作陽の試合中、スタンドの部員たちは全力で応援し続けた【写真:宮内宏哉】

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柔道インターハイ男子団体戦、作陽はスタンドも全力応援で一丸

 柔道の全国高校総体(インターハイ)は9日、北海きたえーる(北海道立総合体育センター)で男子団体戦が行われた。前年準優勝の作陽(岡山)は準決勝で東海大相模(神奈川)に敗れたものの、スタンドの部員たちも全身全霊の熱血応援。一丸となって頂点を目指す姿は見るものの心を打った。(取材・文=THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)

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 試合に出ていなくても、仲間のためにここまで一生懸命になれるのか。部活動の魅力を改めて感じた。

「いっけーいけいけいけいけ作陽! おっせーおせおせおせおせ作陽!」

 試合が始まると、観客席の部員たちが揃って大声を響かせる。そこからは前のめりが基本姿勢。各々がありったけの思いを畳に向かって叫び倒す。

 3分間、その声は絶えることがない。勝利を決める技が飛び出すと、皆一斉に立ち上がってガッツポーズ。腰を目いっぱい反らせる者、目に涙をためている者もおり、心の底から喜んでいるのが伝わってきた。

 他の高校の応援も迫力があったが、作陽の熱量は飛び抜けていた。なぜ、ここまで全力なのか。スタンドから声援を送った藪中楓人(3年)はこう語る。

「僕はインターハイに出られませんが、作陽の団体戦は終わっていない。自分も試合している気持ちで、全員で戦うんです。うちは応援で勝たせるチーム。最後の最後まで、どこにも負けないくらい熱をぶつけて、勝たせるために命をかけるくらいの気持ちでいます」

まとめてきた川野監督もむせび泣き「お前たちは最高に頑張った」

 部員の団結力を生んでいるのが、川野一道監督。「厳しい中にも愛があって、ついていきたい先生。日本一にしたいと思っています」。藪中の言葉にも信頼感が込められていた。

 準決勝の東海大相模戦、そんな川野監督が試合中に退席を命じられる試練が訪れた。助言のタイミングが不適切だったことが理由。すぐそばで鼓舞してくれる大きな存在を欠きながら、副将・工藤瑠希(3年)が横四方固で一本勝ち。しかし、大将の高橋翔(3年)が合せ技一本で敗れ、準決勝敗退となった。

 試合後、畳から離れていた川野監督は、教え子と一緒にむせび泣いた。「最後まで見届けられず申し訳ない」。目を真っ赤にして「柔道を極めることが全てじゃない。柔道を通じて人間的に成長することが大事。お前たちは最高に頑張った」とそれぞれの肩を叩いて労った。

 川野監督にスタンドの大応援について質問すると「心強いですね」と声を震わせ、こう語ってくれた。

「一つの思いを共有して、勝った負けたじゃないところにソウル(魂)みたいなものを皆で持っていると思います。最終的に、柔道は個人種目です。でも僕は将来、この子たちが何かの仕事をしたとき、チームでまとまって戦った経験が必ず役に立つと思うんです」

 監督とともにチームを作り上げてきた主将の長内健多(3年)は「3年間、先生を信頼してやってきた今日が最後の日。ほんとに最後なんだなって……。ありがとうございますという感謝の気持ちしかありません」と涙。北海道で、熱い部活動の在り方に心打たれた。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)