ロシア当局が、YouTubeの通信速度を最大70%低下させることを発表しました。背景には、YouTubeロシアの国営メディアのチャンネルをブロックしていることに対する、ロシア政府の圧力があります。

Russia Throttles YouTube Access in Latest Attack on US Social Media (GOOGL) - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-07-25/youtube-throttled-in-russia-in-latest-attack-on-social-media

Russia to deliberately slow down YouTube to punish Google, State Duma deputy says - Meduza

https://meduza.io/en/news/2024/07/25/russia-to-slow-youtube-by-70-percent-on-desktop-computers-to-penalize-google-state-duma-deputy-says

ウクライナ侵攻によりロシアと欧米諸国の関係が冷え込む中、「デジタル版鉄のカーテン」に抵抗してロシアへのサービス提供を続けているYouTubeですが、ロシア政府による検閲に応じなかったことで巨額の罰金を科されるなど、困難に直面しています。

ロシア当局が特に問題視しているのが、YouTubeロシア国営メディアのチャンネルを削除している点です。

YouTubeロシア国営メディアのチャンネルを全世界でブロック - GIGAZINE



ロシア下院技術委員会のアレクサンダー・キンシュタイン委員長は2024年7月25日に、国営メディアのチャンネルを復活させるようYouTubeに圧力をかける動きの一環として、ロシア国内でのYouTubeの速度を2024年7月第4週中に40%、翌週末までに最大70%低下させると発表しました。

キンシュタイン氏は、自身のTelegramへの投稿で「今起きていることはすべて、西側諸国の視点とは異なる立場を取るロシアのブロガーやジャーナリスト、アーティストなどの著名人のチャンネルを削除し続けているYouTubeの反ロシア政策の結果です」とYouTubeを非難しました。

伝えられるところによると、YouTubeの親会社であるGoogleのロシア法人は、一連の罰金により当局がGoogleの銀行口座を差し押さえたことを受けて、2022年に破産を申請したとのこと。しかし、その後もGoogleは検索やYouTube、Gmailなどの無料サービスをロシア向けに提供し続けています。

そのため、Googleのサービスは「ロシア版Google」と呼ばれるロシアのIT大手・Yandexに次ぐ2位の利用率を保っており、ロシア人のおよそ半分が毎月YouTubeを利用しているとされています。



Googleは複数のメディアによるコメントの要請に応じていません。

ロシアの独立系メディア・Meduzaによると、2024年7月12日にはロシアの通信当局がGoogleに「設備の技術的な問題」を理由として、YouTubeの速度が低下する可能性があると警告していたとのこと。Meduzaの取材を受けたIT専門家は、ロシアのインターネットトラフィックの調査結果から、実際に当局がYouTubeの速度を低下させていることが確認されたと話しています。

速度制限の対象となるYouTubeのサービスはデスクトップ版に限られており、これまでのところモバイル版は影響を受けていません。キンシュタイン氏は、ロシアの動画共有サービスであるRuTubeやVK Videoといった代替サービスがYouTubeの代わりになるとしたで、ロシアにおけるYouTubeの運命は同社次第であると述べました。

「当局が方針を変えず、わが国の法律を順守しないのであれば、良いことは何も期待できません」とキンシュタイン氏は投稿に記しています。