立命館大学広報課のXより

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 キャリア官僚を選抜する国家公務員総合職(国家総合職)試験の春試験の結果が5月28日に発表された。近年、霞が関官僚にブラックなイメージが付いて回っているせいか、競争率は7.0倍と過去最低だったが、それでもわが国最難関の就職試験である。合格者で一番多かったのは東京大学の189人、次いで京都大学の120人と、おなじみのトップ2校。ところが、今年は84人の合格者を出した立命館大学が3位に躍り出たのだ。

【写真をみる】「東大」「京大」が民間に流れてしまうのはナゼ?

「幅広く問題が出される国家総合職の試験は、私大生にとって不利とされており、旧帝大に対抗できるのは早稲田や慶應という時代が長く続いていました。立命館も健闘していましたが、なぜかここ4〜5年で急に合格者数を増やしてきたのです」(公務員予備校の関係者)

「立命館」大躍進のワケ

 一体何が起きたのだろうか。立命館大学に聞いてみると、

「当大学では1、2回生を対象に『立命館霞塾』というプログラムを2013年から実施しています。これは現役のキャリア官僚を招いて講演会やディスカッションなどを開くというもの。単に試験突破だけではなく国家公務員を目指す学生の“志”を鼓舞するわけです。そして、3回生からは法文系、技術系、心理系などに分けて試験対策講座を開講しています」(広報課)

 こまめな試験対策の成果というわけなのか。就活問題に詳しい大学ジャーナリストの石渡嶺司氏が言う。

立命館大学広報課のXより

「東大」「京大」はもう“キャリア官僚”になりたくない?

「立命館の躍進には、やはり東大や京大などトップの大学生が敬遠しているという背景があります。生涯賃金や仕事へのモチベーションを比較すれば彼らにとって民間のコンサルなどのほうが魅力的に映る。もちろん、国家総合職が政府を支える重要な仕事であることに変わりはありません。だから私学の学生にしてみれば、キャリア官僚になることは、人生における下剋上のようなもの。最近は司法試験に強い中央大学も茗荷谷キャンパスに自習室を設け、国家総合職試験を積極的にバックアップしています」

 試験に受かると次に待っているのが面接試験だ。

「6月12日からは個別の官庁訪問が始まり、10月1日に内定という運びになります」(人事院

 最後に残るのは910人(2023年実績)。霞が関を目指す学生たちの熱い夏がやってくる。

 今年の景色は変わるのか。

「週刊新潮」2024年6月13日号 掲載