冬が美味「ロールキャベツ」家で手間かけず作る技
冬キャベツを使ったおいしい「ロールキャベツ」の作り方を伝授します
料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は、これから旬を迎える冬キャベツを使った「ロールキャベツ」です。
切った鶏もも肉をキャベツで包んで蒸し煮に
スーパーの野菜売り場に冬キャベツが並ぶ季節です。今日はキャベツ料理の定番、ロールキャベツを作っていきます。
とはいえ、ご紹介するレシピはおなじみの洋食スタイルではなく、切った鶏もも肉をキャベツで包んで蒸し煮にするだけのシンプルスタイル。マスタードを添えると深い味わいの料理に仕上がります。
鶏肉のロールキャベツの材料
鶏もも肉 300g程度
キャベツ 大きめの葉4枚
塩 小さじ1/2
ローリエ 2枚(あれば)
黒こしょう 適量
ディジョンマスタード 適量(あれば)
材料は極めてシンプル。キャベツで肉や魚を巻く手法は各国の料理で見られます。日本では挽肉が定番ですが、じつはサーモンや鶏肉などを包んでもいいのです。
残ったキャベツはラップで包んで冷蔵庫で保存してください
鶏もも肉は4等分に切り、両面に肉の重量の1%の塩(分量外)を振ります。このときの塩には下味だけではない働きがあります。
塩をふると肉に含まれる塩溶性タンパク質が溶けます。このとき、溶けたタンパク質が周りの水分を抱え込みます。少量のタンパク質がそれよりも多くの水分を抱え込む現象をゲル化と言いますが、ゼリー状になった肉汁が内側にとどまるので、ジューシーに仕上がるのです。
塩の量は肉の重さにあわせて調整しましょう
塩が浸透するには時間がかかるので15分置きます。そのあいだにキャベツの下準備です。キャベツは芯を取り除きます。
キャベツを買ってきたらすぐに芯を取り除くと、鮮度が保てます
キャベツの葉を破かないように注意して、一枚一枚剥がします。
外側の大きい葉を使います
箸でときどき、裏返しながら熱湯で2分ゆでます。
鍋が小さい場合は何回かに分けてゆでるといいでしょう
冷たい水に移して、冷まします。あまり長くゆですぎるとやわらかくなりすぎて、肉を包むときに破けてしまうので注意。
わざわざ氷水を準備しなくても水道水で大丈夫です
さて、いよいよ肉を包んでいきます。その前に硬い芯の部分を削いでおきます。
芯をとりのぞかずに肉たたきで潰してやわらかくしてもいいでしょう
肉を中心に置き、手前からキャベツを巻き込みます。一周したら片側の葉を内側に折込み、さらに巻きます。
キャベツの水気はよくふきとっておきましょう
残りの葉を指で中心に押し込んだら包み終わりです。
ロールキャベツの基本的な包み方です
なるべくぴったりの大きさに収まる鍋に並べ、余ったキャベツの葉や芯があれば隙間を埋めておきます。
すきまなく並べます
こうすることでキャベツが動かなくなり、ロールキャベツがほどける失敗が防げます。このとき、小さく切ったじゃがいもやニンジン、セロリなどを一緒に煮込んでもいいでしょう。
水200mlを注ぎます。このあと、ふたをして蒸し煮にしていきますが、この調理法をフランス語でブレゼと呼びます。ブレゼに使う水分の量は少なめが基本です。かぶるほどの量の液体で煮込むと味が逃げてしまいます。
顆粒のチキンブイヨンなどを加えなくても鶏から味が出ます
あれば、ローリエを2枚加えます。ローリエを入れると肉のくさみが抑えられ、フランス料理らしい味わいになります。
ここで香草のタイムを加えるとプロっぽい仕上がりに
中火にかけて、沸騰してきたら弱火に落とし、20分間煮込みます。沸いてきたら火はなるべく弱火にしてください。火が強すぎると水分がなくなり、焦げつくリスクがあります。
ふたができる鍋がなければアルミホイルや皿で代用してください
出来上がり。盛り付けましょう。
スプーンで煮汁をキャベツにかけるとツヤが出ておいしそうに見えます
ディジョンマスタード、塩、黒こしょうを添えて提供します。ワインによくあうフランス料理です。マスタードがソース代わりですが、なければケチャップでもかまいません。煮汁はスープとして楽しめますし、生クリームやトマトソースを加えてソースに仕立てることもできます。
シンプルながらキャベツの風味が肉の味を引き立てる性質がよく理解できると思います。仕込んでおけば煮込むだけなのでぜひお試しください。
キャベツの甘さと鶏肉のうま味が溶け込んだ煮汁も絶品です
(写真はすべて筆者撮影)
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(樋口 直哉 : 作家・料理家)