大宮駅東側の道路に、歩道をふさぐように無人の民家が突き出ている箇所があります。なぜこのような状況になったのでしょうか。また今後はどうなるのでしょうか。

歩道拡幅部が一部欠落のワケ

 さいたま市の大宮駅東側を南北に通る県道164号、通称「旧中山道」。繁華街にあって両側に歩道が整備されていますが、歩いていくと、歩道をふさぐように無人の民家が突き出ています。


大宮駅東側で歩道をふさいでいた廃墟。今冬に解体された(乗りものニュース編集部撮影)。

 歩行者は家を迂回するように、車道付近を回り込んで通行する必要があります。点字ブロックもそこだけ、家を避けて回り込んでいます。いったい何が起きているのでしょうか。

 こうした物件は2か所ありました。北側の仲町地区の物件は、街道筋の名残を残す2階建て木造の店舗兼住宅です。南側の下町地区の物件は2023年に入り解体されましたが、奥に長い民家で、長らく崩壊寸前状態のため、フェンスで覆われていました。

 これら物件の詳細については、昨年12月さいたま市議会の答弁である程度明らかになっています。ここに現在の歩道拡幅が進められたのは1998(平成10)年度のこと。下町の物件は「明治30年以降相続登記がされておらず、法定相続人が多数存在し、相続が決まっていない状況」によって用地買収ができず、ここだけ拡幅工事が行われなかったことから、「歩道をふさぐ家」が生まれたといいます。

 車道と敷地境界のあいだは数十センチほどしかないため、本来車道と歩道を仕切るコンクリート縁石は設置できず、市はラバーポールを立てて、かろうじて歩行者を防護している状況です。

 下町の民家の解体は、市ではなく関係者が自主的に行ったとみられています。2021年の市議会で「いよいよ崩壊しかかって危険である」という議員の指摘に対し、環境局長は「管理不全な空き家に対しましては、行政処分となる命令を実施するなど、より踏み込んだ対応を行ってまいります」と回答があり、これが実を結んだのかもしれません。

 ただ、民家が無くなっても、6月の時点で区画が歩道に突き出している状態は解消されていません。先述の議会答弁では、「定期的に法定相続人と話し合う機会を持つことができており、相続整理に向けて前向きに取り組んでいただいております」とのことです。また建物が残るもう1件についても同様に話し合いが進んでおり「今後も引き続き交渉を進めてまいりたい」としています。

 このように権利関係が不明確で、なかなか現状を変更しづらい物件は全国で問題になっています。さいたま市内でも複数あり、下町の物件をひとつの事例に、議会で対策の必要性が指摘されています。