バッテリーが劣化して、充電できなくなってしまった。でも4年使ったので明らかに寿命でしょう。たくさん楽しませてくれてありがとうAZ70!

ポータブルAV機器の多くがそうであるように、完全ワイヤレスイヤフォンのバッテリー寿命は大体2~3年と言われている。筆者がプライベートで愛用してきたTechnics「EAH-AZ70」は、その限界を突破して4年ほど生きてくれた……のだが、先日いよいよ充電ができなくなってしまった。そんなわけで、久々にプライベートのイヤフォンを買い替えることになったので、その超個人的な製品選びを記事にしてしまおう! というのが今回の企画である。

さて、せっかく個人的に機材を選ぶならば……普段、マジメにオーディオ機器をレビューする立場として、どうしても試聴ソースに使っておきたいJ-POPグループがある。そう、「なにわ男子」だ。

STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)に所属する7人組の男性アイドル。近年のK-POP勢の躍進もあり、硬派なカッコイイ系の男性アイドルが増えている今、あえて「キラキラ王道アイドル」のコンセプトで活動しているのが魅力だ。その人気ぶりは多くの方がご存じだろう。

……いや、いきなりどうした? ここAV Watchよ? と思われそうだが、これはプライベートのイヤフォンを選ぶ企画である。実は筆者、昔からアイドル楽曲を聴くのが趣味なのだ。これまでは女性アイドルばかり推してきたのだが、ここ2年ほどはなにわ男子の楽曲がお気に入り。メンバー7人の声質が、アイドルとして非常にバランスが良いことに気付き、聴きどころが多いことを知ったためである。

ということで今回は、筆者が「なにわ男子の楽曲を満喫する」というテーマで、プライベート用の完全ワイヤレスイヤフォンを選ぶ様子をお届け。最終的に1台選んで、実際に購入までしてしまおうと思う。

通常、オーディオ機器のレビューは、多くの方がその音質をイメージしやすいよう“オーディオ試聴でよく使われるアーティスト・楽曲”で行なわれる。しかし今回は企画上、堂々となにわ男子の楽曲だけで試聴する。何ぶん、なにわ男子楽曲をよく知る人にしか刺さらない記事となるであろうことを、先にお断りしておこう。

アイドル楽曲の醍醐味は「歌割」の面白さである

ちなみに筆者、アイドルご本人というよりは「アイドル楽曲のオタク」である。楽曲のアイドル性や耳触りの良さだけではなく、そこに制作側の遊びや時代を映すトレンドの音がいかに融合されているかという、こだわりを聴くのが面白い。

さらに言うと、複数人のメンバーがいるグループの楽曲を聴くなら、「歌割」(うたわり)が好きだ。メンバー個人の声質やキャラクター、グループ内の立ち位置などを加味してパートが割り振られていることが感じられて、そこに萌える。「なるほど、そういう構成で来たか」と、制作側の思い・狙いを歌割に感じることで興奮するのだ。正直、文字で説明するとまあまあ気持ち悪い性癖だなと、この文章を書きながら自分で驚いている。

なお、筆者は元々男性アイドルについて、お茶の間レベルの知識しか持ち合わせておらず、最近なにわ男子のYouTubeチャンネルを見て、その世界を勉強中であることを正直に告白しておこう。ネットの声を見た感じ、女性アイドルのファンがなにわ男子を好きになる事例は多いようだ。思うに、キラキラ王道アイドルのコンセプトに加え、世界観の作り方が女性アイドルに通じるものがあるからではないか。そこにメンバーの声質も大きく関係していると感じる。

心がざわめく はじまりの予感!?

続いては、そんななにわ男子の声質について、筆者が思う特徴を書き出してみよう。男性アイドルとして見た時、理想的にバランスの良い7色の声だと思う。

メンバーの声質と特長(※筆者の印象です) 西畑大吾さん

グループのセンターとして、ミッキーマウスばりの“絶対的主人公感”を持ち、MC役もこなす西畑さんは、声質まで主人公級なのが凄い。中域に芯のある歌声は高音から低音まで安定していて、ほどよく甘く、男性アイドルとしてド王道。サビ始まりの楽曲の一発目の入りや、Aメロの入りを担当していることが多く、なにわ男子楽曲における基準点=リファレンスを示すような歌声と言える。

大西流星さん

あざと男子で有名な大西さんは、少し鼻にかかったハイトーンでグロス感のある歌声を持つが、そこに“ひたむきさ”が漂うのが大きな特徴。女性アイドルを推す時に似た感覚をもたらす、切実さのある声だ。楽曲でも、彼が「ももいろクローバーZ」で言う佐々木彩夏さん的な使われ方(=アイドルのプロ)をしているシーンも多々見受けられるし、なにわ男子の女性アイドル的な演出が成り立つ要素として、大西さんの存在は大きいと思われる。

道枝駿佑さん

あくまでもグループ内で課せられた役割という意味で、センターが西畑さんなら、エースの立ち位置にいるのが道枝さんだろう。実はこの2人、歌声のベースが近いのだが、道枝さんの方は甘さを抑えて少年的な素直さを足した感じの、みずみずしいまっすぐな声。飾りけのなさが最も強い武器になっている。男性アイドルとして王道の声質を基盤に、フレッシュな“旬感”があるのが特徴。まさにエース的な声だ。

高橋恭平さん

クール感のある高橋さんは、なにわ男子の低域を支えている人。中~低域を発する時の歌声が際立っており、彼らの楽曲を聴いて「低音が気持ち良いな」と思うと大体、高橋さんが歌っている。近年のK-POPアーティストなんかと通じる「トレンド感のあるハスキーボイス」だ。関西発のキラキラ王道アイドルとして登場したなにわ男子だが、高橋さんの声があることで、楽曲の世界観に奥行きが生まれている。

長尾謙杜さん

元気な最年少というイメージの長尾さんだが、歌声はソフト。マットな質感で、楽曲の静と動のうち「静」を作る声である。楽曲内にフッと一瞬の溜めを作るような、ウォームな旋律で重用されている印象だ。歌割での使われどころは大西さんと近いが、大西さんのグロス感のある声に対して、長尾さんの声はマット感があるので、対照的な聴き心地になるのが面白い。個人的に、このタイプの声が1人いると、楽曲にメリハリが生まれて心地よさを感じられる。

藤原丈一郎さん

高いトークスキルでバラエティ担当のイメージがある藤原さんだが、歌うととても甘い声になり、歌声はグループ内で一番“アイドル”している。中高音が優しく軽快に転がるような歌い回しが特徴だ。デビュー曲「初心LOVE」などに顕著だが、歌声の面からもキラキラ王道アイドル感を醸すことを狙ったであろう楽曲では、藤原さんの声が効果的に使われていると感じる歌割が多々ある。

大橋和也さん

筆者がなにわ男子の声に注目したきっかけが、何を隠そうこの大橋さんだ。リーダーの彼は、地の声質がかなり特徴的。基本の声はハスキーでかすれ感があるのだが、歌うとかすれを残しながら透明感が溢れてきて、ハイトーンで高音がキレイに伸びて広がる。例えるなら、混じりっ気のない純白の高級和紙みたいな声だ。彼の歌声が響くと、なにわ男子の楽曲が一気に洗練された印象になる。

そもそも歌唱力自体が高く、その実力は頼りにされているようで、シングル曲の落ちサビや、楽曲にインパクトを持たせる一節を任されていることが多い。同時に、一歩引いたハモリやコーラスでも主旋律をキレイに際立たせ、主役も脇役も自在な声である。そういえば、「歌うとかすれを残しながら透明感が溢れてきて、高音が綺麗に伸びて広がる」という要素だけ取り出すと、ほぼ松田聖子だ。天性のアイドル声ということかもしれない。

愛しちゃっていいじゃないか

さて、ここまでが長くて忘れている方も多いと思うが、本企画の主旨は筆者のヤフォン選びである。とはいえ今は「完全ワイヤレスイヤフォン戦国時代」とも言える状況で、製品がありすぎて候補を絞るのも一苦労。そこで今回は、秋葉原にあるヘッドフォン・イヤフォン専門店「e☆イヤホン」さんにお願いして、筆者の希望に合うモデルをセレクトしてもらった。

なお、「なにわ男子の楽曲を聴く」以外に筆者が伝えた製品選びの条件は、以下の通り。


【仕様に関して】 予算:実売2.5万円~3万円 完全ワイヤレス型 スタンダードなカナル型(ピアス・イヤリングに干渉するためスティック型は×) マイク付き(オンライン会議用) 耳が小さいのでできればコンパクトなモデルが良い(マストではない)
【使い方】 主にスマホと接続 YouTube動画を見る Nintendo Switchと接続してゲーム音声も楽しむ(主にスクロールアクション) PCと接続してオンライン会議でも使う→マルチポイント接続できるとより嬉しい
【音質】 ボーカルが聴きやすいと良い(特に男性ボーカル) J-POP、アイドルソングを楽しみたい YouTubeでも音楽を楽しみたい→圧縮音源が良い感じに聴けると嬉しい

……我ながら細かい客である。

そんな筆者の要望に見事応えて下さったのが、e☆イヤホンの小島由大(ゆーでぃ)さんだ。今回は候補を4機種に厳選して下さったが、ポイントはどこだったのか? 小島さんいわく、「スティック型じゃない条件だったので、その時点でかなり絞られました。そこから、マルチポイント接続に対応するモデルだけに厳選しています。さらに音質として、特にJ-POPとの相性、そしてアイドルソングのキラキラ感の再現や、ボーカルの聴こえやすさを考慮しました」とのこと。この説明を聞くだけでワクワクである。

筆者(左)とイヤフォンをピックアップしてくれた小島さん(右)

それではいよいよ、モデルごとに試聴レビューをお届けしよう! 試聴楽曲は、主に自分のMacBook Airをプレーヤーにして、なにわ男子の1stアルバム『1st LOVE」』から「初心LOVE」と「ダイヤモンドスマイル」、そして2024年6月12日に発売されたばかりの3rdアルバム『+Alpha」』を全体的に再生した(楽曲はいずれもCDリッピング音源 44.1kHz/16bit WAV)。また、自分のスマートフォンと接続して、YouTube動画もいくつか視聴した。

なにわ男子 - 初心LOVE(うぶらぶ)[Music Video Dance ver.]

なにわ男子 - ダイヤモンドスマイル [Music Video Dance ver.]

なにわ男子 - NEW CLASSIC [Official Music Video]

なにわ男子 - Alpha [Official Music Video]

NUARL「mini3 EARBUDS」

NUARL「mini3 EARBUDS」

1機種目にご紹介いただいたのがこちら、「mini3 EARBUDS」。その小ぶりなフォルムとカラーバリエーションが愛らしく、あえて女性目線で言うと、今回紹介された中で最も見た目だけで選びたくなるモデルだった。アルミ製のケースも質感が高くて好印象。BluetoothコーデックはSBC/AACのほか、aptX/aptX Adaptiveに対応する。

内部には、Gen2グラフェンを採用した6mm口径のダイナミックドライバーを1基搭載する。そのサウンドは、高域が印象的なドンシャリ。高音が煌びやかで楽曲のキラキラみが増大し、アイドルソングが映える。しかし決して高音が耳に刺さるようなことはないし、コンパクトな見た目の印象を超えて低音もそれなりに出ていて、聴き心地が良い。おそらくJ-POP全般と相性が良いだろう。

なにわ男子楽曲で言うと、楽曲の世界観を全体的にキラキラと演出してくれる感じ。相性が良い楽曲は、「NEW CLASSIC」「Alpha」などアルバムのリード曲である王道系や、西畑さんのほどよく甘い声と大西さんのひたむきな声がマッチするキュート系演出の「恋やけどめ」。あと「初心LOVE」の藤原さんの軽快な声も似合う。また「ダイヤモンドスマイル」で、楽曲の透き通った空気感がより強調されるのも良い。アイドル楽曲が持つ王道の「夢見る世界観」を、耳の中に作り上げてくれる。

本機は、アクティブノイズキャンセリング機能や、IPX4の生活防水性能も備えているし、サウンド、デザイン、機能、価格のバランスを考えるとかなりお買い得感がある1台に感じる。自分だけでなく、人にもおすすめしやすいモデルだ。いきなり良い製品が出てきてしまい、もうこれで決まりかもなんて思ってしまった。

ANIMA「ANW02」

ANIMA「ANW02」

続いて紹介されたのは、打って変わって機械的なデザインの「ANW02」。女性目線で言うと上述のmini3 EARBUDSが良いのだが、正直、オタク目線で言うとこのANW02のメカメカしさにはかなり惹かれた。ケースのフタが薄くてスマートなのも良い。対応コーデックはSBC/AAC/aptX Adaptive/aptX Lossless/LC3と最新仕様で、IP56防水性能も備える。

ちなみにこのANIMAというブランド、Hi-Fi系のイヤフォンでおなじみのAcoustuneが手がけるカジュアルラインとのこと。言われてみれば、メカメカしいデザインにその片鱗が。内部には、Acoustuneの独自技術「Mylinx(ミリンクス)ドライバー」の開発で培った知見を元に開発されたEl-CoClear振動板を採用する、10mm口径のダイナミックドライバーを1基搭載する。

サウンドを聴いてみると、確かにAcoustune。高域が煌びやかで低音はスッキリとクール感がありつつ、ボーカルの帯域にフォーカスした音作りがされている印象だ。なにわ男子楽曲では、メンバー個々の歌声はもちろん、それだけでなく「初心LOVE」での道枝さんと長尾さんの「いじわる…すれ違い」というハモリや、「Alpha」の1番Aメロ&サビなど、複数メンバーのハーモニーが作り出す世界も満喫できる。楽曲全体のキラキラ感を醸してくれるのも良い。

ちなみに本機のサウンドチューニングは、サウンドプロデユーサー・コンポーザー・DJとして活躍するTAKU INOUE氏が監修しており、今回試聴したベーシックチューン「LATE NIGHT」を含め、専用アプリで全3種類の音質の着せ替えが楽しめる。Acoustuneのサウンドで有名プロデューサーが監修するというアドバンテージが、何気に強い。

なお本機、アクティブノイズキャンセリング機能は非搭載とのことで、音質に振ったモデルであることがわかる。筆者的には、オンライン会議で使用するのでマイクは欲しいが、ノイキャンはそこまで必須ではないのでこの仕様はアリだ。本機だけは今回の予算上限である実売3万円をオーバーしているのだが、音も見た目も個性があって惹かれる。

Astell&Kern「AK UW100MKII」

Astell&Kern「AK UW100MKII」

これまでの2機種だけでもかなり迷っていた筆者だが、さらに投入されたのがこの「AK UW100MKII」。Astell&KernといえばハイエンドDAP界の雄であり、イヤフォンもハイエンドなイメージだが……。実は本機も元々は約5万円のモデルで、それが値下がりしたので候補に入ったという。正直、元の価格帯を考えると、今回のラインナップに入ることはルール違反感すらあるわけで……もちろんより一層迷うことになった。

コーデックはSBC/AAC/aptX Adaptiveに対応。防水仕様が非公開という点は少々気になる。なお、こちらもアクティブノイズキャンセリング機能が非搭載で、硬派に音質重視のモデルであることが伺える。そして本機は、今回聴いた4機種の中で唯一のフルレンジBAドライバー搭載機。……という時点で何となく予想がつくと思うが、繊細な表現を得意とする解像感のあるサウンドだ。そして、シングルBA一発の構成にしては、引き締まった低音がちゃんと聴こえるのが良い。

なにわ男子楽曲で言うと、「ダイヤモンドスマイル」の冒頭で鳴るベースのデュルン、という低音にキレがあり、曲のキメ細やかな世界が映える感じ。全体的にフラット傾向でありつつ、中~高域が繊細なのでアイドル楽曲のキラキラ感がちゃんと味わえる。特にギターやピアノなどアコースティック楽器がフィーチャーされたバラード「Precious One」などと相性が良く、道枝さんと藤原さんの中域の声がキレイだ。精細感があるが、聴き疲れしにくいサウンドに感じる。

また、専用アプリからイコライザーで音質調整も行える。小島さん曰く「元の音質が高くフラットだからこそ、イコライザーで調整しても破綻せず楽しめるのが売りです」とのことで、なるほどと感心してしまった。というか正直、音質に対して実売価格が安すぎる気がする。これ、本当に税込2万円切っていて良いの……??

Technics「EAH-AZ60M2」

Technics「EAH-AZ60M2」

最後に試聴したのは、EAH-AZ60M2。元々AZ70を使用していた筆者にとっては最も王道な候補である。イヤフォンとしては、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載し、IPX4の生活防水にも対応。対応コーデックはSBC/AAC/LDACと、シンプルだが必要十分な仕様だ。

内部には、8mm口径のダイナミックドライバーを1基搭載する。そのサウンドは、リッチなドンシャリイヤフォンという印象。低域が濃厚ながら過度にならない程度に心地よく出ていて、勢いのある高域のキラキラ感がより際立つ。解像感がありつつ音楽を楽しめて、「音に対するラディカルさ」と「エンタメ感のある演出」を両立しているというか。J-POPはもちろん、ロックなども相性が良さそうだ。

なにわ男子楽曲で言うと、「ダイヤモンドスマイル」では、冒頭で鳴るベースがしなやかに沈み、楽曲の持つ透明感が耳の中に溢れてくる。「初心LOVE」では冒頭から7人の歌割の妙を味わえるし、高橋さんと大橋さんが演出するキレイなハモリパートや、ラストの「めげないロミジュリ」まで、楽曲の一連の流れをドラマチックに描く。

また、どちらかというと王道側でない楽曲「Make Up Day」や「ウルリルラリラリ」など、打ち込みで今っぽい低音の音圧強めの作りになっている曲を、低音に過度に寄り過ぎることなく、ボーカルの軽やかさも含めて表現するのも良い。特に後者では、高橋さん・長尾さん・大橋さんという、歌唱力の高いメンバーが持つ新しい表現力を存分に満喫できた。

なおせっかくなので、ひとつ下のグレードにあたる「EAH-AZ40M2」も試聴してみた。AZ60M2の方がリッチ感はあるが、AZ40M2も低域が力強くクリアな高域がキレイで、アイドル楽曲のキラキラ感もしっかり味わうことができる。この価格帯であっても“Technics”ブランドを冠するさすがのクオリティとったところで、コストパフォーマンスがかなり高い。なお、AZ60M2/AZ40M2とも専用アプリから音質調整も行える。

「EAH-AZ40M2」

運命<キセキ>は待ってたんだ

非常に困ったことに、今回聴いた4機種とも、音質的な面ではなにわ男子楽曲とすごく合っていた。アイドル楽曲を聴くことを念頭に選んでいただいただけあって、全てのモデルでなにわ男子のキラキラ感を満喫できた。結局、筆者は購入する製品を取材日に決めきれず、一晩寝て冷静になることにした。

正直、数年前の自分ならAK UW100MKIIで即決だっただろう。シンプルに音質のクオリティに振ったフラット傾向の作りが好みだ。しかし硬派なフラット傾向で音をモニターできるイヤフォンとしては、すでにカスタムIEM(UE Reference Monitor)を所有しているので、今回はエンタメ感のあるサウンドのモデルを選ぶことに。まあ、AK UW100MKIIは音質に対して価格が安いというお得感も強くて、実際は最後まで悩んだが……。

元々筆者は、フラット傾向で味付けの少なく、地の音質がわかるイヤフォンが好きだった。そういうモデルは高価格帯で、繊細さと高い描き分け能力を備えることが多い。しかし最近、そういうイヤフォンでYouTubeなど圧縮系の音声を聴くと違和感が生まれてしまうこともある。プライベートでは、ガチのハイレゾ音源だけでなく、こういった圧縮系の音声を聴く機会も増えているので、ここ数年でイヤフォンを選ぶ自分の軸が変わってきたなと感じる。オンライン会議用のマイクやマルチポイント接続機能が必須というのも、コロナ禍を経て変化した部分だ。

また今回の試聴を通して、今どきのアイドルソングを聴くなら、基本に戻ってドンシャリ傾向のイヤフォンが適していることを実感。その点で、mini3 EARBUDSとAZ60M2は強かった。ただ、めちゃくちゃガジェットとしての個性が強いANW02も、捨てがたいという具合だ。

ちなみに今回のイヤフォン、忘れていた去年のクリスマスプレゼントとして夫が買ってくれることになった(半年間忘れられていた)。そこで、取材の数日後に夫を連れてe☆イヤホン秋葉原店を再訪。4機種を夫婦でそれぞれ試聴して、やっと購入モデルを決定した。

選ばれたのはズバリ……薄々勘付かれているとは思うが、AZ60M2だ。

装着した時に顔周りが明るくなると思い、シルバー色を選びました。アラフォー女性には大事な要素なんす

決め手は、音質と機能性の全体的なバランス。音質は先述した通りの「リッチなドンシャリ」という特徴だ。そして機能的には、ワイヤレス充電に対応すること、業界初の3機種同時マルチポイント接続に対応するのが大きく、スマホ、PC、Nintendo Switchの全てに接続しておけるのが魅力的すぎた(なお、接続方式をLDACにするとマルチポイント接続できないので注意)。

結局、古いTechnicsから新しいTechnicsに買い換えるという、なんか普通のオチになってしまって申し訳なくもありつつ……。まあこれも、プライベート用のイヤフォンをリアルに選んだ結果ということで、大目に見ていただけたら嬉しい。

永遠に煌めけ

新たにAZ60M2を手に入れ、筆者のイヤフォンライフはめちゃくちゃ充実している。カフェで執筆する際など、ノイキャン機能とアンビエントモードを使えるのがやはり便利だ。ノイキャン機能はマストに考えていなかったが、何だかんだあって良かったと実感。

なお、今回はなにわ男子をフィーチャーしたが、本機はもちろん女性アイドルの楽曲とも相性が良い。筆者が声質で推した女性アイドル「CY8ER(サイバー)」の楽曲「さよならフラッシュバック」を聴くと、遊びのある打ち込みのリズムに弾力があって気持ち良く、同時に高域に抜け感があり、メンバーの高音ウィスパーボイスが映える。切なさが胸に押し寄せ、激エモい。彼女らは惜しくも2021年に解散してしまったが、それと入れ替わるように同年CDデビューしたのがなにわ男子だった。

最後に、最新の男性アイドル楽曲として、なにわ男子とその先輩グループ「SUPER EIGHT」「WEST.」によって結成された限定ユニット「KAMIGATA BOYZ」についても、AZ60M2との相性の良さを推しておこう。1st曲「無責任でええじゃないかLOVE」は、アイドル楽曲に定評のあるヒャダインこと前山田健一氏の作品で、男性アイドル往年の「トンチキソング」を次世代に継承していく覚悟が漂う名曲である。

KAMIGATA BOYZ - 無責任でええじゃないかLOVE [Official Music Video]

AZ60M2では、中~低域が中心となるサウンドと、メンバー総勢19名(+5名)の声をしっかり楽しむことができる。冒頭から早速、右チャンネル寄りの少し下に道枝さん、左チャンネル寄りの少し上に小瀧さん、ド真ん中に村上さんの声が定位。歌声だけでなくセリフや叫び声も多い楽曲だが、さまざまな声のレイヤーを整然と、楽曲全体をスピード感を持って再生してくれる。特に、左右チャンネルに振り分けられた「Aぇ! group」メンバーのガヤが明瞭で、各セリフがわかりやすいのが良い。

今回、アイドル楽曲でイヤフォン選びをするのも初めてだったが、非常に面白かった。そう、オーディオ機器選びのポイントは、第一に「自分の好きな楽曲で試聴すること」。店員さんに自分の音楽の好みを伝えることで、良いモデルに早く辿り着ける。ぜひ皆さんもイヤフォン選びの際は、恥ずかしがらず音楽に対する自分の癖(へき)をさらけ出して、納得の1台に辿り着いてほしい。