【A4studio】月曜日が来ないでほしい…日本人が五月病になってしまう「特殊な事情」とその「危険な前ぶれ」
新年度となり、進学や就職で新しい環境に身を置き1カ月。いつも以上に疲れたり眠れなくなったりして、気付かぬうちにストレスが溜まっているというのはよくあること。4月のうちは気を張っていていたものの、ゴールデンウィーク(GW)の連休によってその集中力がプツリと途切れ、気分が優れず、やる気も出なくなってしまう――そう、「五月病」だ。GW明けの時期に症状が出る人がもっとも多いと言われる五月病だが、医学用語にあるような正式な病名ではなく、前述した症状の俗称となっている。
記事前編は「突然、朝に起きられない、会社に行けない…実は危ない『五月病』の『リアルすぎる実態』」から。
活力が出ず、気持ちがネガティブに
では、ここからは産業医の武神健之氏に五月病の原因と対策について伺っていきたい。(以下、「」内は武神氏のコメント)。
「五月病は基本的には活力が出にくくなり、気持ちがネガティブな方向に引っ張られてしまうという症状が現れます。何となく気分が晴れない、毎朝起きるのが億劫になるといった心理的な症状や、腹痛や頭痛などの身体的な症状が発生することも。進学や就職といった環境ががらりと大幅に変わったときに起こりやすいものですが、それだけではなく昇進や異動、さらには結婚や子どもの入学などを機に発症し、新しくなった生活に適応できず、調子を落としてしまうということもあるのです」
それまで集中して取り組めた仕事や勉強、さらには遊びにまでやる気が沸かなくなってしまい、公私のバランスが崩れ、日々の生活にも影響が出てしまうという。
五月病にかかりやすい人
ではどういった性格・環境の人が五月病にかかりやすいのだろうか。
「五月病は真面目でがんばり屋な性格の人、ほかにも完璧主義の傾向がある人などがかかりやすいです。新生活でがんばらなきゃと志を高く持っているほど心身ともに負担がかかってしまうので、五月病になりやすいでしょう。また、新生活でガラリと環境が変わり、仲のよかった家族や友人となかなか会えなかったり話せなかったりするなど、“距離”ができてしまうような状況も危険です。いずれにしても新年度が始まって1カ月ほどであるGW前後に限界のタイミングがくるケースが多いのです。
そして五月病は放置していると、最悪の場合には適応障害などに至ってしまうこともあります。適応障害の患者さんは年々増えていますが、この時期に五月病を悪化させて適応障害になってしまうというケースは多いのです。ちなみにうつ病とは異なり、適応障害は明確に環境、状況に原因があって心身のバランスを崩してしまうことを言います」
適応障害になってしまうおそれもあるとは、やはり五月病は侮れない。
GW後の特殊な事情
ちなみにGW後の特殊な事情も相まって、五月病になりやすくなってしまうのだとか。
「GWが終わると、7月の『海の日』(今年は7月15日)まで2カ月以上も祝日がありません。1年間のうちにもっとも祝日がない期間になっているのです。そのため、GW後もがんばり続けてしまうと、息抜きできるタイミングがないせいか、疲労を溜め込みがち。
実は休息は疲れてから取るのでは遅くて、疲れきる前にきちんと休んでおかないと、さらに疲れを溜め込んでしまうもの。疲労が溜まっていてもがんばろうとすると悪循環に陥ってしまいます。ですから有給休暇を取得して適切な時期に休める期間を作っておくなど、自分の心身をマネジメントするような心掛けも必要なのです。そういった対応ができないとズルズルと五月病を引っ張ってしまうでしょう」
周囲が異変に気付いてあげられるか
五月病を患っているかどうかは、その人の行動を注視していると明らかになってくるそうだ。
「ストレスや疲労を抱えている人は、行動に症状が現れるもの。たとえば、あいさつの声が小さくなっていたり、報告・連絡・相談を失念するようになっていたり、作業効率が徐々に遅くなっていったり……。一見すると些細な変化ながら、その人をしっかり観察していると普段との違いが見えて来て、ミスや粗が目立っていることがわかるはずです。
五月病はまず、周囲の人々がどれだけ異変に気付いてあげられるかが重要になります。ただ、仮に変化を感じ取っておかしいなと気付いても、本当に精神的に参っているのかの確証が持てないといったこともあり、どうやって声を掛けてあげればいいのか戸惑う人も多いはず。ですから社内や部署内で、社員同士が頼りやすいような制度作りや空気作りをしていくといいでしょう。異変がないか確認し合い、状況を共有していくことが大切なのです。コミュニケーションをしっかりと取って、本人と周囲が異変を認識できれば、労働環境の改善を図るなどして解決の糸口を見つけていけるのではないでしょうか」
――五月病が深刻化してしまうと、適応障害となり長期の休職を必要としたり、退職しなくてはいけなくなったりする可能性もあるだろう。自身のメンタルを気遣うのはもちろんだが、同僚の異変も察知できるように気を配っておきたいものだ。
(取材・文=A4studio)