東京・上一色中の西尾弘幸監督【写真:伊藤賢汰】

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2022年の全日本軟式少年野球大会で初優勝した上一色中

 中学軟式の“カリスマ監督”として知られる西尾弘幸監督が率いる、東京都江戸川区立上一色中学校。全国大会常連で、2022年の全日本軟式少年野球大会で初めて全国の頂点を極めた。Full-Countでは、小・中学世代で日本一を成し遂げた12人の監督に取材。野球経験は中学までだったという西尾監督が、なぜ公立校を毎年強豪チームに作り上げるのか、誰もが知りたいところだ。

 上一色中の「強力打線」は有名だ。狙い球を絞るには「初球から積極的にフルスイング」か、「2ストライクまで好きな球、甘い球を待つ」の大別して2つ。上一色中は前者である。西尾監督の基本的な考え方は、こうだ。

「コーナーぎりぎりの厳しい球であっても、変化球であっても、振らなければ打てるようにはなりません」

 空振りをしたら、次は当てられるように矯正していく能力が人には備わっているという。それを楽天でアナリストを務めた神原謙悟氏と一緒に実験した。だから空振りしても「次、打てるぞ!」という声掛けを、上一色中はチームの合言葉にしているのだ。

スイング軌道は理想として「縦に振らせたい」

 昨今、打球角度が26〜30度で上がった打球が最も安打や本塁打になりやすいという「フライボール革命」がもてはやされている。では、西尾監督が指導するバットスイングの軌道は、アッパーなのかレベルなのか、それともダウンなのか。

「基本的にはレベルスイングですが、バットを縦に入れて打球を上げたい」。つまり理想としては「縦に振らせたい」ということだ。ただ体が大きくて力のある子がいる一方で、まだ体が小さくて力がない子もいる。「横振り」のスイングの選手もいる。さらに「縦振り」が子どもに合う、合わないもある。強制はしない。

「守れなかったら勝てないし、打撃と守備のバランスが必要だと思います」とはいうものの、西尾監督はやはり「打撃重視」の印象が強い。公立中学の狭いグラウンド内であっても、7か所で打撃練習を行い、その1か所を「対戦」と呼び、投手と“ガチンコ勝負”をさせる。そうやって「伝統の強力打戦」を作り上げていくのだ。

 西尾監督は、25日から5夜連続で行われる「日本一の指導者サミット」に参加予定。その言動から目が離せない。(石川大弥 / Hiroya Ishikawa)