卵を産んでいる「ニワトリ」を紹介するポップ

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「作り手の顔が見える」卵パックが広まっている。SNSでは「作り手の顔がかっこいい」など、生産者で卵を選ぶという声もある。

そんなブームをよそに、卵を産んでいる「ニワトリ」を紹介するポップが「まさに作り手の見える卵ですき」などと注目を集めている。J-CASTニュースは2023年8月30日、ポップを制作した養鶏場に取材した。

卵を産んでいる「ジュリアさん」がバズる

発端は8月21日、JA全農たまごの「作り手の顔が見えるたまご」に注目が集まったことだった。公式サイトによれば、客の卵の産地を知りたいという声に応えて導入された。卵のパックに生産者の顔写真を掲載することで、作り手の想いも届けるという。X(旧ツイッター)では好みの顔の生産者を応援したいと、「推し活」のように楽しむ声も広がっていた。

それから数日後、生産者を紹介する斬新なポップが話題になった。

「私が卵 産んでます!!」

集中線が描かれた用紙の真ん中に、こんなセリフを叫ぶニワトリの写真が大きく掲載されている。左下には「7%の卵を産んでいるジュリアさん」とニワトリの紹介文が掲載されている。愛知県知多郡美浜町の養鶏場・アイナン産業が店頭に掲示した。

このポップを紹介する投稿は30日現在までに3万7000リポスト、16万6000件の「いいね」を超えるなどの大きな反響があった。

「まさに作り手の見える卵ですき」
「この発想はなかったw 正真正銘の生産者...」
「名前がカッコイイなあ(笑)」

取材に対し、ポップを制作したアイナン産業の齋藤豪士専務は、「知らないところでそういう風に広がっていて驚きました」と話す。

生産者は仲良し3兄弟

アイナン産業は、約57万羽のニワトリを抱える創業60年超の小さな養鶏場だ。現在は3代目となる「卵三兄弟」がニワトリの面倒を見ている。ポップを制作した豪士専務は次男で、長男の大士さんは取締役、三男の岳士さんが農場長を務めている。三兄弟は愛知県立半田農業高校を卒業後、大学で農業を学び現職に至る。兄弟仲は良好で、お昼も一緒に食べているという。売り場では、3人の顔写真も紹介している。

豪士専務は、XでJA全農たまごを目にして「こんな売り方もあるんだな」と感じていたと振り返る。それからしばらくして、なぜか自社の卵が急激に売れ始めた。

「ここ最近、急に売れ行きが増えていました。いつもの2、3倍近く売れていて、『なんで売れているのかな』と疑問を持っていました。ネットでどれくらい話題になっているのでしょうか?」

記者が反響を伝えると、「全然知らなかった、すごいですね!」と非常に驚いた様子だった。ポップを制作した背景については、次のように説明する。

「お試し感覚で、もっと卵を売るためにポップを作ってみました。生産者の顔を紹介する取り組みが広がっていますが、このニワトリが生んでいるのだと伝えたかったのと、キャッチーな感じを意識して制作しました。日ごろからユニークなものを制作しているわけでなく、初めての取り組みだったのでビックリです」

「ジュリア」はニワトリの品種を指している。白い卵を産む標準的なニワトリだという。ポップでは、日ごろの感謝と敬意を込めて「ジュリアさん」と紹介した。「7%の卵」は商品名で、飼育している全鶏の中から一番いい卵を生む活力のある日齢の鶏の上位7%を厳選していることから命名した。

ジュリアさんにトサカがあるため、Xでは「てめぇ雄だろ!?」「オスは卵生まんやろw」と疑う声も広がった。豪士専務によれば、掲載しているのは卵を生産しているメスで間違いないという。オスはもう少し体格が良く、トサカも大きくなると説明した。