ホテルニューオータニ東京のモーニングビュッフェ「新・最強の朝食」6500円。サービス料を含めると7475円です(筆者撮影)

喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。

そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第50回となる記念すべき今回、訪れたのは「ホテルニューオータニ(東京)」です。

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ファストフードに牛丼チェーンにファミリーレストラン。カフェに焼肉に立ち食い蕎麦にドーナツショップ。飲食チェーンが密かにしのぎを削っているジャンル、それが朝メニュー、いわゆる「モーニング」です。

「チェーン店最強のモーニングを探して」と題して連載してきた当コラムですが、ついにめでたく50回を迎えました。なるべく身近だったり、お得だったりするモーニングメニューを紹介してきましたが、今回は50回を記念して、ちょっと贅沢に老舗ホテルチェーン「ホテルニューオータニ」のモーニングをご紹介します。なんとその名も「新・最強の朝食」です。

ホテルニューオータニのモーニング「新・最強の朝食


ホテルニューオータニ東京でモーニングビュッフェを提供しているのは3店舗。「新・最強の朝食」はSATSUKIのみの提供です(筆者撮影)

今回訪れたのは東京都千代田区にある「ホテルニューオータニ(東京)」のレストラン「SATSUKI(サツキ)」です。「帝国ホテル」「ホテルオークラ」と共に御三家と称される老舗ホテルで、東京オリンピックが開催された1964年に開業しました。

「ニューオータニ」の名を冠する系列ホテルは14ありますが、朝食メニューを「新・最強の朝食」と銘打っているのは東京のみです。


看板メニューが並ぶ「新・最強の朝食」の店頭ポスター(筆者撮影)

実施時間は午前7時から10時まで。価格は税込6500円(宿泊の場合は税込5800円)ですが、サービス料がかかるため、7475円を支払いました。ホテルのホームページからは2名からしか予約ができませんが、予約なしなら1名でも入店可能です。

「新・最強の朝食」のキャッチコピーは「“健康”と“発酵”をテーマにした究極の朝食ビュッフェ!」。ビーフステーキや、いくらなどの高級食材を筆頭に、卵料理だけでも10種以上取り揃える、合計150品以上(食べ物・飲み物をカウント、調味料は除外)の圧倒的なボリュームを誇る、バイキング形式の朝食メニューです。

まずは目で楽しむ、美しい朝食ビュッフェ


上はハム・チーズなどのブース、下は卵料理のブース(筆者撮影)


上はウインナーとベーコンのブース、下は中華・点心のブース(筆者撮影)

多分誰もが「SATSUKI」に入店してすぐに、「これは全部食べるのは無理だ」ということに気が付くでしょう。通常のビュッフェのように、空のお皿を持ってレーンのはじっこから順番に盛り付けをはじめると、食べたいものにたどり着く前にお皿はオーバーフローしてしまいます。


上はサラダのブース、下はフルーツのブース(筆者撮影)


ステーキは波型プレートに少量ずつ追加されるため、焼きたてアツアツを取り分けられる(筆者撮影)

まずは手ぶらで店内をぐるっと見回り、どんなものがあるのかをチェック。看板メニューがどれかを見極めます。「ピエール・エルメ・パリ」のヴィエノワズリー(直訳するとウィーン風という意味で、高級菓子パンの総称だそう)や、ステーキ、いくら、オーダーしてからシェフが調理してくれるオムレツなどが目玉のようです。

朝食の定番・納豆ですら最強


和食のおかずブース(筆者撮影)


上は洋食おかずのブース、下はうどんブース(筆者撮影)

朝食の定番である納豆ですら、​​国産大粒大豆を日本名水百選に選ばれた栃木県佐野市の水で職人が手作りで仕上げたという、ホテルニューオータニオリジナル納豆というこだわりぶり。

ずらりと並んだメニューのひとつひとつが「最強の朝食」の名に違わぬ、一級品が取り揃えられているのです。


上はピエール・エルメ・パリのヴィエノワズリーブース、下は食パンとマフィンのブース(筆者撮影)

ディスプレイの美しさも最強


メインのパンブース。パン屋さん顔負けの品揃えです(筆者撮影)

ブースごとのディスプレイも美しく、眺めるだけでも目がおいしい。ビュッフェは食べることと同じぐらいに選ぶことが醍醐味だと思うのです。

「全部ちょっとずつ食べたい」という気持ちと、「原価が高そうなものを中心に食べたい」という気持ちがせめぎ合い、ワクワクが止まりません。


デザートのブース。生クリームなどを使用したショートケーキなどはありませんでした(筆者撮影)


上はドリンクブース、下はグラノーラのブース(筆者撮影)


上は白ごはんのお供、下はヨーグルト3種と、アイスクリーム2種(筆者撮影)

個人的には、菅義偉前総理の大好物としてニュースでも大々的に取り上げらパンケーキも必ず食べたいところ。飲み物だけでも20種類、パン系のメニューが20種類以上、よりどりみどりで嬉しい悲鳴をあげました。

「新・最強の朝食」から厳選した「真・最強の朝食」がこちら

今回筆者は、150品以上のメニューから厳選した、40種類弱を食べることができました。


左の皿はステーキ、生ハム、スモークサーモン、かぐら南蛮テリーヌ、チキンポロナ、クロワッサン サティーヌ、トリュフスクランブルエッグ、チーズ、サラダ、右の皿はパンケーキ、パンプディング、フレンチトースト、新edoくず餅ゼリー、フルーツ、カップには紅茶(筆者撮影)


いくらとごはんとJシリアル米(筆者撮影)


バナナマフィンとシリアル黒豆マフィン(筆者撮影)


マロンジェラートとホットコーヒー(筆者撮影)


グレープフルーツジュース、デ・ジャルダン・ド・ピエール(紅茶ベースにジャスミン、スミレなどを加えたブレンドティー)、柚麹ドリンク(筆者撮影)

豪華で優雅な朝食

ミール
・モーニングステーキ
・生ハム
・スモークサーモン
・かぐら南蛮テリーヌ
・チキンポロナ
・クロワッサン サティーヌ(ピエール・エルメ・パリのヴィエノワズリー)
・トリュフスクランブルエッグ
・カマンベールチーズ
・シェーブルチーズ
・クリームチーズ
・ブルーチーズ
・サラダ(ハーブミックス、紅芯大根、赤オニオン、チェリートマト、きゅうり、マンゴー、オリーブ)
・ごはん
・Jシリアル米
・いくら

デザート
・パンケーキ
・パンプディング
・フレンチトースト
・新edoくず餅ゼリー
・フルーツ(メロン、洋梨、柿、パイナップル、ブドウ、グレープフルーツ)
・バナナマフィン
・シリアル黒豆マフィン
・マロンジェラート

ドリンク
・紅茶
・コーヒー
・デ・ジャルダン・ド・ピエール(ピエール・エルメ・パリ)
・柚麹ドリンク
・グレープフルーツジュース


モーニングステーキに、たっぷりのおろしポン酢を載せていただきます(筆者撮影)

さっぱり食べるモーニングステーキ

まず絶対にはずせないと思っていた、ビーフステーキからスタート。ケチくさい話ですが7000円台の高級モーニングをいただくからには、なるべく元を取りたい。最も原価が高いと判断したのがステーキといくらでした。

しかも、いくらは豊洲市場そばのホテル「ラビスタ東京ベイ」のモーニングビュッフェでも食べたことがあるのですが、朝のステーキは未体験です。

「たくさんの種類をちょっとずつ……」なんて、自分で自分に言い聞かせてみたものの、レアに焼き上げられたステーキは、見るからにおいしそうで、どうにも我慢できず、こんもり目視で150gぐらいはサーブしてしまったのですが、オンザおろしポン酢で、ぺろっと食べ切れました。


絶妙なレアの焼き加減で、赤身肉のしっとりした食感がたまりません(筆者撮影)

食べてみると、赤身肉でさっぱりとして、牛肉そのもののおいしさが口中に広がります。霜降り肉とは違う、サシの少ない肉ならではの歯ごたえのいいお肉は、朝にぴったりです。

噛み締めるごとに旨味が口の中に広がり、体が目覚める感じ。ここぞとばかりに豪快に2切れまとめて頬張ると、「嗚呼……これぞ最強」。口の中がステーキで占拠され、肉の味がさらにしっかりとわかります。


メノウのような鮮やかな朱色が美しいいくら醤油漬け。昔ながらの製法で調理されています(筆者撮影)

こだわりコシヒカリにオンザいくら

ありがたかったのがごはんブースです。今まではモーニングビュッフェを利用した際に、台の上にお米がこぼれて見た目が微妙な状態に出くわしたり、しゃもじにお米がこびりついていたりしていて、モヤっとした気分になった方も多いのではないでしょうか。

「新・最強の朝食」では、それがありません。専属のプロがふんわりとお茶碗にごはんをよそってくれるのです。ごはんブースはピカピカで、米一粒すら落ちていませんでした。


白ごはんオンザいくら。白米の甘みがいくらの旨味をひきたてます(筆者撮影)

いくらは小粒で調味液は少なめで、実食部分が多めの贅沢バージョンです。ごはんに載せるとねっとりした粘り気があり、食べるとプチプチと旨味がはじけてから、舌の上でとろけます。臭みもなく塩味は控えめで、酒が強すぎたり醤油が辛すぎたりしません。いくらに伴走するような過不足ない味付けで、素材のもつおいしさが引き立ちます。

新潟県産有機栽培米コシヒカリを、観音温泉水で炊いたという、白米にいくら1対1ぐらいの、贅沢な比率で食べました。食べる前は「塩辛いかな?」と心配でしたが、スーパーで買う瓶詰めのいくらよりも塩気が少ないので、全然いけます。弾力と甘みのある粒立ちの良いコシヒカリとのバランスはもはや最強でした。

「SATSUKI」のモーニングビュッフェは、最強と自負しているだけあり、口に入るすべての食材が、どれもとびきりおいしい素材を厳選してあります。サラダやフルーツのそばには加湿器がセットされ、おいしい状態で食べられるよう、配慮も怠りません。


ピエール・エルメ・パリのクロワッサン サティーヌ。中にコンポートとチーズケーキが入った繊細な菓子パンです(筆者撮影)

すべてにおいて隙なし手抜きなし

「ピエール・エルメ・パリ」のヴィエノワズリー、クロワッサン サティーヌは中にフルーツのコンポート(りんごかと思いましたが断定できず)と細かく砕いたチーズケーキが入っている、なんともリッチな菓子パンでした。

サクサクしたクロワッサンと、シャリっとした甘酸っぱいグレーズドコーティング、さらにコンポートからはフルーティーな香りがプラスされ、チーズケーキの旨味まで加わって、「食感の組み合わせの妙とはこのことか!」という、驚きと発見のある味でした。朝からこんなに凝った菓子パンを食べたのは初めてです。


トリュフスクランブルエッグはシルキーな食感でリッチな味わいでした(筆者撮影)

卵料理はトリュフスクランブルエッグをセレクト。トリュフオイルの​​高級感溢れる強い香りと、濃厚な卵の味わいのコントラスト、しっとりサラサラと絹のような舌触りは、なんともおしゃれな味わいです。小さなガラスのココットに入った愛らしい見た目も相まって、気分のあがる一品でした。

デザートブースには、メロンや、ブドウ、柿に洋梨など高級フルーツが並びます。どれも糖度も高く味も抜群でしたが、特にメロンは、大きくカットされた果肉からは果汁が滴り落ち、フルーツパーラーで食べるようなジューシーさです。ほかにも、口にしたものすべてがおいしく、すべてにこだわりとストーリーを感じさせる、手抜き知らずのモーニングビュッフェでした。


果汁が滴る厚切りメロン(筆者撮影)

利用客はワールドワイド、男性と老夫婦が中心

「SATSUKI」の店内は広々として、200席ほどがゆったりと配置されています。ツヤツヤの飴色の木目と大理石を基調としたインテリアに、オレンジ色の優しいライトで、落ち着いた大人の店という印象を持ちました。

利用者は経費で宿泊しているであろうビジネスマンか、老夫婦がほとんど。ポツポツと女性の団体客がいるものの、女性の1人客はほとんどいません。またインバウンドと思しき、外国人の利用者も多めで、私の右隣は英語を話す中年男性、左隣はフランス語で会話するシニア夫婦でした。


>27 エントランスには生花がディスプレイされていました(筆者撮影)⇒写真ナンバー26

この日一番衝撃的だったのは、パンと目玉焼きとベーコンにサラダという、普通の朝食を食べている人が結構いたことです。「原価の高いものを食べなきゃ」とか「看板商品を全部食べるぞ」とか、煩悩と雑念にまみれて食べまくる筆者とは対照的に、「特別なメニューがたくさんあっても、あえて普通の朝食を選ぶ」、これぞ究極の贅沢なのかもしれないと感じた朝なのでした。

編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。
編集部注その2:今回は連載50回記念の、特別編です。担当編集も羨ましい気持ちになったこともあり、次週以降は連載の原点に立ち返り、200円台〜1000円程度のモーニングをご紹介していきます。


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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)