Android 14は、カスタマイズの自由度が広がったのが大きな特徴。写真左は生成AIによる壁紙作成、右はロック画面の設定画面(筆者撮影)

グーグル純正スマホのPixel 8/8 Proが発売されたのに伴い、OSも最新バージョンとなる「Android 14」の配信が始まっている。

グーグル以外のメーカーは、自身でAndroidにカスタマイズを加えたあとアップデートを配信するため、Pixelより時期は遅くなってしまっていたが、今後、これらの端末の一部もAndroid 14に対応していく。大手キャリアは、アップデートの予定がある端末のリストを公開しているため、自身の利用するモデルが対応しているかどうかは確認しておいたほうがいいだろう。

カスタマイズできる設定項目が増えた

Android 14最大の特徴は、ユーザー自身でカスタマイズできる設定項目をこれまで以上に増やしたところにある。

Pixel 8/8 Proでは「生成AI」を使い、キーワード入力だけで壁紙を自ら生み出せる新機能に対応したが、それ以外にも、ロック画面やホーム画面でカスタマイズできる部分が増えている。また、視覚や聴覚などに何らかの障害があるユーザーの利便性を高める機能にも対応した。その一部は、通常の設定として導入されており、幅広いユーザーが利用できる。

ほかにも、デュアルSIM利用時の設定が増えるなど、かゆいところに手が届くようなアップデートになっている。大きなユーザーインターフェース(UI)の変更や、新機能の追加はないものの、細かな改善を多く積み重ねている印象だ。

ここでは、先行してアップデートが配信されたPixelシリーズを元に、Android 14でお勧めの便利機能やその設定方法などを解説していく。

Android 14は、ホーム画面やロック画面など、ユーザーがカスタマイズできる項目が増えている。Pixel 8/8 Proで利用可能になった生成AIによる壁紙の自動作成は、その一例と言えるだろう。よりパーソナライズができるようになり、自分のスマホとして愛着がわくはずだ。カテゴリーを選び、言葉を入力していくだけで、ほかの人とは違う壁紙を作ることが可能。写真などを撮ったりダウンロードしたりする必要がなく、手軽に自分の色を出せる。

ロック画面からの機能呼び出しがスムーズに

単にデザインだけでなく、機能のカスタマイズも可能になり、利便性も向上している。特に、ロック画面で設定できる項目が増え、一部の機能にアクセスしやすくなっている。ショートカットの変更がそれだ。Android 13以前にもショートカットはあったが、呼び出せる機能がGoogle HomeやGoogleウォレットに固定されていた。この変更が可能になる。

Android 14を搭載したPixelの場合、ホーム画面で壁紙を長押しして、「壁紙とスタイル」を選択する。次に、「ロック画面」のタブをタップしてから、画面をスクロールさせると、「ショートカット」が現れる。ここをタップすれば、画面下の左右に配置されているショートカットを入れ替えることができる。カメラやサイレントモード、ライトなどを選択可能。よく使う機能にしておけば、アクセスがスムーズになる。


ロック画面の下部に配置されていたショートカットを、変更できるようになった(筆者撮影)

同様に、Android 14ではロック画面に表示される時計や日時を簡単に変更できるようになった。デザインを選択でき、好みを反映できるだけでなく、フォントが大きなものを選べば視認性もアップする。時計には、気温を表示できるものもあるため、充電時や机の上に置いた際にチラ見で情報をチェックしたい人にはいい機能と言えるだろう。

ただし、ショートカットとして選択できる機能は限定的だ。グーグル以外のメーカーは、独自にOSをカスタマイズすることで、Android 13以前で近い機能を実装している。

例えば、サムスン電子のGalaxyシリーズは、その1つ。こちらもロック画面の左下に2つのショートカットがあるが、Android 14が適用されていない状態でもアイコンの入れ替えが可能。しかも、自らインストールしたアプリを設定し、ロック画面からダイレクトに呼び出すことまでできる。

また、時計のカスタマイズを実装しているメーカーのAndroidスマホも多い。OSのバージョンは1つ前だが、メーカーの独自カスタマイズで機能的には進んでいる事例と言えるだろう。

一方で、カスタマイズをあまりしないメーカーの端末にも同じ機能が広がるのは、OSレベルで対応するメリット。特に、日本でシェアを伸ばしているPixelで利用できるようになる点で、価値のあるアップデートと言えそうだ。

通知に気づきやすくなる「点滅」

Android 14では、アクセシビリティ関連の機能も強化されている。アクセシビリティとは、「使いやすさ」や「利用しやすさ」といった意味の英語で、スマホの場合、高齢者や障害者が、より利用しやすくなるための設定を指すことが多い。例えば、フォントを大きくして視力が低い人でも文字を読みやすくしたり、画面の文字を読み上げたりといった機能が、これにあたる。

使い勝手の向上を図る機能のため、万人受けするようなものもある。

Android 14で対応した、「点滅による通知」もその1つと言えるだろう。この機能は、カメラのフラッシュライトや、画面の点滅によって通知が届いていることをわかりやすくするためのもの。光でお知らせしてくれるため、音が聞こえづらいシチュエーションでも、通知に気づきやすいのがメリットだ。

また、いくらディスプレーに通知が表示されていても、端末を裏返しに置いていたら、気づくことが難しくなる。フラッシュライトの点滅なら、背面カメラ側が点灯するため、その問題もなくなる。通知を見逃したくない人は、カメラか画面の点滅のどちらかを設定しておいてもいいだろう。


「点滅による通知」はAndroid 14の新機能。フラッシュライトや画面が光り、通知に気づきやすくなる(筆者撮影)

「点滅による通知」の設定は、「設定」の「ユーザー補助」で「点滅による通知」を選択すると設定できる。ただし、「点滅による通知」の項目は「ユーザー補助」の下のほうにあり、少々見つけづらい。

この機能は、「設定」の「通知」からもアクセス可能。ここから「点滅による通知」を選択しても、同じ画面を開くことができる。アクセシビリティの一環ではあるが、万人向けの機能と言えるのはそのためだ。

ほかにも、例えばフォントサイズの変更を通知の上にある「クイック設定」から呼び出し、設定を開かずに操作できるようになった。

普段は通常のフォントサイズで使いつつ、細かな文字がビシッと並んだサイトを読むようなときだけ文字を拡大するといった際に、操作が簡単になる。視力の低い人が、寝起きなどに裸眼でスマホをチェックするようなとき、一時的に文字を拡大するのにも便利。Android 14ならではの機能として覚えておきたい。

カスタマイズの多様化やアクセシビリティの利便性向上はAndroid 14の大きなテーマだが、そのほかにも、さまざまな改善が施されている。

デュアルSIM利用時の新機能も、その1つだ。2つのSIMカードを挿していると、電話とSMSの同時待ち受けはできるが、データ通信ができるのはどちらか一方。通常、よく使う回線に固定していることが多く、電波状況が悪くてつながりづらいときや、通信品質が劣化していて速度が出づらいときに切り替えて利用する。

デュアルSIM時に便利な自動切り替え

通常、これは手動で設定しなければならず、端末によっては少々面倒だ。Pixelシリーズの場合、「設定」を開き、「ネットワークとインターネット」をタップしてから、「SIM」を選択。次の画面でデータ通信したいほうの回線を選び、さらにその中で「モバイルデータ」のスイッチをオンにすると、オンになったほうの回線のデータ通信が有効になる。機種によってはクイック設定で簡単に変更できるカスタマイズをしてあるものもあるが、標準のAndroidは階層が深くて切り替えづらい。


データ通信するSIMカードの自動切り替えに対応した(筆者撮影)

このようなときに便利なのが、Android 14で搭載された自動切り替え機能だ。設定手順は次のとおり。

上記と同じ手順で、データ通信“していないほう”の回線を開く。すると、「モバイルデータ」の下に「モバイルデータに自動的に切り替えます」という設定項目が追加されている。ここをオンにすると、普段使っていない回線のほうが安定しているときに、自動でデータ通信する回線を切り替えてくれるようになる。

同様の設定を備えている端末はほかにもあるが、OS標準として取り入れられたのはAndroid 14からだ。ただし、この設定を有効にしていると、意図せず予備回線のほうで通信してしまうことがある。

どちらも同じような料金プランを契約しているならいいが、もしものときに備え、データ容量が少ない料金プランや、使っているデータ容量に応じて料金が上がっていく料金プランにしている際には、注意が必要。意図せずデータ容量を使い切ってしまったり、料金が上がってしまう可能性もあるからだ。心配がある人は、自動設定は解除しておくようにしたい。

ほかにも、電話の着信音量と通知の音量を分けて変更できるようになったり、バッテリーを節約するための「バッテリーセイバー」のユーザーインターフェースや一部機能が見直され、より設定がしやすくなったりと、細かく使い勝手が向上している。Pixelユーザーにはうれしい改善と言えるだろう。他のメーカーもアップデートに伴い、独自機能に磨きをかけてくる可能性があるため、そのときを期待したい。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)