11月28日、ドル円相場は1ドル=146円台まで、急激な円高が進んだ。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和さんに12月の為替相場の見通しを伺った。

写真拡大

 11月28日、ドル円相場は1ドル=146円台まで、急激な円高が進んだ。FRB(米連邦準備制度理事会)高官のハト派的な発言が、投資家に大きな影響を与えていると報道されている。金利引き上げの局面がピークに達しており、FRBの金融政策が転換点に差し掛かっているとの見方もあり、急激な円高が進んだようだ。そんな状況の中で12月の為替市場はどんな展開になるのか……。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和さんに12月の為替相場の見通しを伺った。

――ドル円相場が146円台まで円高に振れてきましたが、その背景は?

 タカ派の代表格とも言われるFRBのウォラ−理事が、ワシントンの講演で「経済を減速させ、インフレ率を2%に戻す上で政策が現在、好位置にあるとの確信を私は強めている」と述べたことが、市場で大きな注目を集めて、マーケットはドル売りが活発になりました。

 一方、同じくFRBのボウマン理事はソルトレイクシティーで行った講演で「FF金利のさらなる引き上げが必要だと引き続き想定している」と、ウォラ−理事とは異なる見解を示しましたが、結局2人とも12月の金利据え置きに異論ははさみませんでした。マーケットはこの2人のハト派的な発言に大きく反応して、一時は146円台にまで円高が進みました。

 実際に、12月17日−18日に予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)では、いまのところ利上げはないだろうと予想されています。ここに来て、様々な指標が景気の減速を示唆していることに注目が集まっているようです。

――為替市場の「トレンド転換」が近い、ということでしょうか?

 米国の長期金利の動きを見てみると、10月23日には「5.018%」まで上昇しましたが、11月28日は「4.321%」近辺まで低下しました。13%を超える下落幅となっており、金利差で買われていた米ドルが売られて、円が買われるのも当然と言っていいかもしれません。

 ただチャートで見た場合、1ドル=146円65銭まで動いた28日の大きな下げも、日足の「一目均衡表」では雲の下限で止まっており、いまだに大きなトレンドの転換とは言い切ることができない状態です。12月相場が、円高に振れるかどうかは、1ドル=145円を割り込んで下げるかどうかが1つの目安になると考えられます。

 チャートの場合、トレンド転換は日足で確認するため、日足の一目均衡表で雲を突き抜ける必要があります。また、注意したいのはドル円相場の場合、円高に振れるスピードは非常に速く、1日で3〜4円動く場合もあることは念頭に入れておきましょう。円高方向に動くときは早いことが特徴です。

――今後、円高に振れていく可能性はどれぐらいあるのでしょうか……?

 12月後半はクリスマス休暇に入ってしまうため、前半の指標が問題になると思いますが、たとえば12月8日に発表される雇用統計や12日のCPI(消費者物価指数)では大きなサプライズがないか、注目する必要があります。

 今のところ、11月の雇用統計では非農業部門雇用者数が「17万5000人増(10月は15万人増)」、失業率は前月同様に「3.9%」と予想されています。可能性は低いと思いますが、この予想が外れて大きなサプライズになれば、12月12日−13日のFOMCもまた違った展開になるかもしれません。

 FOMCで円安に振れるようなことがあれば、日銀の金融政策決定会合(12月18日−19日)でも何らかの動きがあるかもしれません。

――金利引上げが続いているユーロなどのクロス円はどうでしょうか?

 現在の為替相場ではユーロが1番強くなっている、と言っていいでしょう。ドルユーロは10月には「1ユーロ=1.0448ドル」の安値を記録しましたが、28日には「1.1009ドル」まで買われました。