日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。都内のスタジオでピラティスのインストラクターをしている京子さん(仮名・36歳)もレスの状態から顕微授精で妊娠、出産。そこからレスが解消したきっかけとは? 現在の心境を伺いました。

「夫婦関係が終わってしまうかと思った」と涙する夫

44時間にも及ぶ難産で、大量に投与された薬の影響から体がパンパンにむくんでしまった京子さん。そんななか、産後1か月で夫の親族が家にやって来てクリスマスパーティを開催させられるという事件が発生。家事も育児もがんばろうとしていた夫でしたが、この件以降、京子さんは夫に対してますます強く当たるようになってしまったといいます。

●「俺のこと大切に思ってないでしょ」と言われて…

コロナ禍で在宅勤務になった夫は、仕事をしながら家事と育児の大半を引き受けてくれたそう。しかし、それでも回らないのが初めての育児の難しいところ。

「私の場合は自分の母がすでに他界していたのと、義理の両親も頼れる感じの人じゃなかったので、もうひとりでいっぱいいっぱいでした。必死なのは夫も同じ。在宅勤務とはいえ、普通に仕事をしながら家事と育児をこなしてくれて。それでも赤ちゃんのお世話って、大人2人いても本当に大変なんですよね。今だったらシッターさんを雇えばいいと思えるのですが、本当にピークのときにはそういうことを考えたり申し込んだりする余裕すらありませんでした」

そんな生活が3か月ほど続いたある日、ついに夫も限界がきてしまいました。

「夜間の授乳のタイミングでは夫も起きて、母乳でたりない分のミルクをつくったり、哺乳瓶を洗って消毒したりするところまでやってくれていました。で、私と赤ちゃんが昼寝している間に仕事をこなして。そんななかでも、クリスマス以降は私に強く当たられて…。ある日夫に『そんなに俺のこと嫌いなの? もう大切に思ってくれないの? 子どもが生まれてからすごく寂しい、京子がめちゃくちゃ冷たくなったから…』と泣きながら言われ、絶望的な気持ちになりました。40歳すぎた大の大人が寂しいとかなにを言ってるんだろうと」

ワンオペにせずがんばってくれている夫に感謝していた京子さん。これ以降、強い物言いをすることは気をつけるようにしたそうですが、頼れる存在だった夫が弱音を吐いた姿をみて、シンプルに引いてしまったといいます。

けれどそんな状況が続いたある日、ふとしたことから夫との関係が修復されるきっかけが訪れたといいます。

●ドラマに出てきた“レスを軽んじる妻”が自分と重なった

産後の後遺症のような不調は結局半年ほど続いたものの、徐々に体力が回復。仕事へも緩やかなシフトで復帰し、子どもも保育園へ通い出し、夜間もしっかり寝てくれるようになり、ようやく自分の時間がもてるようになった、つい最近のこと。

「やっと体型も戻ってきて、気持ちにも余裕が出てきました。寝かしつけが終わったある日の夜、テレビをつけたらレスをテーマにしたドラマ『あなたがしてくれなくても』がやっていて見入ってしまいました。仕事に夢中で夫婦で向き合う時間すらつくろうとせず、レスを軽んじる妻の姿が自分と重なってドキっとしました。気がつけばうちも不妊治療から産後、ずっとレスのまま。夫が私の体のことを察して“誘ってはいけない”とタイミングを計りかねている様子に気がついてはいたけれど、スルーしていました。でも、ドラマを通して男性側の気持ちを知ることができ、自分から『もう再開しても大丈夫だよ』と明るく伝えることができました」

結果的に3年ちょっとのレスに終止符が打たれた瞬間でした。「もう嫌われて、このまま夫婦関係が終わってしまうかと思った」と夫は笑いながらも目に涙が浮かんでいたといいます。

●産後はどんな夫でも恨みを買う

「ドラマを通して夫の気持ちを想像したり、自省することができてよかったです。うちみたいに夫側に性に対するコンプレックスがあったりすると、なおのこと話し合いもしにくいし、レスになりやすいのではないでしょうか。私は、不妊治療中は“このまま女として終わっていく…”と悩みながらも、産後になったら体力もなくなってセックスのことなんか考えられないような日が続きました。今思えば、もっと私から積極的に誘うことだってできたし、夫の性行為へのコンプレックスに寄り添うことだってできたんですよね」

クリスマスパーティの件は、今思い出しても頭にくるという京子さんですが、「産後はどんな夫でもささいなきっかけで恨みを買いますよね! 出産してないんだから、こっちの大変さなんて絶対わからない。だからしょうがない」とどこか吹っきれたかのように軽やかに話す様子が印象的でした。

長い人生のなかで体調や気持ちに浮き沈みがあるのは仕方のないこと。夫婦の愛情や信頼関係がきちんとあれば、レスは時間が解決する問題なのかもしれないですね。