掲載:THE FIRST TIMES

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■「しょうもないことを言って、うれしい顔をして、ライブハウスで生きていきましょう!」(ラックライフ・PON)

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ラックライフが『15th Anniversary TOUR「LIVE」FINAL』を11月30日にZepp DiverCity(Tokyo)にて開催した。本稿ではそのオフィシャルレポートを掲載する。
【ライブレポート】
気持ちをひとつにするように拳をぶつけ合ったメンバー達がそれぞれの立ち位置につくと、照明が消える。そして、暗闇の中、会場を包み込んだ静寂が観客の耳をそばだたせてから、1曲目の「Hand」を演奏しはじめるというオープニングは、観客を一瞬にして自分達の世界に誘い込む、結成15周年を迎えたバンドならではのテクニックに思えたが、そんな印象は2曲目の「ブレイバー」から繋げた「初めの一歩」でたちまち一転した。

なぜなら、どんどん熱を帯びていったPON(Vo&Gu)の歌声は、「音楽であなたの世界を変えに来ました! 一緒に歌って!」と早速、観客に呼びかけたその「初めの一歩」で<行け!飛べ!>と歌いながら、いきなり喉も張り裂けんばかりの渾身の歌声に変わったからだ。

序盤も序盤。ライブが始まってまだ3曲目のことだ。この日、ラックライフが何曲かやるのか、この時点ではわからなかったが、ツアーファイナルのワンマンだ。少なくとも2時間はやるんじゃないかと考えると、最後まで歌声が持つのかと思わず心配になってしまうほどの渾身の歌だったのだが、そんな勝手な心配など知る由もないPONは「幸せになって帰ろう! アゲていこう!」と声を上げると、そのままアンコールまで喉を振り絞るように歌い続け、そして楽器隊の3人--さりげなくエフェクターを使いながら、音色を変え、アンサンブルに彩りを加えるikoma(Gu&Cho)、指弾きとは思えないソリッドな音色でバンド・サウンドにエッジを立たせるたく(Ba)、力強いドラミングでずしっとした低音を響かせるLOVE大石(Dr)は、そんなPONとともに渾身の熱演を繰り広げていった。

結局、この日のライブは2時間50分に及んだのだが、その間ずっと筆者は、全身全霊を傾け、演奏しつづける4人の姿に胸を打たれ、シビれっぱなしだった。結成15周年というタイミングで、飾らない、いや、飾るどころか音楽に対する情熱をこれまで以上に剥き出しにしたラックライフのライブを、しかもZepp DiverCityという大きな会場で見られたことがうれしかった。

高校の同級生4人が前身バンドを経て、2008年に結成したラックライフは2023年、「15th Anniversary」と謳いながら、シングル『℃ / しるし』のリリースを皮切りに精力的に活動を続けてきた。東名阪を回った同シングルのリリースツアー『Because of you』では、東京・六本木EX THEATERのステージに立ち、5月には主催イベント『GOOD LUCK』を4年ぶりに大阪・なんばHatchで開催した。そして、新曲「ファンファーレ」を含む2枚組ベストアルバム『LUCK LIFE』を7月、さらにシングル「軌跡」を8月にリリースすると、シンプルに『15th Anniversary TOUR「LIVE」』と題したツアーを9月からスタート。国内15ヵ所に加え、台湾、韓国にも遠征した。

いろいろなところに出かけていき、各地のファンと15周年を祝ってきた今年1年の精力的な活動を締めくくるのが、『15th Anniversary TOUR「LIVE」』のファイナルとなる、この東京・お台場Zepp DiverCity公演なのだが、チケットはソールドアウト。祝福ムードとともに観客の手拍子、突き上げる拳、シンガロングがバンドの熱演に応える中、この日、4人が演奏したのはダブルアンコールも含めた全21曲だった。

ロックンロール・サウンドとゆるい振付を観客と一緒に楽しんで、笑いながら一体感を作り上げた「あんたが大将」、爽やかさと切なさが入り混じるメロディを軽快なリズムに乗せた「℃」、そしてオープニング主題歌として提供したTVアニメ『ツルネ-風舞高校弓道部-』の世界観に自分達が常に願っていることを重ね合わせた<放て胸の深くまで刺さって抜けない音になれ>という歌詞が胸を打つ「Naru」、気持ちを抑えながらも、<走って走って>と歌ううちに高ぶる気持ちを抑えきれず、やっぱり渾身の歌になってしまったところがPONらしいと思わせた「走って」――とたたみかけるように新旧の代表曲を繋げていきながら、曲間のPONのMCも自然と熱いものになる。

「ここに立つまで、いろいろなことがあったし、いろいろなことを考えたし、不安なことも楽しみなこともあったけど、どうでもよくなりました。ありがとう! 今ここにいることがすべてです! みなさんがいつ知ってくれて、いつ出会ってくれなんてどうでもよくて、今一緒にいることが正義だと思ってます。今一緒にいられることを噛みしめながら楽しんでいきたい!」

そして、PONが歌い上げるメロディが胸を締め付けた「Lily」、曲が持つ切なさに観客がじっと聴きいったラブソングの「アイトユウ」。怒涛の前半戦とコントラストを描くように後半戦に披露した、胸にじわっと染みる曲の数々がセットリストをより説得力のあるものにする。

周囲の言葉に振り回され、迷ったこともあると振り返りながら、「素直にやろうと思った。自分を信じると言うか、自分の心のまま歌って、自分のことを信じてくれる人を信じる。小さなライブハウス、アニメ、YouTube、ラジオ、友達のオススメ、何で出会ったかはどうでもええねんけど、1個1個が大事。ほんまにありがとうと思ってる。言いたいことはマジでそれだけかもしれない」と語ったPONは「ありがとう。一緒に生きてくれて。これからもよろしく」と、その思いを8月にリリースしたシングル「軌跡」に託す。観客を圧倒するように鳴るギターの轟音とバスドラの重低音を貫くのは、ファンの思いとともに前に進む決意を渾身の力で歌い上げるPONのボーカルだ。

メンバー全員でシンガロングするラスサビも含め、凄みさえ感じさせるバンドの熱演に客席からこの日一番の歓声が沸いたところに「せーの」と息を合わせ、PONとikomaがギターの音色を重ねながら繋げたのが、バンドの知名度をぐっと上げたロックバラード「名前を呼ぶよ」だった。

2016年のリリース以来、ライブで歌い続け、バラードにもかかわらず、いつしかラックライフのライブに欠かせないアンセムになっていたことを、この日、観客のシンガロングを聴きながら改めて実感。

「俺らの音楽があなたに届いて、なんか元気をもらえたとか、なんか支えられたとか思ってもらえたり、音楽の力なんて、なんかでいいと思う。なんか元気になるとか、なんか体が軽くなるとか、なんか落ち着くなとか、そういうふわっとしたなんかであっていいんだけど、そういう存在になりたい。俺らの歌で、音楽で、あなたの人生が少し変わりますように。あなたの人生が少し明るくなりますように。そういうバンドであり続けたい。あなたの一番そばにいたい。そうすることが俺らの幸せです。一人ひとり、あなたがいるから世界は回る。あなたがいるから、俺は歌えるんやで。死にたくなったらライブハウスに来いよ。死にたくなくてもライブハウスに来いよ。しょうもないことを言って、うれしい顔をして、ライブハウスで生きていきましょう!」

ライブハウスで生まれ、そして育ってきたバンドの矜持をPONが語ってから本編の最後を、キャノン砲が放った無数の金テープとともに飾ったのは、前掲のベストアルバムに書き下ろしたアンセムの「ファンファーレ」だ。タイトルの由来になった<どんな時も君だけに向けるファンファーレ>という歌詞に「生きてる人全員に、生きてるだけで100点。花丸あげます」という思いをPONは込めたそうだが、結成から15年を経ても、彼を含め、ラックライフが音楽を作る動機や理由はこれっぽっちも変わっていないどころか、さらに強いものになっていることが頼もしい。

「大人の本気の悪ふざけ」と言いながら、メンバー全員でワルなロックバンドのコスプレを楽しんだブラックライフの新曲2曲(「レディースアンドジェントルマンボーイズアンドガール」「大正解」)もアニバーサリーならではのサプライズという意味では見どころだったと言ってもいい。しかし、「これで終わったら怒られる(笑)」とPONも言っていた通り、真の意味のサプライズはこの後に待っていた。

本公演がニコ生で配信されることと今回のツアーを凝縮したラックライフ初のLive Photo Bookを受注生産で作ることに加え、『ラックライフ 16th Anniversary 「僕らの生まれた日」』と題して、2024年3月15日、東京・豊洲PITでワンマンライブを開催することを発表。観客に歓喜の声を上げさせながら、すでに16周年に向け、動き出していることをアピールすると、「いい曲やねん、めっちゃ」とPONが言いながら、さらに新曲も披露して、「いろいろな人に支えられ、15年間続けられたことを改めて感じたツアーだった」とメンバー全員が異口同音に今回のツアーを振り返る一方で、15周年の締めくくりを新たなスタートに変えてみせたのだった。

まだタイトルが決まっていない、その新曲は疾走感のあるロックサウンドがラックライフの原点を思わせる一方で、世界が変わると信じているというメッセージが結成から15年を経てもなお、自分達にはまだまだ成し遂げたいことがあるんだとラックライフがさらなる希望に燃えていることを確信させる。

「みんな大好きや!」とPONがいつもの饒舌とは正反対の極めてシンプルな言葉で観客に感謝を伝えてから、バンドが観客のシンガロングとともに最後の最後に演奏したのはバラードの「僕ら」。<不安になるけれど これからもきっと大丈夫 僕らは生きる>というメッセージは、「俺らだけじゃない。あなたも一緒に<僕ら>です!」とPON が付け加えたことで、これからも一緒に人生を歩んでいこうというファンに対するラブコールに変わったのだった。
そして、全21曲を演奏しおえたとき、会場に響き渡ったのは、PONによるやはりこの言葉だった。

「またライブハウスで会いましょう! 大阪高槻ラックライフでした!」

その瞬間、あれだけ渾身の歌を歌い続けたにもかかわらず、多少枯れてはいるものの、PONの喉がこれっぽっちも潰れてないことに今更のようにびっくりしながら、これこそがライブハウスで鍛え上げてきたバンドの実力なのだ--と他人事にもかかわらず、なんだかすごく誇らしい気分になったのだった。

TEXT BY 山口智男
PHOTO BY 佐藤広理、佐野和樹

<セットリスト>
1 Hand
2 ブレイバー
3 初めの一歩
4 サニーデイ
5 幸せであれ
6 あんたが大将
7 リフレイン
8 ℃
9 Naru
10 理想像
11 走って
12 風が吹く街
13 Lily
14 アイトユウ
15 軌跡
16 名前を呼ぶよ
17 ファンファーレ
<Enc1. BLUCK LIFE>
1レディースアンドジェントルマンボーイズアンドガール
2大正解
<Enc2>
1.新曲
2.僕ら

リリース情報
2023.07.05 ON SALE
ALBUM『ラックライフ 15th Anniversary Best Album「LUCK LIFE」』

書籍情報
『LUCK LIFE 15th Anniversary TOUR「LIVE」』
※受注販売商品
※2月中旬より順次発送予定
受注受付URL
https://hagsentertainment.myshopify.com/

ラックライフ OFFICIAL SITE
http://luck-life.com/