日本での体験を楽しそうに語るソポアンガ【写真:羽鳥慶太】

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驚きばかりの日本「30か国くらい見てきたけど、どことも全く違う」

 ラグビーのリーグワン3部に所属する清水建設江東ブルーシャークス(江東BS)に、日本文化との濃密な接触を発信している外国人選手がいる。今秋行われたワールドカップ(W杯)にサモア代表として出場したSOリマ・ソポアンガだ。自身のSNSは日本での不思議な体験であふれ、ファンとのコミュニケーションツールにもなっている。日本にやってきて3か月、感じた魅力を「THE ANSWER」に語ってくれた。

「ユートピアというか、まさに理想郷だよ。これまで30か国くらいは見てきたけど、どことも全く違うんだ」 ニュージーランド出身のソポアンガは、誰もが憧れる代表のオールブラックスで通算18キャップ。その後はスーパーラグビーのハイランダーズで優勝メンバーの一員となったのをはじめ、イングランドとフランスのリーグでもプレーしてきた。ラグビー強国での華麗なキャリアを誇るが、江東BSからの誘いには迷わずOKしたという。

「子どものころからずっと、世界を見て回りたいと思っていたんだ。そして自分の子どもたちにも広い知見を持ってもらいたい。これまでいろんな選手に、日本のいいところを聞いたけど、聞いただけで終わらせたくないと思ったんだ。あと、最後は徐々に故郷に近づいて行きたいという理由もあったね」

 飛び込んだ日本では練習場のそばに住み、都内への往復も電車。ハマった食べ物は“エビマヨ”という庶民派。日本の“特異性”を感じるのは、どんな時なのだろうか。

家具店で感じた日本人の我慢強さ…“真の日本食”に挑戦も

「まずはやっぱり安全性だね。物を置いておいて、1時間後に戻ってもまだ置いてあるとか、欧州ではありえないよ。娘と同じくらいの、5〜6歳の子どもがひとりで電車に乗っているのにも驚いたね。自立しているなとね」

 さらに驚いたのは、家具店での経験だった。家で使うソファーを探して、ショッピングモールにたどり着いたのは閉店時間の直前。「午後8時で閉まるところでね。でも8時半くらいまでいさせてくれて、何ならもっと案内してくれると言ってくれたんだ。日本でなければ『明日来てください。ほかの店も閉まっているので』でおしまいだよ。そこを待っていてくれるのは驚いた。なんて我慢強いんだとね」。町で出会った“おもてなし”に心を打たれた。

 異文化体験を楽しめるのは、ソポアンガ自身の考え方も大きい。驚いた日本の食べ物として、定番の“納豆”を挙げる。「チームメートがいきなり“真の日本食”だと言ってくれたんだよ。だったら、好き嫌いは置いておいて、トライしてみようとね。ニュージーランドで食べているものを食べていても仕方がないじゃないか」。社会を深く知ろうとする分、ハプニングも多い。それも受け入れ、楽しもうとするのがソポアンガのスタイルだ。

 定食屋では、日本語しかない自動販売機を前に悩んだ。一か八かで購入した食券で出てきたのは「1150円のバッドボーイ」こと、大盛りのラーメンとかつ丼のセットだった。キックボクシングを習う娘たちと食事に行った時に遭遇し「本当はたんぱく質が多めの食事が良かったんだけど……。ラーメンを頼んでしまった。量が多くて大変だったよ」と苦笑いだ。

「人間がとにかく忍耐強くて親切。皆が助けてくれるのでびっくりしているよ。もちろん日本を全部理解したとは思わないけれど、皆来たほうがいいよと言いたいね」。日本でぜひ経験したいこととして、新幹線への乗車と富士登山を挙げる3児のパパは「娘たちのほうが、間違いなく日本語の習得が速い。これは勝てないね」と笑う。これからも、積極的なチャレンジを見せてくれそうだ。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)