世界中のサッカー選手の市場価値を発表しランキング化している『トランスファーマルクト』(https://www.transfermarkt.jp/)が、昨シーズンの終わりに各選手の価格を最新にアップデート。ここでは日本人選手のトップ10とその背景を紹介する。欧州で奮闘する選手たちはどんな評価を受けているのか。

後編「ワールドサッカー23歳以下選手の市場価値トップ10」>>

【サイドを打開できるウイングに価値】

 いまや日本代表のほとんどが欧州でプレーする時代。それだけにとどまらず、欧州のなかでもトップリーグ、さらにはビッグクラブでプレーする選手も続々と増え、日本人の価値は日増しに高まっている。


久保建英(左)と三笘薫(右)。サイドのアタッカーが上位に photo by Getty Images

1位:久保建英(レアル・ソシエダ)約85億円(5000万ユーロ) 
2位:三笘薫(ブライトン)約77億円(4500万ユーロ) 
3位:冨安健洋(アーセナル)約60億円(3500万ユーロ) 
4位:伊藤洋輝(バイエルン)約50億円(3000万ユーロ) 
5位:南野拓実(モナコ)約35億円(2000万ユーロ) 
6位:鎌田大地(クリスタル・パレス)約30億円(1800万ユーロ) 
6位:堂安律(フライブルク)約30億円(1800万ユーロ) 
8位:守田英正(スポルティング)約25億円(1500万ユーロ) 
9位:古橋亨梧(セルティック)約24億円(1400万ユーロ) 
10位:遠藤航(リバプール)約22億円(1300万ユーロ)

 そんな日本人選手のなかで、いまもっとも市場価値が高いのはレアル・ソシエダ(スペイン)の久保建英だ。主に右ウイングを務め、サイドからの打開を担い、昨季は7得点4アシスト、一昨季は9得点6アシストと結果を残した。近年、逆足のウイング(※例えば右サイドに左利き)の価値が高く、そのなかで23歳という若さもあり、5000万ユーロの市場価値は世界でもトップクラスの評価である。

「リバプール(イングランド)でモハメド・サラーの後釜に」と獲得の噂が絶えないというのは、噂レベルであっても評価の高さが伺える。仕掛けるチャンスがより増えるビッグクラブにステップアップできれば、さらなる進化は間違いないが、果たして今夏はどうなるか注目である。

 2位の三笘薫(ブライトン/イングランド)も同様だ。一昨季にプレミアリーグという最高峰のレベルでも、サイドを高い確率で打開できるウインガーであることを証明した。昨季はケガによってシーズンの半分を棒に振ってしまったが、4500万ユーロの価値は十分にトップクラス。これだけ一貫性があり、計算のたつウインガーはどのクラブもほしいはずだ。

 モナコ(フランス)で再ブレイクを果たして代表に返り咲いた南野拓実が5位、フライブルク(ドイツ)で躍進した堂安律が6位と、同じく逆足のウインガーで結果を残した選手が並んでいるも特徴的だ。29歳の南野はこの年齢では十分に高い評価だが、堂安は久保、三笘と比べると一段下がる市場価値となっている。

【複数ポジションをこなすDFふたりが上位に】

 DFでもっとも価値が高いのは、アーセナル(イングランド)の冨安健洋で3500万ユーロ。守備ラインならどこでも高いレベルでこなすマルチロールで、なおかつ守備者としての能力はプレミアリーグでもトップレベル。アーセナルでは相手のエース潰しの役回りも多く、終盤の守備固めとしても重宝される。ただ、やはりケガの多さはネックで、それがなければもっと評価されていい選手だ。

 冨安に次いで価値が高いのが昨季、シュツットガルト(ドイツ)で飛躍し、ビッグクラブのバイエルン(ドイツ)への移籍を実現させた伊藤洋輝の3000万ユーロ。伊藤はDFとしては貴重な左利きで、高い守備能力に加え、4バックと3バックの左センターバック、左サイドバックと多くのポジションをこなせる万能さも高い評価につながっているだろう。

 昨季は韓国代表のキム・ミンジェがナポリ(イタリア)からバイエルンに鳴物入りで加入したものの、あまり高い評価を得られなかった。それもあって伊藤の獲得となったはずだが、同じアジア人選手として比較されるだろう。

 そのキム・ミンジェの市場価値が4500万ユーロ。シュツットガルトとは比べものにならないプレッシャーのなかで、守備ラインの主軸として地位を確立し、UEFAチャンピオンズリーグで活躍できれば、伊藤の評価がさらに急上昇してキム・ミンジェ越えもあるかもしれない。

 そして7位にランクインしたのが、今夏クリスタル・パレス(イングランド)に加入した鎌田大地。昨季はラツィオ(イタリア)で不遇の時間を過ごしたが、フランクフルト(ドイツ)時代の恩師であるオリバー・グラスナー監督に呼び寄せられ、本来のパフォーマンスを取り戻すことができるか。

 主軸だったミカエル・オリーズをバイエルンに放出したクリスタル・パレスたが、市場価値1800万ユーロの選手をフリーで獲得できたことはラッキー。グラスナー監督のスタイルを熟知する鎌田にかかる期待は大きく、今季の要注目ポイントだ。

【年齢が上でも実績ある選手に高評価】

 8位の守田英正はスポルティング(ポルトガル)で抜群のゲームコントロール能力を発揮し、いまやプリメイラリーガを代表するボランチのひとり。リバプールが後述する遠藤航を30歳時に1900万ユーロ(当時約30億円)で獲得したことを考えると、29歳で1500万ユーロは適正か。年齢的にこれから上がることはなさそうだ。遠藤のケースのように、お買い得価格のベテランとしてステップアップの可能性もゼロではないと信じたい。

 その遠藤は1300万ユーロで10位。昨季、新加入ながらリバプールで欠かせない戦力として存在感を示し、前述した約30億円の移籍金はバーゲンセールと評価された。31歳となった今でも高い市場価値があるのはその証である。ユルゲン・クロップ監督の長期政権が終わり、今季からアルネ・スロット新監督を迎え、新体制となるチームで昨季のような存在感を再び示すことができるか。

 唯一ストライカーでランクインしたのが、セルティック(スコットランド)で3シーズンにわたってエースとして活躍する古橋亨梧。昨季14得点、一昨季27得点とストライカーとして十分な数字を残しているが、守田同様に29歳という年齢的に1300万ユーロは妥当な評価か。

 トップ10入りとはならなかったが、1200万ユーロで11位に入った菅原由勢は今季からサウサンプトン(イングランド)へ移籍。レギュラーポジションを確保し、プレミアリーグで通用することが証明できれば、24歳という年齢的に市場価値は急上昇するはず。

 そのほかにもスタッド・ランス(フランス)の中村敬斗やブレンビー(デンマーク)の鈴木唯人、パルマ(イタリア)の鈴木彩艶など、これから市場価値の上がる可能のある若手選手も多く、今シーズンも日本人選手の活躍から目が離せない。