熊谷史人被告(資料写真:吉川忠行/06年1月24日)

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ライブドア(LD)事件で証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)の罪に問われた元社長、堀江貴文被告(33)の第16回公判が17日、東京地裁(小坂敏幸裁判長)で開かれ、LD元代表取締役の熊谷史人被告(28)=分離公判中=が検察側証人として出廷した。熊谷被告は架空取引による粉飾について「堀江さんは知っていながら、知らないと言うのは悔しいですね」と語ると、被告人席の堀江被告は顔を真っ赤にしていた。

 検察側は9月4日の冒頭陳述で、LDが2004年9月期連結決算において、買収予定だった出会い系サイト運営会社「キューズ・ネット」と消費者金融「ロイヤル信販」からの架空売り上げ15億8000万円を計上したと指摘している。

 熊谷被告の証言によると、04年8月の段階で、連結経常利益予想50億円の達成には約10億円足りない状況だった。この不足分を埋めるため、熊谷被告がLD元取締役、宮内亮治被告(39)に相談したところ、「キューズ使うから」と言われた。

 その後、熊谷被告が同席した場で、宮内被告が堀江被告に「キューズでやりますから」と報告。堀江被告は少し悩んだ顔になり、「やりきるしかない」と話したという。

 8月以降、熊谷被告はプロ野球参入問題で忙殺され、東京と仙台を往復する日々を送った。楽天球団の参入が決まった11月2日に、キューズ・ネット、ロイヤル信販との取引について会計士から「実体を伴っているか」などと指摘するメールが届いた。熊谷被告は各事業部の責任者に聞き取り調査を実施。その結果、いわゆる「期ずれ」や架空取引が判明した。

 熊谷被告は取引の取り消しも考えたが、LDは10月29日に04年9月期連結業績の速報値をリリースしているため、下方修正すると「風説の流布」になるおそれがあると判断。これを堀江被告に報告すると「がんばって」と言われたという。

 熊谷被告は「堀江さんはある程度、架空性を、少なくとも期ずれを認識していたと思う」と証言。さらに「勝手に架空売り上げをしたら、堀江さんは厳しく叱責をすることになると思う。会計士の指摘を説明しても怒らなかったので、堀江さんは架空売り上げについて知っていたはずだ」と語った。

 検察側が堀江被告についてどう思っているか尋ねると、熊谷被告は「今でも尊敬している」と述べた上で、堀江被告が粉飾決算との関わりを否定していることについて「見て見ぬふりをしているのかわからないが、ショックを受けている。すべて知らないということはありえない。検察のシナリオは違うんじゃないかというのは、私もある。しかし15億円の粉飾は、堀江さんが直轄する事業部の赤字を埋めるために、部下が気を使ってやったと知っていながら、知らないというのは悔しいですね」と語った。

 その様子を横の被告人席で聞いていた堀江被告は、顔を真っ赤にし、上目使いで熊谷被告の方を見ていた。

会社の金でフェラーリ購入「信じられない」

 反対尋問で弁護側は、宮内被告らが女性コンパニオン派遣会社「トライン」の買収に絡み、自社株売却益の一部を私的流用した問題を取り上げた。宮内被告と中村長也被告(39)=分離公判中=が香港に設立したペーパーカンパニー「PTI」と、同じく故・野口英昭氏(エイチ・エス証券元副社長)が設立した「PSI」について、熊谷被告は「知らなかった」と証言した。

 トライン分の自社株売却益約1億5000万円を宮内・中村両被告と故・野口氏が使ってしまったのは堀江被告の裁判を伝える報道で知ったと話し、「信じきっていたので、横領しているとは思っていなかった。宮内さん、中村さんが会社の金でフェラーリを買ったことは、今でも信じられない。自分の金で買っていると思っていた」と話した。

 また熊谷被告はこの日の公判で、東京地検特捜部による1月のLD強制捜査以降、熊谷被告ら逮捕された4人の幹部の刑事裁判の弁護士費用は堀江被告が立て替えていることを明らかにし、それは今も続いていると語った。

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 このほか公判では、「ウェブキャッシング・ドットコム」買収の担当者への証人尋問が行われ、「宮内さんが『クラサワ(コミュニケーションズの買収)と同じスキームでやるよ』と言うと、堀江さんは了承していた」などと証言した。【了】

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