優勝インタビューで涙を流す鈴木愛【写真:Getty Images】

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国内ツアー・北海道meijiカップ最終日

 女子ゴルフの国内ツアー・北海道meijiカップは6日、札幌国際CC島松C(6593ヤード、パー72)で最終日が行われ、1打差の単独首位で出た鈴木愛(セールスフォース)が5バーディー、ボギーなしの67で回り、通算15アンダーで逃げ切り優勝を果たした。史上16人目のノーボギーV。2017、19年賞金女王にとって、2年1か月ぶりのツアー18勝目となった。会見ではコロナ禍で沈んだ時期を経験したと明かし「自分を信じてゴルフができた。成長した1勝になったかなと思う」と喜びを語った。

 我慢に我慢を重ね、久々の優勝に酔いしれた。最終18番、ウイニングパットを決めた鈴木に涙はなかった。2位に3打差をつける完勝。両手で万歳し、笑顔が弾けた。「今までなら優勝して涙という感じ。でも、優勝インタビューでファンの方が声をかけてくれて、ウルっと来た」。逃げないゴルフを貫き、復活を印象付けた。

 同じく首位で最終日を迎えた前週の楽天スーパーレディスは3位。「ちょっと嫌かも」と記憶がよぎった。7番まで全てパー。一時はささきしょうこに首位を譲るも「今日は絶対逃げん」と攻めた。8、9番の連続バーディーで首位に再浮上。16番パー4では約8メートルのバーディーパットを沈め、優勝を手繰り寄せた。

 輝かしい実績を誇る鈴木も近年は苦しんだ。特にコロナ禍は悩み、沈んだ。

 2020年、外出を控えざるを得ず、練習量がぐっと落ちた。「誰もがわからない病気で、自分もどうしていいかわからない。ショット、パットともに納得いく練習ができなかった」。前年だけで7勝した賞金女王が、試合が少なかったとはいえ20年は未勝利。無観客試合がなにより孤独を感じさせた。

「誰も応援してくれなかったのが辛かった」無観客試合で孤独に

「いいショット、いいパットをしても声援がもらえないのはすごくキツかった。SNSで応援はあっても、直接の応援はない。(コースで)誰も応援してくれなかったのが辛くて、それで落ちていったところはあったと思います」

 まだコロナの影響が残る2021年は7月の資生堂レディスで優勝したものの、そこからまた2年遠ざかった。今季は出場15戦中7戦でトップ10入りするも勝てず「今まで優勝争いは凄く好きだったのに、どう戦ってたっけ」と分からなくなった。

 ゴルフをやめたくなったこともある。そんな自分をファンは見捨てず、コロナ明けからすぐ近くで応援を続けてくれた。

「私のファンの人は控えめで、集中の邪魔にならないようにしてくれる。パットが決まったときの『愛ちゃんナイスバーディー!』の声が嬉しかった。遠くから毎週応援に来てくれる方もいますし、優勝をしばらく見せられていなかったので、ようやく優勝する姿を見せられてホッとしています」

 優勝で最大の感謝を示した鈴木は、5月に29歳になった。女子ゴルフ界は20代前半の若い選手が次々に台頭している。「自分の頃より、若い選手は技術的にレベルアップしているし、飛ぶ選手も多い。その子たちの体力に追いつけるように頑張らないといけない。若い選手に負けたくない気持ちはある」。殻を破った元賞金女王。まだまだ主役として輝き続ける。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)