【松本 洋】「マンションに住む妻たち」の大バトル…!騒音トラブルで”被害者”と”加害者”に介入した理事会が「地獄をみた」ワケ

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マンション内のトラブルは「民事不介入」

マンションのトラブル「三大トラブル」といわれている、「騒音」、「喫煙」、「ペット」問題。

喫煙ペットに関しては、管理規約や使用細則のルールに基づいて規制することができるため、大きなトラブルに発展する前に解決できますが、騒音トラブルは、管理組合、管理会社も踏み込んだ対応ができないこともあり、そのため住民の不満も相まってご相談が多く寄せられています。

じつは管理組合が管理会社と結んでいる、管理委託契約書では、『居住者間のトラブルの解決』の規定はありません。国土交通省が公表している『マンション標準管理規約書」でも、理事長が、共同生活の秩序を乱した者に対応する規定はありますが、居住者同士のトラブル仲裁や解決の対応はないのです。

つまり、管理会社も管理組合も警察と同じように、トラブルに関する問題は原則「民事不介入」なのです。

築年数の経過したマンションの管理組合では、世話好きの親切な理事がトラブルの仲裁を行う場合や、中小の管理会社などでは時々きめ細やかに対応してくれることがあるようです。

これらは、うまく解決できればいいのですが、特に築年数の経過したマンションでは世代間でも価値観が違うため、以前に<ストーカー化した「ハラスメントを理解できない老人たち」が大暴走…築40年「高齢者マンション」で起こった惨状の一部始終>で紹介したような、トラブルに発展する可能性もあります。

こじれてしまうと非常に厄介なため、最近の新しいマンションや大手の管理会社に管理を委託している管理組合では、そういった面倒なことに巻き込まれために、専有部分で起こる「居住者間のトラブルは、当事者間で解決する」と使用細則で規定しているところが多くなっています。

とはいうものの、騒音やニオイの問題で困っている居住者を見て見ぬ振りもできません。そこで管理組合や管理会社は、貼り紙、投函という初期対応だけ行い、その先は「当事者同士の解決」として一歩も踏み込まないのが主流になりつつあるので一般的です。

そういった事情から、最近では弁護士やマンション管理士に解決を直接依頼する居住者も増えています。

警察沙汰になり得る場合も

千葉県のとあるマンションの例では、騒音問題の当事者双方を理事会に呼び、便宜を図ろうとしたところ、結果的に「火に油」を注ぎ、理事会や理事長にその矛先が向けられました。

朝晩飛んだり跳ねたりする“ドタバタ音”を不快に思った、下階(被害者)の妻が、上階のご夫婦に「これでも読ませて少し静かにさせてください」と、高級な絵本数冊を放り投げたのです。

それを見た理事長が「まぁ、冷静に話しましょう」と言った途端、上階の妻は「何よ、理事長だからと偉そうに!」と言い放ち、理事長個人の悪口、理事会への不満、マンションの不満などをまくしたてて集会室を出て行き、結果2ヵ月ほどで上階の夫婦は引っ越ししていったそうです。

さらに、直接注意がこじれて傷害事件に発展する多く事例もあり、警察沙汰のトラブルにも発展しています。

騒音に耐えられなくなり、注意するときには怒りが爆発し、大声で怒鳴ったり、威嚇したりして恐怖を与えて110番通報されて事件なった例。

騒音を出していると勘違した下階の居住者が、天井を長い棒で「ドン・ドン!」と突いて、「うるさい!」警告。上階の居住者が110番通報して警察官が出動した例。

音源元の住戸に直接注意したところ、玄関前にゴミを捨てられて嫌がらせされた事例…さまざまです。

警察は、「民事不介入」が原則ですが、騒音での相談は多くあるようで、ほとんどが「管理組合、管理会社にご相談ください」と回答されます。

しかし前述のように、管理会社と管理組合は原則、直接交渉はしないため、どうしても警察が頼られてしまうのでしょう。

集合住宅だからこその気遣いを

「隣の住戸から電動工具を使って、室内を破壊しているような大きな音がする。壁に穴をあけているのかもしれないが、原因が分からず、不安で眠れない。管理会社に調査するように言ったが対応してくれない。隣の住戸の室内の確認をしてほしい」

高級マンションにふたりでお住まいの高齢のご夫婦から、以前にこういった相談がありました。

聞けば、「隣の住人は最近引っ越してきたのは独身男性のようだが、引っ越しの挨拶にも来ていないので、どのような人かまったく分からない」とのことで、依頼を受けた私が対応にあたりました。

インターフォン越しに訪問の理由を説明したところ、物腰が柔らかな男性が出てきて、お宅にお邪魔することになりました。

じつはその男性は建築デザイナーで、部屋を思い描くイメージに仕上げるために、電動工具を使って木を切ったり、ネジを締めや塗装をしていたということでした。

「思い通りにならず何回も作り直して。その騒音でご迷惑をおかけした」と平謝りで、依頼を受けた高齢のご夫婦を招き事情を説明したところ、騒音の原因が呑み込めたようで笑みがこぼれていました。

ご夫婦は、隣の部屋を見るまでは、躯体に穴をあけているのだろうとか、中の鉄筋が切れて、地震の時は自分の部屋に被害が及ぶのではないのかと心配で安眠できない日々が続いたそうです。

男性とご夫妻は、このトラブルをきっかけに、良き隣人同士になったそうですが、必ずしも丸く収まるとも限りません。

上下階で発生することが多い騒音のトラブルを防止する対策としては、マンションの消防訓練や炊き出し訓練、クリスマス会等のイベントで居住者のグループ分けを行う時に、フロアー(階数)別ではなく、マンションの上下階の居住者が同じグループになるように縦列で分けるようにすると効果が高いといわれています。

具体的には、201号室・301号室・401号室…のように、号数別でグループ分けをすることです。上下階の居住者がお互い顔見知りになっていれば、全然知らない人と騒音や漏水事故トラブルが発生する場合に比べて、顔見知りなら大きなトラブルは減るでしょう。

このような取組をして騒音の問題ばかりではなく、上下階の漏水の問題がスムーズに解決したマンションも多くあります。子供のドタバタ音は、たとえ裁判で勝ったとしても収まるものではありません。

お子様のいる家庭では、床にコルクマットを敷くなど防音対策を行うなどが必要です。マンションは集合住宅です、お互いに配慮した生活が望まれます。

つづきの<都内タワマンの「騒音トラブル」で大バトル…部屋番号を晒し、“無実の住民”を吊し上げした理事会の「ヤバすぎる対応」>でも、マンションの騒音トラブルの実態について明かしています。

都内タワマンの「騒音トラブル」で大バトル…部屋番号を晒し、“無実の住民”を吊し上げした理事会の「ヤバすぎる対応」