人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気の発症を経て、53歳でスペインへの単身留学を決めたRitaさん。スペインでの家の探しの苦労について教えてもらいました

50代、スペインにひとり暮らし。留学生の家探し事情は?

海外で長期滞在する場合、住宅はいったいどのように探すのか? 旅行のホテル予約ですら緊張する私にとって、家を借りる手続きなんて…。想像もつかず不安ばかりでしたが、見聞きした情報を元に何とか契約までこぎつけることができました。今回はスペインの賃貸事情、探し方から実際に住んでみた様子をお伝えいたします。

【写真】スペインでホームステイ時に滞在していた部屋

●ひとり暮らしの場合は、シェアハウスが基本

スペインで外国人留学生が滞在先を探す場合、「ピソ」と呼ばれるシェアハウスのような場所に住むことが多い印象です。例えば3LDKのアパートに3人で同居するイメージ。各部屋は鍵もかかりプライベイトは守られますが、キッチン・リビング・バス・トイレは共同です。家族やカップルなど複数で同居する住宅を探す場合は、2〜3LDKのマンションや戸建てを借りることになりますが、こちらは家賃も上がり、私のようにまとまった収入がない留学生が住むには少し壁が高い印象です。

首都マドリッドの家賃相場は、1人用のピソで1か月あたり400〜1.000ユーロ(6万3,200〜15万8,000円)、2人用700〜1.200ユーロ(11万0,600〜18万9,600円)。場所・広さ・古さ等でだいぶ違いがありますが、日本の家賃と大きく変わらないかもしれません。なおスペインの物価はとくに安いとは感じず、牛乳1L180円前後、カジュアルな外食でも1食1500〜2000円程はかかります。

私の場合、スペインに到着した直後の2か月間は、語学学校手配のホームステイ先に滞在していました。こちらは4LDKのマンション。ホストご夫妻の部屋、留学生用の部屋が3部屋(1人用・2人用・3人用)、バスルーム1つ、トイレ2つ。

キッチンは共同でしたがほとんどホストママが利用し、留学生は用意された食事を食べるのみで、料理をする人は見かけませんでした。バスルームも「あの人は何時頃」という暗黙のルールができあがり快適に利用。一度水の流れが悪く業者を呼んでくれましたが、その際の費用はホスト側の負担でした。

●空き部屋検索は、住宅情報アプリ

ホームステイの契約満了が近づくにつれ、新たな住宅を自力で探さなければならず、大変な負担でした。TwitterやFacebookで情報収集したり、住宅探しのアプリがあることを聞き、夜な夜な検索。その中でも「Idialista」「Uniplaces」というアプリが利用しやすく、私もここで物件探しをしました。

これらは住みたいエリアを地図上で示すと物件が分かりやすく表示され、条件(金額・部屋数・階数等)でも絞り込め、シェアメイトの年齢・国籍などが書かれていることもあります。またアプリ内から大家さんへメール連絡もできます。なお、街中には不動産会社もありますが手数料が嵩む為、上記のような大家さんと直接のやり取りができる方法が一般的のようです。

●賃貸契約、断られた理由トップ3

じつは、住宅が確定するまで10件近く断られ、もうどこも借りれないのでは…と途方に暮れる時期がありました。断られた理由のトップ3はこんな内容です。

(1) 年齢オーバー:ほかの住人は20〜30代のところでは、そこに53歳が入るとピソ自体の雰囲気が変わると思われたのか、年齢を言った途端返事が来なくなってしまいました。

(2) 国籍違い:他の住人がみんな欧州系の人なので、同じような文化圏の人がいいと断られました。

(3) 学生はNG:中には学生ではなく社会人を対象としたピソもあり、収入証明を求められました。

年齢オーバーで断られた物件はじつに6件。正直驚きましたがこれが現実…応募要項自体に年齢制限の記載はありませんでしたが、若者の中に彼らよりふた回りも年齢の違う大の大人が入ることは躊躇される印象でした。

そんな中、私が最終的に巡り会えたのは外廊下に個室が並ぶ、いわゆるホテルのような造りの物件。ワンルームにバス・トイレつき、洗濯機だけが共有。ただキッチンはどこにもなく、電子レンジのみの住宅でした。しかし1か月探し続けて断られなかった物件はわずかここだけ。逃すわけにはいかず即決しました。

●ハプニング続出の海外住宅

物件によっては下見も可能ですが、私の家は下見制度なし。事前に書類を交わすこともなく初日に現地集合でした。住所のみを頼りに恐る恐る侵入…ベッドも家具も整い想像以上にきれいな部屋でした。そして大家さんが用意した契約書にサイン。初月の家賃に加え、敷金としてプラス1か月分を現金払いしました(敷金は物件によっては2か月分。退去時に問題が無ければ返金されます)。

やれやれ…と住み始めましたが、落ち着く間もなくハプニングが続出。「海外に住む」という洗礼を次々受け始めたのでした。

・蟻の大群:初日から壁際に発見。スプレーや置き薬で退治しても収まらず夜も眠れず。

・隣の目覚ましで起きる:壁が薄すぎて、毎朝自分の目覚ましより前に、隣に住むスペイン女性の目覚ましで起床!

・お湯が水:毎晩23時頃、近隣の皆がシャワーを使うため、お湯にならず水でした。朝シャンに変えたら独り占めの時間だったようで快適に。でも15分以上使っていると冷たくなるので、のんびりは厳禁!

・冷暖房がない:40℃の真夏は扇風機をかかえて過ごし、冬は室内でダウンジャケットを着用。寒すぎて大家さんに相談すると布団を2枚貸してくれ、「窓は夏に風が通るように隙間があるの。冬は日が照る外の方が暖かいわよ。」と言われました。

玄関の取っ手が丸ごと外れる、コンセントを抜くと壁も抜ける、壁の絵が落ちると同時に壁も欠ける、電化製品の故障、…トラブルは数えるときりがありませんが、すべて笑える範囲。海外住宅としては、まだまだ恵まれている方ではないでしょうか。

住宅探しは家賃に治安に日当たりに…すべてをよくばりに叶えようとすると、よほどの好運がない限りはいつまで経っても見つからない気がします。巡り会った部屋は「私にとっていちばんよい場所!」と思い込み、片目をつむって生活することが、ストレスをためないポイントだと思っています。