【U-17日本代表 採点・寸評|スペイン戦】及第点は名和田ら3人。途中出場の高岡は見せ場を作れず厳しい評価に
[U-17W杯 ラウンド16]日本 1−2 スペイン/11月20日/Manahan Stadium
U-17日本代表は現地11月20日、インドネシアで開催されているU-17ワールドカップのラウンド16でスペインと対戦。開始8分に先制を許すも、40分に名和田我空の見事なミドルシュートで同点に追いつく。だが74分に勝ち越し弾を奪われ、1−2で敗れた。
本稿では、現地の取材記者によるチームや選手、監督の採点・寸評をお届けする。
【日本代表・総評】
採点「5.5」
「最初は固めるけど、状況によって前から行く」。森山佳郎監督は試合前から自分たちの状況を踏まえ、スペインに勝つためのプランを準備していた。
体力勝負になれば、間違いなく不利になる。中2日の連戦が続く日本は、試合が行なわれるスラカルタには前日の夕方に入った。しかも、グループステージでは最終戦まで突破が決まっていなかったため、選手のターンオーバーもほとんどできていない。
一方で、スペインは休養十分。1、2戦目は相手に退場者が出た影響で数的優位で戦っており、ウズベキスタンとの最終戦は突破が決まっていた状況で主力のほとんど休ませている。日本戦を含め、会場の移動もなし。
そうした状況を考えて、指揮官は後半勝負と目論むも、ゲームの入りでつまずいた。ポーランドとの初戦、アルゼンチンとの第2戦と同様に押し込まれ、スペインらしい素早いパス回しに翻弄された。ボールを奪えず、ジリジリと最終ラインが下がり、8分に失点。
ゲームプランは崩れたかに見えたが、粘り強い守備で我慢強く戦う。20分ほど耐えると、日本の時間が訪れる。とりわけハマったのが攻撃時の可変システムだ。左SB小杉啓太がCBにスライドし、右サイドハーフの佐藤龍之介がシャドーに入る陣形でボールを動かすと、右サイドで起点が作れるようになる。
右SBの柴田翔太郎がウイングバックのポジションに入り、佐藤との連係で深く抉るシーンが増えた。40分には佐藤のパスカットからショートカウンターを仕掛け、柴田からリターンパスを受けた佐藤がゴール前にボールを送る。マイナス方向に送ったパスをFW名和田我空が受け、技ありのシュートをねじ込んで同点に追いついた。
【動画】名和田我空の圧巻ゴラッソ!
流れは日本――。このままいけば、逆転も不可能ではない。そう思わせたが、日本の時間はここまでだった。ハーフタイム後は相手に主導権を握られ、足が止まった日本は一方的にやられる。攻め込まれ、何度もヒヤリとするシーンを作られた。
切り札のFW高岡伶颯を61分に投入したが、流れは変わらない。何とか前にボールを運んでも、足が止まった日本の選手はサポートに入れず、決定機を作れなかった。凌いでいたが、74分に一発のスルーパスから被弾した。
185センチ以上あるFW徳田誉とFW道脇豊を前線に並べ、パワープレーで勝負に出たが、前にボールが入らない。プランを遂行できなかった日本は3大会連続でラウンド16敗退。「疲弊し切ったなかで、相当頑張ったのは間違いない」と森山監督は選手たちを労ったが、またしても強豪国に力の差を見せつけられた。
【個人採点・寸評】
GK
1 後藤亘 5.5
失点シーンは防ぎようがなかったが、最後まで集中力を切らさずに対応。何度もあったピンチにも冷静に対応し、勇気ある飛び出しでクロスボールを処理。
DF
3 小杉啓太 5.5
中2日の連戦で体力的に厳しい状況でもタフに戦い、スペインのサイドアタッカーと対峙。振り切られる場面もあったが、瞬時に次善策を考えてリカバーした。
DF
4 土屋櫂大 5
前半は相手に身体をぶつけ、外されてもカバーに入って対応した。しかし、後半の半ばから著しく運動量が低下。トップスピードを出せず、相手FWに何度も振り切られる。疲労を考えれば、責められないが...。
DF
5 本多康太郎 5.5
クロスに対し、身体を投げ出して対応。ギリギリのところで足を伸ばし、間一髪でクリアする場面も。ビルドアップでは苦戦したが、何度か鋭い縦パスから攻撃の起点になった。
DF
17 柴田翔太郎 5.5
前半のパフォーマンスは称賛に値する。佐藤と連係し、推進力を発揮。クロスまで持ち込み、相手の懐に潜ってチャンスを作り出した。後半は守備に終われ、持ち前のスピードは発揮できず。
MF
6 山本丈偉 5.5(68分OUT)
中島とともにパス回しの起点になる。CBをサポートし、ボールを散らすまでは良かったが、チャレンジするプレーは数えるほど。もっとアグレッシブな姿勢で挑めていれば...。
MF
7 中島洋太朗 6(78分OUT)
球際で戦い、身体を張った守備でユニホームを汚す。攻撃でも勇気を持って前を向き、鋭いパスからチャンスを作り出した。攻守ともに示した存在感は絶大だった。
MF
10 佐藤龍之介 6
中間ポジションからプレッシャーをかけ、クレバーな守備で貢献。攻撃でも中と外を使い分け、絶妙な位置取りから好機に絡む。同点ゴールをアシストした場面もポケットを取り、正確なラストパスを通した。
MF
13 吉永夢希 5(78分OUT)
ショートカウンターの急先鋒として期待されたが、この日は不発。ボールを受けてもなかなか前に入れられず、クロスもややアバウトで相手DFに跳ね返される場面が目立った。
FW
14 名和田我空 6(68分OUT)
3試合ぶりの先発起用にゴールで応える。ボールをしっかり収めつつ、フィニッシャーの役割を全う。同点弾はコースを狙い、正確に撃ち抜いた。
FW
16 井上愛簾 5(61分OUT)
スペースがなく、持ち前のスピードを活かす場面がなかった。守備に忙殺され、前からのプレスは思うようにハマらず。早い時間帯に運動量が低下。結果を残せず、61分にピッチを去った。
交代出場
FW
11 高岡伶颯 5(61分IN)
投入直後は最前線に入り、高い位置からボールを追い回す。途中から右サイドに移ったが、強さを出す場面は限られた。良い形で受けられず、チャンスに結びつけられなかった。
MF
8 矢田龍之介 5.5(68分IN)
セカンドボールにくらいつき、懸命に足を伸ばしてボールを刈り取る。攻撃ではパスを繋いだが、無難なプレーに終始。チャレンジするパスがもっとあっても良かったのだが。
FW
9 道脇豊 5(68分IN)
パスワークで崩し、上手くゴール前に入るシーンもあった。しかし、全体的には低調なパフォーマンスでイージーなミスが散見。シュートまで持ち込めず、ストライカーとしての役割を果たせなかった。
DF
2 松本遥翔 採点なし(78分IN)
右SBで投入されたが、ファジーなプレーが目立ち、ヒヤリとするシーンを作られる。攻撃にも関与したが、あと1枚を剥がせずにボールをロストした。
FW
15 徳田誉 採点なし(78分IN)
パワープレー要因として投入されるが、不発に終わる。ポストプレーが安定せず、競り合いでも勝ちきれなかった。
監督
森山佳郎 5
選手の個性を活かし、状況を鑑みた布陣でスペインに立ち向かったが、またしても試合の入りに失敗。挽回して追いついたが、体力勝負となった後半はほとんど何もさせてもらえず。交代策も奏功せず。
取材・文●松尾祐希(フリーライター)
※採点は10点満点で「6」を及第点とし、「0.5」刻みで評価。
※出場時間が15分未満の選手は原則採点なし。
U-17日本代表は現地11月20日、インドネシアで開催されているU-17ワールドカップのラウンド16でスペインと対戦。開始8分に先制を許すも、40分に名和田我空の見事なミドルシュートで同点に追いつく。だが74分に勝ち越し弾を奪われ、1−2で敗れた。
本稿では、現地の取材記者によるチームや選手、監督の採点・寸評をお届けする。
【日本代表・総評】
採点「5.5」
「最初は固めるけど、状況によって前から行く」。森山佳郎監督は試合前から自分たちの状況を踏まえ、スペインに勝つためのプランを準備していた。
一方で、スペインは休養十分。1、2戦目は相手に退場者が出た影響で数的優位で戦っており、ウズベキスタンとの最終戦は突破が決まっていた状況で主力のほとんど休ませている。日本戦を含め、会場の移動もなし。
そうした状況を考えて、指揮官は後半勝負と目論むも、ゲームの入りでつまずいた。ポーランドとの初戦、アルゼンチンとの第2戦と同様に押し込まれ、スペインらしい素早いパス回しに翻弄された。ボールを奪えず、ジリジリと最終ラインが下がり、8分に失点。
ゲームプランは崩れたかに見えたが、粘り強い守備で我慢強く戦う。20分ほど耐えると、日本の時間が訪れる。とりわけハマったのが攻撃時の可変システムだ。左SB小杉啓太がCBにスライドし、右サイドハーフの佐藤龍之介がシャドーに入る陣形でボールを動かすと、右サイドで起点が作れるようになる。
右SBの柴田翔太郎がウイングバックのポジションに入り、佐藤との連係で深く抉るシーンが増えた。40分には佐藤のパスカットからショートカウンターを仕掛け、柴田からリターンパスを受けた佐藤がゴール前にボールを送る。マイナス方向に送ったパスをFW名和田我空が受け、技ありのシュートをねじ込んで同点に追いついた。
【動画】名和田我空の圧巻ゴラッソ!
流れは日本――。このままいけば、逆転も不可能ではない。そう思わせたが、日本の時間はここまでだった。ハーフタイム後は相手に主導権を握られ、足が止まった日本は一方的にやられる。攻め込まれ、何度もヒヤリとするシーンを作られた。
切り札のFW高岡伶颯を61分に投入したが、流れは変わらない。何とか前にボールを運んでも、足が止まった日本の選手はサポートに入れず、決定機を作れなかった。凌いでいたが、74分に一発のスルーパスから被弾した。
185センチ以上あるFW徳田誉とFW道脇豊を前線に並べ、パワープレーで勝負に出たが、前にボールが入らない。プランを遂行できなかった日本は3大会連続でラウンド16敗退。「疲弊し切ったなかで、相当頑張ったのは間違いない」と森山監督は選手たちを労ったが、またしても強豪国に力の差を見せつけられた。
【個人採点・寸評】
GK
1 後藤亘 5.5
失点シーンは防ぎようがなかったが、最後まで集中力を切らさずに対応。何度もあったピンチにも冷静に対応し、勇気ある飛び出しでクロスボールを処理。
DF
3 小杉啓太 5.5
中2日の連戦で体力的に厳しい状況でもタフに戦い、スペインのサイドアタッカーと対峙。振り切られる場面もあったが、瞬時に次善策を考えてリカバーした。
DF
4 土屋櫂大 5
前半は相手に身体をぶつけ、外されてもカバーに入って対応した。しかし、後半の半ばから著しく運動量が低下。トップスピードを出せず、相手FWに何度も振り切られる。疲労を考えれば、責められないが...。
DF
5 本多康太郎 5.5
クロスに対し、身体を投げ出して対応。ギリギリのところで足を伸ばし、間一髪でクリアする場面も。ビルドアップでは苦戦したが、何度か鋭い縦パスから攻撃の起点になった。
DF
17 柴田翔太郎 5.5
前半のパフォーマンスは称賛に値する。佐藤と連係し、推進力を発揮。クロスまで持ち込み、相手の懐に潜ってチャンスを作り出した。後半は守備に終われ、持ち前のスピードは発揮できず。
MF
6 山本丈偉 5.5(68分OUT)
中島とともにパス回しの起点になる。CBをサポートし、ボールを散らすまでは良かったが、チャレンジするプレーは数えるほど。もっとアグレッシブな姿勢で挑めていれば...。
MF
7 中島洋太朗 6(78分OUT)
球際で戦い、身体を張った守備でユニホームを汚す。攻撃でも勇気を持って前を向き、鋭いパスからチャンスを作り出した。攻守ともに示した存在感は絶大だった。
MF
10 佐藤龍之介 6
中間ポジションからプレッシャーをかけ、クレバーな守備で貢献。攻撃でも中と外を使い分け、絶妙な位置取りから好機に絡む。同点ゴールをアシストした場面もポケットを取り、正確なラストパスを通した。
MF
13 吉永夢希 5(78分OUT)
ショートカウンターの急先鋒として期待されたが、この日は不発。ボールを受けてもなかなか前に入れられず、クロスもややアバウトで相手DFに跳ね返される場面が目立った。
FW
14 名和田我空 6(68分OUT)
3試合ぶりの先発起用にゴールで応える。ボールをしっかり収めつつ、フィニッシャーの役割を全う。同点弾はコースを狙い、正確に撃ち抜いた。
FW
16 井上愛簾 5(61分OUT)
スペースがなく、持ち前のスピードを活かす場面がなかった。守備に忙殺され、前からのプレスは思うようにハマらず。早い時間帯に運動量が低下。結果を残せず、61分にピッチを去った。
交代出場
FW
11 高岡伶颯 5(61分IN)
投入直後は最前線に入り、高い位置からボールを追い回す。途中から右サイドに移ったが、強さを出す場面は限られた。良い形で受けられず、チャンスに結びつけられなかった。
MF
8 矢田龍之介 5.5(68分IN)
セカンドボールにくらいつき、懸命に足を伸ばしてボールを刈り取る。攻撃ではパスを繋いだが、無難なプレーに終始。チャレンジするパスがもっとあっても良かったのだが。
FW
9 道脇豊 5(68分IN)
パスワークで崩し、上手くゴール前に入るシーンもあった。しかし、全体的には低調なパフォーマンスでイージーなミスが散見。シュートまで持ち込めず、ストライカーとしての役割を果たせなかった。
DF
2 松本遥翔 採点なし(78分IN)
右SBで投入されたが、ファジーなプレーが目立ち、ヒヤリとするシーンを作られる。攻撃にも関与したが、あと1枚を剥がせずにボールをロストした。
FW
15 徳田誉 採点なし(78分IN)
パワープレー要因として投入されるが、不発に終わる。ポストプレーが安定せず、競り合いでも勝ちきれなかった。
監督
森山佳郎 5
選手の個性を活かし、状況を鑑みた布陣でスペインに立ち向かったが、またしても試合の入りに失敗。挽回して追いついたが、体力勝負となった後半はほとんど何もさせてもらえず。交代策も奏功せず。
取材・文●松尾祐希(フリーライター)
※採点は10点満点で「6」を及第点とし、「0.5」刻みで評価。
※出場時間が15分未満の選手は原則採点なし。