交通機関の乗務員不足は鉄道も例外ではありません。岡山の路面電車は乗務員不足から減便ダイヤでの運行を余儀なくされています。ただ、補充ができたとしても、減便ダイヤをすぐには解消できそうにない鉄道特有の事情もあります。

電車も深刻な採用難 間口広げて説明会

 岡山市内の路面電車を運行する岡山電気軌道が運転士採用のため、2023年11月に電車運転体験付きの採用説明会を行います。路面電車全国23局社(日本交通計画協会調べ)の中で「運転体験を実施しながら説明会を行うのは初めて」と、同社は話します。背景には深刻な担い手不足。新たな試みによる予定人員の補充で、早期にコロナ禍前の運転間隔に戻したいと、同社は応募に期待します。


岡電の超低床電車、9200形「MOMO」(画像:写真AC)。

 岡山電気軌道は、JR岡山駅を起点に岡山市内2路線の路面電車と同市内の路線バスなどを運行する会社です。今回の会社説明会は、「岡電」として親しまれる路面電車の運転士を募集するためです。通常、運転は採用後しかできないのですが、採用前に電車を運転できれば、より応募に自信を深めることができます。

 公道での路面電車の運転には免許が必要なので、運転体験は本線ではない構内での体験です。同社はコロナ禍中に運転体験を一般募集したことがあり、例年、小学生向けの体験も行っているため、採用説明会での運転体験を実施することに困難はありませんでした。

 とはいえ、発案当初は運転を希望するだけの応募が増えることを心配する社内の声もありました。それでも岡電を傘下にもつ両備グループ広報部担当者は「とにかく幅広く、多くの人に応募の間口を広げることが先決」と、初めての試みについて話しました。

 路面電車でも運転士不足は深刻です。コロナ禍で減便を重ねて、同社のダイヤは平均8分間隔の運行です。コロナ禍前までは5分間隔で運行していました。

「路面電車の運転士は欠員の補充だけで、採用説明会を実施したことはなかった。常に約5倍ほどの希望があった。しかし、働き方も変わって、運送業は異業種に人材をとられている。高校生の新卒採用も足りない状態。今回の採用説明会で予定人員を確保し、コロナ禍前のダイヤに近づけたい」(前同)

「年齢高めでもチャンスあり」な理由

 同社の募集職種は路面電車の運転士。経験、未経験を問わずで、応募条件は20〜60歳と広いです。公募での年齢幅は、実際の採用と食い違っている場合もあるのですが、健康で意欲があり、適正があれば、60歳の採用も可能だと話します。前述の広報担当者が話します。

「多くの乗客の安全を担う責任の重さはあります。ただ、路面電車の運転には後退(バック)がありません。また、自動車は右折時を除き軌道内進入禁止です。自動車運転より運転で注意すべきことが限定されるので負担は軽いと思います」

 路面電車の運転には「乙種電気車運転免許」が必要です。実技の運転試験には、国土交通省の試験官が本線上で同乗して採点。適正を見極めます。国家資格なので、乙種の免許所持者は、全国の路面電車の運転が可能です。ただ、試験は9月と3月の年2回のみ。通年で試験が受けられる自動車系の免許と違って、よりタイミングが重要になります。

 鉄道事業者は免許を持たない研修生に対して、研修、免許取得、独り立ちまで約1年間をかけて育成しますが、この育成にも岡山電気軌道は力を入れています。

「中には免許取得に苦労する人もいますが、当社の合格率は100%。教育体制には自信を持っています」(前同)

 採用説明会は11月19日と11月23日の2日間。現在、参加者を募集中。岡山電気軌道のウェブサイト申込フォームに必要事項を記入し、岡山県中区の同社本社へ。