この記事をまとめると

■三菱ふそうが東京モーターショー2013で「キャンター エコハイブリッドCanna」を出品

■“女性の、女性による、女性のためのトラック”というテーマでデザインされていた

■「キャンター エコハイブリッドCanna」にはトラック業界で働く女性からは否定的な意見が多く挙がった

トラック業界で働く女性からは否定的な意見が多数

 現在、トラック業界で働くドライバー(輸送・機械運転従事者)の総数はおよそ86万人(2022年統計)。そのなかの3.5%にあたるおよそ3万人が女性となっている。また、事務方や営業も合わせると総数201万人のうち20.4%の41万人が女性となっている。

 そんなトラック業界で働く女性を応援し、彼女たちの職場環境を改善するため、そしておよそ14万4000人いるといわれている大型免許所有の女性、281万人いるという中型免許所有の女性たちをトラック業界に呼び込むため、2014年から国土交通省を中心に「トラガール促進プロジェクト」という取り組みが進められている。

 本サイトでもそのプロジェクトとその一環として、実際に現場で働く女性ドライバーや事務方、経営者などの「トラガール」が集まり意見を交換する「トラガール女子交流会」についてリポートしているので詳しくはそちらを御覧いただきたい。

 このトラガール促進プロジェクトがスタートする前年、三菱ふそうが「第43回東京モーターショー2013」にて参考出品車「キャンター エコハイブリッドCanna(カンナ)」を発表した。“女性の、女性による、女性のためのトラック”というテーマで、同社の女性社員有志が「キュート トラックプロジェクト」を立ち上げ、女性の目線でデザインしたというその小型ハイブリッドトラックは、キャビンやボディ(荷台の部分)だけでなくフロント・サイドのバンパーやホイールまでピンクに塗装。さらにレッド/ホワイト/ピンクの水玉模様で装飾された仕様になっている。トラガール促進プロジェクトがスタートした際も、同サイトにトラガールのシンボルのようにアップされていた。

 このトラックが発表され、国交省の同プロジェクトでも大々的にアピールされたとき、ネットなどのメディアで賛否両論の議論が交わされた。とくに女性サイド、実際にトラック業界で働く女性からの否定的な意見が多く、「ダサピンク。女性とピンクに謝って欲しい」「女性だからピンク……センスがおっさんだ」などなど辛辣なコメントが飛び交った。

 また、「トラガールのあれ、なんでキャンターなんだろ。これから足りないのはトレーラーヘッドとか10トン動かしてくれる人でしょ」と現場を知る女性ドライバーならではのコメントも見受けられた。

 元トラックドライバーでもある、とある女性ジャーナリストは「同じ業界で働く同じ女性であっても、『ピンク&水玉柄のトラック』を開発することが現場の女性ドライバーのためになると思えてしまうその感覚に、ブルーカラー女性に対するホワイトカラーの「無意識の偏見」を感じてしまう」と述べていた。

 冒頭でも述べたが、トラック魂編集部では、「トラガール促進プロジェクト」に賛同し、現場の女性ドライバーや事務方、女性経営者と意見を定期的に交わし、そこで集約された意見を国交省に提出しているトラガールたちを取材してきた。実際にハンドルを握り、配車をする、現場で活躍する彼女たちからも、このピンクのトラックへを賛同する意見はなかった。

 彼女たちの「トラガール女子交流会」で交わされる意見、つまり現場からの要望は、クルマをどうこうしようということではなく、女性が働きやすくなる環境を業界全体と行政で整備すること、この一点につきるようだ。