「年寄り扱いが嫌だった」元サッカー日本代表の釜本邦茂に、「免許返納」を決意させた「孫の一言」

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きっかけは孫の一言だった

何かを卒業することで、身近にあるけれども見えていなかった「かけがえのないもの」に気づくこともある。サッカー元日本代表で、1968年のメキシコ五輪では得点王に輝いた釜本邦茂さん(79歳)が気づいたきっかけは、1年ほど前の免許返納だった。

「それまでも妻や子どもからは、早く返納するように口酸っぱく言われていました。ただもともと運転には自信があったこともあり、年寄り扱いされている気がして、素直に受け入れられなかったんです。

通勤ラッシュの時間帯や夜は運転を控えるなど、自分なりのルールを決めて守れば、まだまだ運転できると思っていました。他人の言葉に左右されて決めるのではなく、いつハンドルを置くかは自分で決断したかった。

そんな私を突き動かしたのが、孫娘の一言でした。テレビやネットニュースで、私と同世代の高齢者が起こした悲惨な自動車事故の事例をいくつも見ていて、『もし事故を起こしたら、ジイジのこれまでが台無しになる』と言われたんです。その言葉に強く心を動かされ、もう運転はやめようと決めました」

免許を失って「気づいたこと」

孫の言葉が胸に響き、26歳から50年以上にわたって続けてきた運転から卒業した釜本さん。警察署の窓口で書類を1枚記入しハンコを押して、拍子抜けするほど簡単に返納してしまった。

ただあれほど免許証を手放すのを嫌がっていたにもかかわらず、不思議と後悔はなかったという。免許を返納してから、あらためて「家族や知人からの思いやり」を実感できる場面が増えたからだ。

「自分で運転できないと、もちろん不便に感じることもあります。しかしそんなときでも、子どもや友人たちが助けてくれて、人とのつながりを実感できる機会が増えました。何より私のことを心配していた孫が喜んでくれるのが嬉しいです。

今となっては家族があれほど根気強く返納を勧めてくれたのも、愛情ゆえだったと心の底から実感しています。運転はできなくなりましたが、それ以上に得たものは大きかったですね」

「週刊現代」2024年3月16・23日合併号より

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