ステランティスが出資を決めた零跑汽車は、中国の新興EVメーカーのなかでは2番手グループの1社だ。写真は零跑汽車の工場(同社ウェブサイトより)

ヨーロッパ自動車大手のステランティスが、中国の新興EV(電気自動車)メーカー、零跑汽車(リープモーター、正式社名は零跑科技)の株式の約20%を取得することがわかった。投資総額は15億ユーロ(約2380億円)。10月26日、両社が共同で資本提携の合意を発表した。

零跑汽車は中国の数あるEVスタートアップの1社で、2022年の販売台数は11万1000台。中国の自動車業界で「造車新勢力」と呼ばれる新興メーカーのなかでは第6位につけている。

ステランティスは、欧米の複数の自動車大手が合併して2021年に発足。傘下にはフランスのプジョー、シトロエン、イタリアのフィアット、アメリカのクライスラーなどのブランドが名を連ねる。2022年のグローバル販売台数は634万台と、世界の主要メーカーのなかで第5位だった。

零跑汽車の増資を引き受け

零跑汽車は香港証券取引所に株式を上場している。同社の説明によれば、ステランティスは零跑汽車が(第三者割当増資により)新規発行する1億9400万株の株式を1株当たり43.8香港ドル(約840円)で買い取る。これは増資完了後の発行済株式の14.5%に相当する。

この増資を通じて獲得する85億1000万香港ドル(約1631億円)を、零跑汽車は研究開発、マーケティング、生産能力増強、会社の運転資金などにつぎ込む計画だ。

ステランティスはさらに、既存株主からも株式を買い取る。中国のIT機器大手、大華技術(ダーファ・テクノロジー)の10月26日付の情報開示によれば、同社は保有する零跑汽車の株式9000万株のすべてを、総額34億9000万香港ドル(約669億円)でステランティスに譲渡する。前述の増資完了後の発行済株式に占める比率は6.7%だ。


ステランティスは零跑汽車のリソースを活用し、EVシフトを加速する。写真は提携式典で握手するステランティスのタバレスCEO(左)と零跑汽車の朱江明CEO(ステランティスのウェブサイトより)

今回の資本提携と同時に、ステランティスと零跑汽車は(中国市場以外の)海外業務を手掛ける合弁会社を設立することに合意した。新会社の名称は「零跑国際(リープモーター・インターナショナル)」で、ステランティスが51%、零跑汽車が49%を出資する。

零跑国際の経営トップはステランティス側が指名する。そのうえで、零跑汽車は合弁会社に対して中国大陸、香港、マカオ、台湾を除くグローバル市場における同社製品の独占的な製造販売権を付与する。

協業はヨーロッパ市場から

ステランティスの説明によれば、両社の協業はまずヨーロッパ市場から開始する。零跑汽車が持つ(EV開発のノウハウや部品調達のサプライチェーンなどの)優位性を活用し、ステランティスは2030年までにヨーロッパ市場で販売する乗用車をすべてEVにする戦略目標の達成をもくろむ。アメリカ市場で販売するクルマも、同時期までに半分をEVにする計画だ。


本記事は「財新」の提供記事です

合弁会社は2024年後半から輸出を開始し、同年末までに(海外市場で)2万1000台を販売する目標を掲げた。さらに、2030年には(海外工場での)現地生産と(中国からの)輸出の合計で43万6000台の販売を目指すとしている。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は10月26日

(財新 Biz&Tech)