沖縄県だけに存在する「バイクは第1通行帯だけを走れ」という通行規制が完全撤廃されることが、関係者の話でわかりました。この規制が危険だというバイク業界の訴えに、沖縄県警が段階的に規制を解除していました。

あるバイクショップは「この規制がなくなるならバイク屋辞めてもいい」とまで切望した

 沖縄県だけに存在する「バイクは第1通行帯だけを走れ」という通行規制が、2024年9月末をもって完全撤廃されることが、関係者の話でわかりました。このルール、実際に現地を走ってみると簡単ではありません。車両は道路の左側を走る、という通常の交通ルールとは根本的に違うのです。


歩道橋に道路案内と共に設置された国道58号のバイク通行規制標識。バイクは矢印の標識の下の車線しか走れない。那覇市泊交差点(中島みなみ撮影)。

 排気量に関わらず、バイクはいちばん歩道寄りの第1通行帯しか走ることができません。左折するクルマがあると、バイクの直進におかまいなく割り込み、そのたびに直進が妨げられます。右折時は通常、第1車線から第2車線へ変更し、さらに右折専用車線で右端によって曲がりますが、バイクはギリギリまで第1車線を走り、すべての車両をやり過ごして、右折車線にハンドルを切る必要があります。

 2024年5月30日に沖縄県へ入り、沖縄県警交通部を訪れた全国オートバイ事業協同組合連合会の大村直幸会長は、ここで全廃についての話を聞きました。

バイクは第1通行帯しか走ることができないというルールは4年前から段階的に縮小されてました。昨年度末に一部区間の解除が実施されたので2024年も同じように全廃を期待しましたが、そうはならなかった。しかし今回、9月30日までに全廃が決まりました。この日以降は、完全にどの車線でも走ることができます」

完全撤廃は2024年9月末日。それまでに順次規制を解除

 沖縄県警は、確保した工事費予算ですでに入札を完了。道路標識の撤去に加えて、「二輪を除く」と書かれた道路表示を削る工事の入札も終えています。道路標識の撤去によって道路規制は効力を失うので、規制の撤廃は道路標識がなくなったところから順次完了し、9月30日を最終日としています。

 沖縄県バイクショップが集まる沖縄県オートバイ事業協同組合(宜野座朝洋理事長)とその上部団体の全国オートバイ協同組合連合会が、この問題に取り組み始めたのは約10年前のことです。大村会長が振り返ります。

「一度できた交通ルールは、何十年たってもなかなか変わりません。沖縄県警に知り合いがいるという県民は、このルールを変えるのは絶対無理だと聞いてたそうです。7年前ぐらい前だと思うのですが、ある組合員さんは『このルールがなくなったら、俺はバイク屋やめてもいい』とまで言ったんです。あの言葉はちょっと重かった」


第二・第三走行車線に「二輪を除く」と書かれた道路(中島みなみ撮影)。

 こうした関係者の働きかけによって「バイクは第1通行帯だけを走れ」は、2021年に初めて一部区間の規制が解除されました。その後、2023年まで3年連続で規制解除が実施されています。規制区間の推移は以下の通りです。

・約82km(〜2020年)
・約71km(2021年〜)
・約49km(2022年〜)
・約36km(2023年〜)

 そして2024年に、国道58号線と国道330号線に残る約36kmが解除され、その役割を終えることになります。