認知症は高齢者の宿命ではなく、生活習慣を健康的なものに改めればリスクを90%も低減させられるとの研究結果が報告されています。若いうちから積極的に対策を行い、老後の認知症のリスクを減らす上で重要な6つのポイントを専門家が解説しました。

Six ways to look after your brain health in your 20s and 30s

https://theconversation.com/six-ways-to-look-after-your-brain-health-in-your-20s-and-30s-231119

これまで知られている認知症の修正可能な危険因子は「教育水準の低さ」「高血圧」「聴覚障害」「喫煙」「肥満」「うつ病」「運動不足」「糖尿病」「社会的接触の少なさ」「過度のアルコール摂取」「頭部外傷」「大気汚染」の12種類あります。

こうした知見から、アイルランドにあるGlobal Brain Health Instituteのコリーナ・グライムズ氏と、イギリス・オープン大学のイトカ・ヴセテコワ氏は、脳の健康を維持するために若い内から実践できる最も重要な生活習慣を6つ紹介しました。

◆1. 良好な栄養状態

脳の重さは体重のたった2%ですが、エネルギーの約20%を消費するため、適切に栄養素を摂取することは脳の健康にとって重要です。太りすぎや糖尿病は認知症のリスクをそれぞれ1%高めるといわれているほか、高血圧は2%高めることもわかっており、健康的な食生活はそれらをすべて予防することが可能です。

過去の研究では、ジャンクフードがアルツハイマー型認知症のリスクと関連していることや、逆に和食や地中海料理はリスクを低下させることがわかっています。

「西洋型の食生活」がアルツハイマー病のリスクになるとの研究結果、認知症の予防に重要な食べ物やサプリも判明 - GIGAZINE



◆2. 水分補給

人間の体は約60%が水分でできているため、水分補給は脳だけでなく体全体の健康の維持に欠かせません。もし水分が不足して脱水症状になると、疲労感や脳の働きの低下など、さまざまな形で心身の健康に悪影響が出るほか、記憶力、注意力、集中力、反応時間といった認知機能も低下するとのこと。

◆3. 飲酒を控える

アルコールの飲み過ぎは認知症のリスクを1%高めるとの研究結果が報告されています。アルコールは一時的に脳の機能を低下させるだけでなく、脳の構造も変化させることが判明しており、脳のニューロンや白質、容積の減少などさまざまな問題がアルコールと関連しています。また、アルコールは口腔(こうくう)がんや咽頭がん、乳がんといった一部のがんや脳卒中、心臓病のリスクも高めます。

飲酒量の目安としては、1週間に21単位(1単位は純アルコール20g)のアルコールを摂取すると認知症のリスクが高まるとされています。なお、イギリスの保健当局は飲酒量を週に14単位までにすることを推奨しているほか、厚生労働省は2024年に発表した「(PDFファイル)飲酒ガイドライン」で、生活習慣病のリスクを高めるアルコールの摂取量を男性は1日40g以上、女性は1日20g以上としています。

もっとも、適量のアルコールでさえ認知機能の低下を早めるとの研究結果も報告されているため、できれば飲酒をしないのがベストかもしれません。

「適量のお酒」ですら脳の認知機能の低下を早めるとする調査結果 - GIGAZINE



◆4. 活動的であること

運動は脳への血流を増やして脳機能の向上に役立ったり、脳の炎症を軽減したり、脳の活動と容量を増やして脳の働きをより効率的にしたりします。これらはいずれも長期的な脳の健康を維持するのに大変有益で、認知症リスクの低下にも役立つと考えられています。

グライムズ氏らによると、1週間に中強度の身体活動を150分以上、または高強度の運動を75分以上行うか、またはその両方を組み合わせることを目標にするといいとのこと。また、1日に7500歩歩くだけでも脳の容量を増やすことが可能とされており、仮に目標を達成できなくても運動はやればやるほど効果的とされています。

◆5. 社交的になること

「孤独な期間が長かった高齢者ほど記憶力の低下が速い」との研究結果が報告されており、孤独はうつ病や認知機能低下のリスクを高めることがわかっています。



その一方で、他の人と暮らしたり、定期的にコミュニティの集まりに参加したり、毎週家族や友だちと会ったりと、良好な社会的つながりがあれば認知機能の低下が遅くなります。これは、人との関わりが注意力や記憶力を刺激し、脳のネットワークを強化するためです。

◆6. 学び続けること

生涯学び続けた人は認知症のリスクが7%も低いといわれているため、グライムズ氏らは「学校を卒業して何年たっても、学ぶのをやめるべきではありません」と述べています。

脳の健康のためにできる学習としては、新しい言語の習得、新しいスポーツへの挑戦、楽器の演奏、パズルを解くことなどが挙げられます。



これら6点以外にも、耳が聞こえにくくなったら補聴器を使うこと、外傷性脳損傷を避けること、1日6〜8時間は睡眠をとることなども、認知症のリスクを低下させる上で効果的です。

グライムズ氏らは末尾で「脳はおそらく人間の器官の中で最も重要なものなので、若いうちから脳をケアすることで、年を重ねても正常に機能させ続けることができるでしょう」と呼びかけました。