Microsoftは2022年1月、「ディアブロ」「オーバーウォッチ」などを展開するゲーム企業・Activision Blizzardの買収を発表しましたが、アメリカの連邦取引委員会(FTC)はこの買収が独占禁止法違反の可能性があるとしてMicrosoftを提訴しました。裁判ではMicrosoftの主張が認められ、すでにFTCによる控訴も却下されていますが、この裁判に関連して流出したMicrosoftの内部文書から、Microsoftが提供する有料のゲームサブスクリプションサービス・Xbox Game Passが多額の収益を上げていることが判明しました。

Xbox Game Pass made $230 million revenue in one month, most users pay for full subscriptions

https://www.tweaktown.com/news/93340/xbox-game-pass-made-230-million-revenue-in-one-month-most-users-pay-for-full-subscriptions/index.html



Microsoft's Game Pass Business Is Proven Highly Lucrative Thanks To FTC Disclosures - Gameranx

https://gameranx.com/updates/id/476308/article/microsofts-game-pass-business-is-proven-highly-lucrative-thanks-to-ftc/

Microsoft leak reveals cost estimates of bringing big releases to Game Pass

https://www.axios.com/2023/09/19/game-pass-cost-xbox-games-microsoft-leak

Xbox Estimated A Very Low Price To Get Baldur’s Gate 3 On Game Pass - GameSpot

https://www.gamespot.com/articles/xbox-estimated-a-very-low-price-to-get-baldurs-gate-3-on-game-pass/1100-6517829/

Activision Blizzard買収を巡って繰り広げられたMicrosoftとFTCの裁判では、全面的にMicrosoftの主張が認められる展開となり、Activision Blizzard買収が前進しました。ところが、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所は今回の裁判に関連し、本来公開するべきでなかったとみられるMicrosoftの内部文書をうっかり公開してしまったとのこと。なお、この裁判ではソニーが提出した機密文書のマスキング処理が甘かったため、ゲームの開発費や「Call of Duty」の収益など、ゲーム事業に関する重要な機密情報が流出する事態も発生しています。

Microsoftの機密文書が流出した経緯については、以下の記事を読むとよくわかります。

新型Xbox Series X・ジャイロ搭載の新型コントローラー・次世代Xboxなど2030年までのXbox計画に関する機密文書がMicrosoftのミスで流出 - GIGAZINE



今回流出したMicrosoftの内部文書には、Microsoftが展開するゲームサブスクリプションサービス・Xbox Game Passの収益に関するスライドも含まれていました。Xbox Game PassにはPC向けのプランとコンソール向けのプラン、そして両方が合わさったXbox Game Pass Ultimateというプランが用意されています。

スライドを入手したゲーム関連メディアのTweakTownによると、Xbox Game Passはサブスクリプションあたり平均9.26ドル(約1370円)の収益を上げたとのこと。TweakTownは、「2022年1月の時点では約2500万人のXbox Game Passサブスクライバーがいることがわかっているため、Xbox Game Passは2022年4月に約2億3150万ドル(当時のレートで約280億円)の収益を生み出した可能性があります」と述べました。



さらに流出文書の中には、Xbox Game Passに各種ゲームタイトルを追加するためのコストについて推定したメールも含まれていました。Xboxのゲーム担当ヴァイスプレジデントを務めるサラ・ボンド氏は2022年5月に送信したメールで、Xbox Game Passで提供する可能性がある18のサードパーティーゲームタイトルを挙げ、予想されるコストについて記していたとのこと。

ボンド氏のチームは、後に「アサシン クリード ミラージュ」と名付けられるUbisoftの新作ゲームを発売当日にXbox Game Passに追加するには、1億ドル(約150億円)ものコストがかかると推測していました。しかし、この推測はゲームが2023年初頭にリリースされる予定に基づくものであり、記事作成時点での発売予定日は2023年10月5日となっていることから、この推測は後に変動した可能性があります。

また、EAが2023年4月に発売したゲーム「スター・ウォーズ ジェダイ:サバイバー」を発売当日にXbox Game Passに追加しようと試みる場合、EAが3億ドル(約450億円)もの契約金を要求してくる可能性があると見積もられていました。ボンド氏は、「スター・ウォーズ ジェダイ:サバイバー」が高い価値を持っていることは認めつつ、コストの高さから収益率は高くならないだろうと予測していたとのこと。

他には「ダイイングライト2」と「ゴッサム・ナイツ」が5000万ドル(約74億円)のコストを要すると見積もられていたほか、「グランド・セフト・オートV」は月額1200万〜1500万ドル(約18億円〜22億円)と予測されており、金額が変動する月額制の契約もあることが示唆されています。

特に注目を集めているのが、TRPGの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を原作としたRPG「バルダーズ・ゲート3」を発売日にXbox Game Passに追加するコストを、当時のMicrosoftは500万ドル(約7億4000万円)とかなり過小評価していた点です。「バルターズ・ゲート3」はリリース後に圧倒的な高評価を集めており、Steamの同時アクセスユーザー数のピークは87万人を超えています。

この予測について、「バルターズ・ゲート3」を開発したラリアン・スタジオのパブリッシングディレクターを務めるラリアン・ダウズ氏は、「Microsoftを擁護すると、他の関係者も同じように評価していました。『ディヴィニティ:オリジナル・シン2』も同様です」と述べ、発売前に「バルダーズ・ゲート3」の大成功を予測するのは難しかっただろうと認めました。



なお、同じ訴訟に関連して流出したMicrosoftの内部文書からは、MicrosoftがActivision Blizzardだけでなく任天堂の買収も検討していたことが明らかになっています。

Xboxのトップが任天堂を買収したいと考えていたことが流出した社内メールから判明 - GIGAZINE