「新車のにおい」嗅ぐのは危険?米の調査でほぼすべての車の内装から“発がん性物質”検出、夏は濃度が2~5倍に
ほぼすべての車のシートから“発がん性物質”検出、米国の研究により判明
レザーシートに使われる革のにおいや、内装に使用されている接着剤のにおい、長年の使用で染み付いたにおい、設置している芳香剤のにおいなど、車内ではさまざまなにおいが感じられます。
人によっては不快と感じたり、気分を害することもある車内のにおいですが、レザーシートのにおいやいわゆる“新車のにおい”を好む人もいるため、その感じ方はさまざまと言えるでしょう。
しかし、「Environment Science and Technology」は、2015年から2022年に製造された車155台を調査したところ、ほぼすべての車内の空気から発がん性物質が検出されたことを発表しました。
メーカーやモデル名に関しては明かされていませんが、アメリカ在住のユーザーが使用するガソリン車、バッテリーEV、ハイブリッド車を対象に、冬季に101台、夏季に54台で調査を実施しています。
発生源はシートをはじめとした内装に使われる難燃性素材
検出された「リン酸トリス(2-クロロイソプロピル)」は、車の難燃素材等に含まれている成分ですが、マウス等で発がん性活性の証拠が見つかったことから発がん性があるとされています。
車両火災が発生したときの人的被害を抑えることを目的に、自動車の内装に使われる素材は燃焼速度が遅い難燃素材が採用されており、日本の保安基準でも内装には難燃性の素材を使用することが義務付けられています。
車のシートも内装部品に該当するため難燃素材で作られていることが求められますが、今回の調査で調査したほぼすべての車から検出された「リン酸トリス(2-クロロイソプロピル)」は、主に車のシートのスポンジ(フォーム)に使用されている素材です。
検出された量は0.2~11,600ng(ナノグラム = 10億分の1グラム)とごくわずかではあるものの、車内空間に発がん性物質が含まれていることは、ユーザーの懸念を招くおそれがあります。
温度の上昇とともに“TCIPP”の濃度は2倍から5倍程度上昇
調査は冬季に101台、夏季に54台と分けて実施されましたが、夏季は冬季に比べ2倍から5倍の「リン酸トリス(2-クロロイソプロピル)」が検出されました。これは、車内の温度が上昇することで成分が揮発し、車内空間へ拡がったと予測されています。
微量であるため過度に心配する必要はないと言えますが、呼吸の回数が多い子どもや車内で過ごすことが多い人は一般の人に比べ吸入量が増えるため、健康への影響が心配になるのは当然のことでしょう。
少しでも曝露を抑えたい場合には、車内の換気が効果的だといいます。また、温度の上昇とともに濃度が高くなるため、車内の温度を下げることも重要です。
エアコンの外気導入や窓開けで十分に換気し、それでも車内が暑い場合にはクーラーを使用して車内を冷ましましょう。