)2得点という結果にボックストゥボックス(のプレー)が出ていると思う。毎試合これが求められると思うので、しっかりリカバリーして次もやっていきたい」

【ベルギーで手に入れた新たな武器】

 2戦したボルドーはさほど暑くなかったものの、最大で今後4試合を戦うことを考えると、早いうちにリカバリーできる状況を作ったことは本当に大きい。

 山本は昨年夏、ベルギーのシント・トロイデンに加入した。日本から欧州へのファーストステップとして比較的プレーしやすい環境が用意されているクラブではあるが、当然ながらメンバー争いの厳しさはほかと変わらない。

 山本は昨季28試合に出場したものの、先発したのはレギュラーシーズン全30試合のうち5試合。最終順位を決めるプレーオフは全10試合のうち5試合でU23アジアカップのために不在だったが、残る5試合のうち先発は2試合にとどまっている。

 そんな苦しんだシーズンだが、山本は欧州に移籍した意義をこう語る。

「試合にはもっと出たかったですけど、でもなんか、充実感はあったかな。日本ではテクニックとかを求められますけど、こっち(シント・トロイデン)ではフィジカルやスピードを求められる。あんまりなかったことなので、新鮮というか、そういうところが成長しました」

 左利きの技巧派で鳴らしてきた、東京ヴェルディの下部組織育ち。スマートなプレースタイルのままでは欧州では通用しないことを体感し、それ以外の部分を成長させてきた。それを実感できたのは、4月のU23アジアカップだった。

「アジアカップでも、強度の高さはこれまでよりも出せたかなっていうのがあって、シント・トロイデンに来た意味は絶対にあるなと思っています」

 その強度をさらに高めたのがマリ戦。アジアだけでなく、世界相手にも通用することを証明して見せた。

 昨季はガンバ大阪からのレンタル移籍だったが、期間が終わる今夏には完全移籍を勝ち取った。出場時間こそ長くはなかったが、これはひとつの評価と期待の表われだ。

 これまでの代表活動でも「強豪相手の試合にはスカウトがたくさん来ると聞いていて、俺らはメラメラしていましたよ」という山本。今後の飛躍のきっかけになり得る五輪の舞台で、より多くの試合をすることと、さらなるステップアップを目指していることは間違いない。