広汽三菱は中国市場の急速なEVシフトについていけず、操業停止に追い込まれた(写真は同社ウェブサイトより)

日本の三菱自動車工業と、中国の国有自動車大手、広州汽車集団(広汽集団)との合弁会社である広汽三菱汽車の、操業停止後の処理策が明らかになった。

10月24日、広汽集団が処理策の概要を発表した。それによれば、三菱自など日本側出資者が保有していた広汽三菱の株式50%を、広汽集団が1元(約20円)で取得。そのうえで、広汽三菱の工場・生産設備を広汽集団傘下のEV(電気自動車)メーカーの広汽埃安新能源汽車(広汽アイオン)に供与する。

合弁会社は約290億円の債務超過

広汽三菱は2012年5月に設立され、広汽集団が50%、三菱自が30%、三菱商事が20%を出資していた。近年はEVシフトへの対応が遅れ、販売台数が低迷。2023年6月に操業を停止し、人員整理を余儀なくされた。

2023年3月末時点で、広汽三菱の総資産は41億9800万元(約860億円)だったのに対し、総負債は56億1300万元(約1150億円)に上り、差し引き14億1500万元(約290億円)の債務超過に陥っていた。

(訳注:広汽三菱の操業停止までの経緯は『三菱自の中国合弁が「操業停止」人員整理に着手』を参照)

広汽三菱の損失を処理するため、株主3社は増資引き受けを通じて原資を注入。債務超過を解消した後、三菱自と三菱商事が保有していた株式50%を広汽集団に譲渡する(ことで合弁事業から撤退する)。


広汽アイオンはEVシフトの波に乗り、販売を急伸させている。写真は同社のスポーツタイプEV「昊謁GT」(広汽アイオンのウェブサイトより)

ただし、広汽三菱の販売子会社の広汽三菱販売に関しては、広汽集団、三菱自、三菱商事が50%、30%、20%の比率で株式を譲り受け、営業を継続する。これまでに販売した車両向けに、補修部品の供給やアフターサービスを継続するためだ。

広汽アイオンの販売は絶好調

広汽三菱の工場・生産設備を譲り受ける広汽アイオンは、2023年1月から9月までの販売台数が前年同期比92.5%増の35万1000台に達するなど、破竹の勢いで成長している。さらなる販売拡大のためには生産能力の増強が必要であり、広汽三菱の既存資産を活用する。


本記事は「財新」の提供記事です

具体的には、広汽アイオンは広汽三菱の生産設備を4億4200万元(約91億円)で買い取るとともに、工場の土地・建物を年間1億3000万元(約27億円)で賃借する。これにより、広汽アイオンは生産能力を年間60万台まで拡大可能としている。

(財新記者:戚展寧)
※原文の配信は10月25日

(財新 Biz&Tech)