(漫画:©︎三田紀房/コルク)

記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。

その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う「チームドラゴン桜」を作っています。

そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信)。連載を再構成し、加筆修正を加えた新刊『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』が、発売後すぐに3万部のベストセラーとなっています。第88回は東大生は話が上手な理由、「要するに」を使わない背景を解説します。

東大生は話が上手なのはなぜか?


みなさんは「話がうまい人」と聞くと、どんな特徴が思い浮かぶでしょうか? 話が面白い、自然と引き込まれる、などいろいろあると思いますが、「話が理路整然としていてわかりやすい」という点も挙げられるでしょう。

その意味で、私は東大生を見ていると「話がうまいなあ」と感じます。みんな頭の中で内容を整理しながら話すので、とても理解しやすいのです。そう聞くと、「生まれつき頭の回転が速いからだろう」と感じられるかもしれません。ですが、私はこの「話のうまさ」は勉強によって身についた力だと思っています。

次の『ドラゴン桜2』のマンガをご覧いただくと、私がそう言う理由がわかっていただけると思います。国語担当の大宰府先生が、文章読解のコツを説明しているシーンです。

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(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)





(漫画:©︎三田紀房/コルク)



(漫画:©︎三田紀房/コルク)

東大入試は「言い換える力」を求めているという話でしたね。「言い換える力」は「要約する力」とも言えます。東大生の話のうまさは、この要約する能力に由来しているのです。

マンガにも例がありましたが、東大入試の国語や英語では本文の要約問題が毎年出ますし、そのほかもほとんどが記述形式です。解答スペースや文字数の指定も巧みに設計されていて、少しでもムダなことを書くとすぐに字数が溢れてしまいます。

そのため、論理構成や言葉の選び方に敏感にならざるをえません。こうしたなるべく簡潔に要点をまとめようとする意識が、普段の会話にも自然と反映されているのですね。

会話の中で「要するに」が出てこない

実際によく観察していると、1つ面白いことに気づきました。みんな会話の中で、「要するに」というワードをほとんど使わないのです。相手の話を受けて「つまり○○ってことだよね」と返すことはあっても、自分で話しているときに「要するに」とは言いません。なぜかというと、最初から話を「要して」いるからです。順序立てて話がまとめられているので、「要するに」と言う必要がないのですね。

また、簡潔にまとめる意識が表れているのはノートでも同じです。東大生のノートを見ると「=」「→」「←」「⇔」といった記号がよく目につきます。

これらは先ほどのマンガにあった同等関係、対比関係、因果関係を表すものです。「=」は同等、「⇔」は対比、「→」は話のつながりや展開、「←」は原因や理由を表しています。これらの記号を使って、情報を見やすく整理しているのです。

1つ簡単な例を見てみましょう。「19世紀以前と比べて、20世紀は大気中の温室効果ガスの量が増えたために地球温暖化が進行し、海水面の上昇や異常気象の発生などさまざまな影響が出た」という文があるとします。

先ほどの「=」「→」「←」「⇔」の記号を使うと、どんなふうに整理できるでしょうか?

順に並べると、「19世紀以前⇔20世紀」、「温室効果ガスの増加→温暖化の進行」、「温暖化の進行←さまざまな影響」、「海水面の上昇=異常気象の発生」といった形になると思います。このように要素を分解し、互いの関係をつかむと情報の解像度が上がるでしょう。

東大生は会話中でも文章を読んでいるときでも、頭の中に「=、→、←、⇔」の記号を浮かべながら、情報を整理している感覚があります。つねに「要するに何?」と、最短距離でポイントをつかもうとしているのです。

要点をつかむスピードも上がる

この感覚が身につけば、余計な情報をそぎ落として、人に自分の考えをわかりやすく伝えることができるようになるはずです。

また、物事の要点をつかんで理解するスピードが上がり、結果的に勉強の効率もよくなるでしょう。思考力を鍛えるトレーニングとして、ぜひ参考にしてみてください。

(青戸 一之 : 東大卒講師・ドラゴン桜noteマガジン編集長)