電動キックボードのすべてが「特定原付」になるわけではない…国家公安委員長が語った改正道交法施行の“キモ”
あす7月1日から、電動キックボードなどを想定した道交法上の新たな区分「特定原付」がスタートします。一般にはなかなかわかりにくい点もあると、国家公安委員長が改めて“キモ”を解説しました。
基準を満たす車両以外は“要免許”!
「新たな仕組みができるわけなので、なかなかわかりにくい点もある。従来からPRしているが、改めて申し上げる」
谷 公一国家公安委員長は特定小型原動機付自転車(特定原付)に関する改正道路交通法の施行について、2023年6月30日の閣議後会見でこう切り出しました。小型特殊自動車扱いだったシェアサービスの車両も、あす7月1日から特定原付の交通ルールが適用されます。都道府県警察を監督する国家公安委員会はどんなところを最も懸念しているのでしょうか。
シェアリング大手「LUUP」の電動キックボードも、7月1日からは特定原付になる。それを見分ける最高速度表示灯は左右のバーエンドに取り付けられ、ウインカーも兼ねている(中島みなみ撮影)。
これまで原動機付自転車として、原付バイクと同じ車種区分だった一部の車両が「特定原付」として、免許証不要で16歳以上から乗れるようになります。従来の交通ルールは、人力以外の原動機を使って移動する車両を運転免許が必要な車両と定義しましたが、7月1日からは、一定の要件を満たした場合はフル電動でも「特定原付」と区分して免許なしで運転できるようにしました。谷国家公安委員長は最初に、この区分についての理解を求めました。
「留意いただきたいのは、いわゆる電動キックボードのすべてが、特定原付になるわけではありません。公道上の最高速度が20km/h以下であること。車体の大きさもいわゆるママチャリと同じくらい(190cm×60cm)であること。こうした一定の基準を満たすものに限り、特定小型原付になります」
同じ外見の電動キックボードでも、車種区分はモーターの出力によって分かれます。特定原付の定格出力は、運転免許が必要な「一般原付」いわゆる原付バイクと同じ0.6kw以下です。決定的な違いは、谷氏がいう最高速度が20km/h以下であること。この規定は着座式のペダル付車両でも同じで、電動で出せるスピードが20km/h以下でも、ペダルをこいで人力でアシストした場合に20km/hを超える場合は「一般原付」として取り扱われます。
歩道走行は文字通り“特例”
特定原付は原則、車道の左端を走ります。この点は一般原付と同じですが、自転車なみの運転ができる特定原付は、自転車レーンを通行することができます。ただし、右折する場合はすべての交差点で二段階右折。原付バイク(一般原付)のように、車線数や標識によって右折方法が変わることはありません。
“特例”的に歩道を走ることができる場合もあります。これが「特例特定小型原付」と呼ばれる区分です。谷氏は、こう注意を促します。
「歩道は通行できますが、あくまでも最高速度表示灯を点滅させていることが条件。させていない場合は通行できない」
最高速度表示灯は、車体から25m離れた状態で確認できる緑色の灯火のことで、常時点灯状態では「特定原付」、点滅状態では「特例特定原付」です。歩道を走るためには最高速度が6km/h以下に制御されていることが必要で、点滅状態はそれを示します。歩道の通行は、この表示灯が取り付けられた車両で、点滅している場合に限って可能です。
会見する谷国家公安委員長(中島みなみ撮影)。
さらに、谷氏は交通ルールの基本についても改めて指摘しました。「信号無視、飲酒運転等の悪質運転は絶対に行わない。当たり前だが理解していただくことが重要です」。
特に立ち乗りタイプの車両での飲酒では、緊急時に車体化から路上に足を出す前に、転倒して頭を打ち付ける事故が起きています。スピードや免許条件に関わらず、ヘルメットで身を守ることが重要です。